【秋田県教職員組合】「教育を主語に、現場から変える。」秋田県教職員組合が大切にする“対話とつながり”

秋田県教職員組合の大河書記長と工藤執行副委員長に、労働組合の課題解決から、組合活動で注力した取り組みや成果などの組合活動に従事された振り返りを幅広く聞かせていただきました。
組織概要と自己紹介
— まず組織の概要について教えていただけますか。
大河:私たちは、日教組傘下の組織で1947年6月23日から活動しております。 もちろん労働条件や勤務条件を大事にしていますが、教職員組合という性格上、やはり教育や学校現場を改善していく視点をもうひとつの軸として、活動しています。 他の県と比べると、組織的に穏やかな雰囲気ですね。
組織内でイデオロギーがぶつかる時代もありました。ただその時代を経た後、県市町村の中で、我々が解決すべき課題を共有しながら、一緒に現場を中心とした運動をしていこうと今進めています。東北の思いを共にする各県の組織と情報を共有しながら連携をすすめています。東北の中で、TUNAG導入の部分でも、連携していけるのかなというふうに思っているところです。
— どのような要因から今の穏やかな空気感は生まれたのでしょうか?
大河:選挙や労働条件の獲得の闘争とは、組合が切り離せないことは十分承知しています。ただ私たち秋田県教職員組合は、現場の教育の改善を中心にとりくんでいきたいという思いですすめています。ですので、どちらかというと現場の分会や支部を中心に、皆で協力しながらという雰囲気があったのではないかと思っています。
いわゆる政治闘争は本部を中心としてすすめていますので、表立って「闘争」や「対立軸」があまり見えない形になっていますね。県教委とも「それぞれの課題について解決策を一緒に探りましょう」という雰囲気の交渉協議が多いです。 現場にしてみれば「もっと強く獲得を訴えてほしい」というのはあるかもしれません。結局、行政と現場は両輪で進んでいくので、お互い持ちつ持たれつの関係性だと思います。それが多分、比較的「闘争よりも互いの本音を対話しながら」という方向性になっているかなと思っていました。
— 組織に関わるきっかけや経緯について教えていただけますか。
大河:「労働組合って大切だな」っていうのは若い時から感じていました。私自身が物事を変えていきたいっていう意識をずっと持っていたので、採用2年目の初めに「私から入ります」と手を上げました。組合に入った前後も、採用されてまだ浅いのに校長室をノックして、いろいろ話しに行ってましたね。「みんなで課題を考えながら改善していく」という労働組合のあり方が、自分の中では大切だなと思って加入しました。
役員になるきっかけは、当時の執行委員長から声をかけられたからです。私自身、あまり労働条件の改善を課題に思っておらず、「教育や学校を変えたい」という思いが強かったです。やっぱり秋田県の学力の高さを維持しているのは、まじめな教職員の献身的な努力があってのことだと思っています。県教委から下りてくるものを一生懸命やる先生方がすごく多くて、そのおかげで維持されているところがあり、そこに違和感があったんです。
主語が全部教員で、教師の立場からいろいろなことはやっていくんですけど、子供という主語でなかなか語られなくなってきたなっていうのをすごく感じてたんです。 自分の違和感にもう耐えられなくなって、フリースクールでも作って「子供たちを主語で語れる教育」をしたいと思っていた時期だったんですね。 なので、もう退職して別の学校を作っちゃおうかなぐらいな気持ちでやってた頃に、お誘いの声をかけていただきました。「ぜひその思いをここで実現してほしい」と言われましたね。
入ってしばらくは、「自分が思う理想の学校を子供たちと作ること」を目指して動いていました。でもふと気づいた時に、それは結局、「今の学校組織から離脱した私と一部の子供しか救われないんじゃないか」と思い始めました。 役員1年目の後半からは、やっぱり公立の学校を変えていく運動をしていこうと考え直しました。そして今4年目になっています。
組合活動に取り組む原動力
— 大河様の組合活動に取り組む原動力を教えてください。
大河:現場にいた時は一人でもなんとかできるって思ってきた人間でした。自分の目の前にいる子供が変わっていくと学校全体も変わっていく実感や、アイデアと管理職との様々なやり取りで学校を変えていける手応えもありました。でもひとたび全体を見渡すと、ものすごく苦労している学校や教員が多いんだなと。「今自分がやってきたことを皆さんと共有できないかな」と、この組合の組織っていうのに入ってものすごく感じました。これがおそらく今の原動力になっているのかなというふうに思います。
実際、財政的に厳しい時期が、私が役員になる前にありました。外から見ていて「もっとうまくできるんじゃないか」と感じていました。そこを効率化したり、もう少し機能的に働くような組織にできたらいいんじゃないかなと常に考えていました。そういう意味では、ここで働く我々役員や書記の働き方も変えたいなと思っていましたね。 実際、私が組合に来た時は、当たり前のように18時、19時に対応してたんです。今はもう基本定時でみんなが帰っていける環境になりました。こうした意識があったからこそ、TUNAGにも目がいったのかなと。まだまだ課題は少なくありませんが、少なくとも労働組合である以上は、自分たちが率先して大事にしたいと思っています。
組合内でのギャップ
— 執行部の中で、目指す意識のギャップはあるんですか?
大河:実は小林(執行委員長)も、私も役員として教育関連の担当からスタートしました。工藤(執行副委員長)が今その担当です。 我々は「教育を変えていくことが教員の働き方そのものに直結していく」と共通して思っていました。
工藤: 少なくとも我々、執行部でズレが発生した記憶はないですね。 当然意見のズレがあれば、擦り合わせはしていかなきゃいけないなと思うんですけども、自然と同じ方を向いている気がしています。
— 執行部と組合員の間で、目指す意識のギャップはあるんですか?
