団体交渉では議事録を作成しよう!理由や書き方、ポイントを解説

議事録は単なるメモ書きではなく、決定事項の経緯や内容を正確に記録することや、認識の齟齬を防ぐことに役立ちます。団体交渉における議事録の重要性や作成方法など、労働組合として押さえておくべきことを見ていきましょう。

目次

団体交渉では議事録を作成すべき?

団体交渉は複数回実施されるのが一般的であり、交渉のたびに議事録を作成することが大切です。議事録を作成した方がよい理由や作成方法、録音や録画の必要性について解説します。

議事録を作成した方がよい理由

団体交渉における話し合いのたびに議事録を作成すれば、次回交渉の準備に役立ちます。議事録で正確に記録した前回の話し合いの結果を踏まえることで、戦略を効率よく立てることが出来るでしょう。

トラブルへの備えになることもポイントです。議事録には決定事項の経緯や内容が記録されるため、最終的な契約内容で確認できないことが原因としたトラブルに対しても、議事録が証拠としての役割を果たすケースがあります。

また、団体交渉では全ての話し合いに同じ人が参加するとは限りません。途中から初めて参加する人も、議事録をチェックすればそれまでの経緯を正確に把握できます。

議事録の作成方法

議事録に最低限盛り込むべき主な項目は次の通りです。

  • 日時
  • 出席者
  • 双方の発言者と発言内容
  • 合意できた内容
  • 次回交渉までの準備事項

議事録はあくまでも任意で作成するものです。双方がそれぞれ作成するのが望ましいものの、一緒に作成する必要はありません。また、双方の署名捺印なども不要です。

企業側にサインを求められた場合も応じないようにしましょう。サインに応じると契約書としての効力が発生することがあり、議事録の内容に拘束されてしまう恐れがあります。

録音や録画の必要性

団体交渉で議事録を作成する際は、録音や録画を行いましょう。議論が活発になりメモ書きが追い付かなくなっても、録音や録画をしておけば正確な内容の議事録に仕上げられます。

録音や録画を行う機器は、あえて相手が見える場所に置くのがおすすめです。乱暴な言動をさせないための抑止効果があります。

団体交渉における録音や録画は合意形成に資する行為とされ、原則として企業側は労働組合による録音や録画の申し出を拒否できません。また、それを理由に団体交渉自体を拒否することは不当労働行為に該当し、誠実交渉義務に反する行為と解されるでしょう。

ただし、映像で表情まで記録される録画については、参加者の萎縮防止などから、企業側には拒否の合理的裁量が認められます。

団体交渉の基本

要求の実現を目指して行う団体交渉は、労働組合における重要なテーマの一つです。協議できる内容や大まかな流れ、交渉後に締結する労働協約について解説します。

団体交渉で協議できる内容

団体交渉における労働組合の要求内容は、以下の2種類に大きく分けられます。

  • 義務的団交事項:会社側が交渉に応じる必要がある要求
  • 任意的団交事項:会社側が交渉に応じなくてもよい要求

また、義務的団交事項には次のようなものが該当します。

  • 労働条件や待遇に関する事項(賃金・労働時間・休息・安全衛生・災害補償など)
  • 団体的労使関係の運営に関する事項(団体交渉・争議行為・組合活動のルールなど)

原則として、非組合員についての労働条件は義務的団交事項に該当しませんが、結果的に組合員にも影響する内容なら義務的団交事項となります。

団体交渉の流れ

労働組合が団体交渉を行うためには、会社に交渉を申し入れる必要があります。希望日程や交渉目的などを書面に起こし、会社に提出して申し入れとするのが一般的です。

会社側が申し入れに応じたら、日時・場所・出席者を決めます。双方の事情を考慮しながら、お互いに協力して無理のない調整を行うことが大切です。

交渉を経て合意に達した後は、労使間で労働協約を締結します。交渉を重ねても妥結に至らない場合は、争議行為や法的手続きに発展することもあります。

労働協約について

労働協約とは、団体交渉後に労使間で締結される、会社と労働組合の約束事のことです。賃金や労働条件などに関するルールを決め、双方が書面に署名または記名押印して効力が発生します。

労働協約と間違えやすい労働関係ルールは次の通りです。

  • 労使協定:特定の労働条件に関して法定基準の適用除外を定めたもの
  • 就業規則:会社が従業員の労働条件や服務規律などを定めたもの
  • 労働契約:給与や労働時間などについて会社と従業員が個別に結ぶ取り決め

労働協約は上記いずれのルールとも異なる性質を持ちます。また、就業規則や個別の労働契約に優先する、非常に強い効力を備えた契約です。

労働協約は基本的に組合員だけにしか適用されませんが、一定の条件を満たせば組合に加入していない従業員にも適用されます。

団体交渉では議事録の作成を

団体交渉で議事録を作成すれば、次回交渉の準備に生かせます。トラブルへの備えになることもメリットです。

議事録の作成時には、同時に録音や録画も行いましょう。より正確な内容の議事録に仕上げられるほか、相手に乱暴な言動をさせないための抑止効果もあります。

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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