ろうきんとは?労働組合との関係性や銀行との違い、社会的役割を解説

労働組合の三役として活動していると、組合員から「ろうきんとは何ですか?」「銀行とは何が違うのですか?」といった質問を受けることがあるかもしれません。このとき、具体的にどのような特徴があり、労働組合とどのような関係性があるのか、詳しく説明できる方は少ないかもしれません。本記事では、ろうきんの基本知識から社会的役割まで、労働組合の立場から知っておくべき情報をわかりやすく解説します。

目次

ろうきんとは

ろうきんは「労働金庫」の略称で、労働組合や生協などの団体が出資して設立された非営利の協同組織型金融機関です。ここでは、労働組合との関係性から歴史、一般的な銀行との違いまで詳しく見ていきましょう。

ろうきんと労働組合の関係性

ろうきん(労働金庫)は、労働組合や生活協同組合など、働く人々の相互扶助を目的とした団体が出資・設立した協同組織型の金融機関です。

一般の営利目的の銀行とは異なり、労働者の生活を守ることを使命としており、労働組合との連携はろうきんの存在基盤ともいえるほど密接です。

実際の取り組みとしては、給与の振込先口座指定、住宅ローンの特別金利、財形貯蓄制度の導入支援など、組合員の生活設計をサポートする施策が多岐にわたって展開されています。

ろうきんの歴史

ろうきんの歴史は戦後復興とともに始まります。高利貸しに頼らざるを得なかった労働者の生活を守るため、1949年に岡山県と兵庫県で設立されました。

当初は信用協同組合としてスタートしましたが、1953年に「労働金庫法」が施行され、正式に労働金庫として制度化。その後、全国に設立が進み、1972年の沖縄県復帰後には沖縄にもろうきんが設立され、現在では47都道府県すべてにろうきんがあります。

バブル経済や金融自由化など時代の変化に対応しながら、労働者の暮らしに寄り添うサービスを拡充。

1998年以降は地域統合が進み、2003年には現在の全国13労働金庫体制が確立されました。今日も労働者とその家族を支える金融機関として、非営利・協同の理念に基づく役割を果たしています。

ろうきんと銀行の違い

ろうきんと一般的な銀行との最も大きな違いは、その設立目的と運営方針にあります。

項目銀行ろうきん(労働金庫)
設立目的株主の利益最大化を目的とする株式会社組合員・利用者の福利向上を目的とする協同組織
利用者の範囲基本的に誰でも利用可能労働組合員、生協組合員、その家族などが主な利用者
サービスの特徴一般的な金融サービスを提供労働者のライフステージに合わせた支援に特化したサービスを提供

銀行が誰でも利用可能なのに対し、ろうきんは労働組合員やその家族が利用者になります。そのため、取り扱う金融商品も労働者のニーズに特化している点が大きな違いです。

ろうきんの社会的役割

ろうきんは単なる金融機関ではなく、労働者の生活向上と社会の発展に貢献する重要な役割を担っています。ここでは、その具体的な社会的役割について詳しく解説します。

組合活動の支援

ろうきんは労働組合の活動を金融面から積極的に支援しています。この支援は組合運営の安定化に大きく貢献しています。

具体的な支援内容

  • 組合費の自動引き落としサービス:組合費徴収業務の効率化
  • 組合活動資金の融資:低利な条件での資金提供
  • 組合員向けセミナーの開催:マネーリテラシー向上支援
  • 福利厚生制度の提案:組合独自の制度設計サポート

また、組合活動に必要な資金調達においても、ろうきんは重要な役割を果たしています。一般的な金融機関では難しい組合活動資金の融資も、ろうきんなら柔軟に対応してくれる可能性もあります。

低利な融資商品の提供

ろうきんの代表的な社会的役割のひとつが、労働者の生活に密着した低金利のローン商品を提供することです。

住宅購入や教育資金、自動車購入、リフォームなど、ライフステージに応じた幅広い資金ニーズに対応しています。

組合員には特別金利が適用されるほか、一般の銀行に比べて柔軟な審査や手数料の優遇、丁寧な相談対応なども特徴です。

金融的な支援だけでなく、ライフプラン全体を見据えたサポートを通じて、労働者が将来への備えや夢の実現に踏み出しやすい環境を整えています。

福祉事業の助成

ろうきんは、労働者の生活の質を向上させるために、さまざまな福祉事業に対して助成を行っています。

健康診断や人間ドックの補助といった健康増進への取り組みに加え、文化・スポーツ活動の支援や教育・研修の機会提供にも力を入れています。

さらに、地域の清掃活動や災害支援といった社会貢献事業にも関与し、協同組織としての公益的役割を果たしています。

これらの活動を通じて、労働組合の社会的機能が広がり、組合員に対する支援もより多様で充実したものとなっています。

財形制度の改善推進

勤労者の将来設計を支える財形制度においても、ろうきんは長年にわたり普及と制度改善を推進してきました。

自由用途の一般財形、住宅取得に備える財形住宅、老後資金のための財形年金など、それぞれの目的に応じた商品を提供しています。

加えて、申込み手続きの簡略化やセミナー開催による制度理解の促進、個別の資産形成相談にも対応しています。

ろうきんは、組合員一人ひとりが安心して長期的な資産形成に取り組めるよう支援し、経済的自立を後押しする役割も担っています。

ろうきんを活用し組合員にも周知を

ろうきんは労働者のための金融機関として、労働組合と密接な関係を持ちながら様々なサービスを提供しています。その特徴や社会的役割を理解することで、組合活動をより効果的に進められるでしょう。

ろうきんとの良好な関係は、労働組合の発展と組合員の福利向上に欠かせない要素です。今後もより一層の連携強化を図り、労働者にとって価値のあるサービス提供を目指していきましょう。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

目次