大河:それよりもまず「今目の前にある課題」を重視する人たちが、ここに来るとすごく多いんだなと感じました。そこは丁寧に対応しなきゃいけないし、そういう人たちの視点も大事にしながらやっていかなきゃいけないなと思っているところです。
工藤:様々な考えを持ってる人たちが、一つの組合として組織してるのは事実なので、やはりそれぞれの思いを尊重しなきゃいけないことも当然あると思います。そうなった時に「それぞれ先の姿を目指す進み方」に向き合っていけるような発信の仕方をしていく必要があるのかなと思います。
組合の組織率の低下
— 秋田県教職員組合として現状の課題感や実態、悩みがあれば教えてください。
工藤:やっぱり組織率の低下です。「組合に入らないか」と声をかけてもなかなか入ってくれなくなったというような声をいただくことがあります。多分、我々に限らず、組合に主体的に関わってくれている人たちであれば、みんなが感じている課題だと思います。
大河:結局、教育現場が多忙になって一番先に切り捨てられるのが組合の活動かなと。ただ市町村や学校のトップダウンで来るものをこなしていくのが精一杯です。本来、我々と両輪で教育を変えていくっていうところが筋ではあるにも関わらず、なかなか時間外に組合活動をするっていうところから、特に若い世代が離れつつあります。若い世代をどう広げていくか、あとは脱退をどう防ぐか。どうしても組合のメリットを実感しにくい中で、やはり組織率の低下が大きな課題になっています。
若い世代を取り込む施策
— 課題に対して行っている取り組みや考えていることはありますか?
工藤:「組合が自分たちにとって必要なものなんだ」と感じてもらった上で、早い段階で加入するっていうケースが多いです。ベテランになってから加入するパターンより、青年部時代に加入する方が圧倒的に多いんです。ですので、青年部の取り組みは、手厚くしています。青年部員対象の交流会が県でも行われていますし、県内9つの支部ごとにも様々な交流が図られています。青年部が集まって、学んだり楽しんだりすることで、組合の良さを感じてもらおうとしています。
また、これから先生になろうと考えている学生さん向けに、セミナーも開こうとしています。秋田県の教育の充実を、組合として図っていることを現職のみなさんに発信できるかなと。青年層に限らず、組合が「頑張ってくれてるんだな」と思ってくれたらいいなと考えています。
組合の良さを一言で
— 非組合員に、組合に入るメリットを伝えてみてください。
大河:私は「人とのつながり」だと思っています。 組合に参画するコアな人たちが減ってきたり、組織が少し衰退してきたりしたのは、その「つながり」がものすごく希薄だったからかなと。ただ集まって飲んでというところばかりに、「つながり」を求めてたんだと、反省ですね。 「一緒に教育を語り合うつながり」はものすごく弱かったんじゃと思ってるので。そうすると、結局参加する人たちだけのメリットになってしまって、それ以外の人たちがメリット無いなって感じてたのは事実じゃないかなと。 そういう意味では「つながり」っていう言葉ってものすごく危険だなと思いつつも、その組合の大事な部分はやっぱり私は「つながり」だと思っています。
工藤:私も「つながり」のよさを感じてきました。でも、ここ数年、自分よりも年下がどんどん職場に入るようになって、組合加入の声をかけるとと若手からは「大丈夫です」と言われるんですよ。つながって得るものを感じづらいんだろうなと思っています。でも個人的にはその「つながり」が、自分にとって支えになったこともたくさんありますので、よさであることを伝え続けていきたいですね。
それからメリットといえば、脱退する方の中には、「メリットがない」と言って脱退する方がいらっしゃいます。勝ち取ったり改善されたりした権利や制度は、組合員だけが得られるものではないです。 だから、「非組合員でも一緒でしょ」という言い方をされるんです。だからか、「組合に入っているメリット」について、改めてよく考えるようになりました。
私はこの専従の打診を受けた時に、 光栄なお話ではあるんだけれども、学校現場を離れたっていう経験がなかったので不安でした。不安を鎮めようといろいろ自分を振り返ったんですけども、組合に入ってたから知れたことや、組合に入っていたから得られた新たな視点がたくさんあるんですよね。 キャリアを積み重ねたことで、仕事の面では自分なりに手応えをつかむことができるようになったんですが、それと同時に、たくさん研修もしてきたのに、どう解決していいかわからない事案も増えていったんですよ。その時に組合に行くと、今まで感じたことがなかった、考えたことがなかった視点が得られたんです。
組合は、今まで知らなかった人や現実と出会い、新たな視点を得られる場だなと感じています。 そこがメリットだと感じてもらいやすいのではないかと考えて、最近そういう発信を心がけています。
離れた人と同じ方向を向いて
— 最後に、今後のありたい姿や組織像をお伺いできますか?
大河:車で行くと100キロ以上離れてる全然違う職場の人、役員になって初めて出会う人もいるんです。でも、そういう人たちとつながりを紡いでいけるから、課題を共有できるのかなと。教育、賃金、労働条件などの悩みからつながることができると思っています。本当に見たこともない、名前も知らない人たちとすぐに課題を共有して、同じ方向を向けることは、この組合の存在意義なのかなと感じています。今、国や県が目指している教育に新たな視点でアプローチする方法を一緒に考えていきたいです。 それから、ただ労働条件が改善された、給料上がったなどの制度的な問題だけじゃなくて、もっと我々が助け合って、目の前の子どもたちとの時間・空間を改善していくといったボトムアップの提案をできる場が、この組合なのかなと思います。新たな視点を持てる「人とのつながり」を紡いでいける教職員組合になれればいいなと思っています。



