労働組合における組合規約の必要性。規約に盛り込むべき項目も解説

労働組合の組合規約は、組合の団体性を示す要素の一つです。規約が不十分な規約不備組合になってしまうと、法律の保護を受けられなくなります。適切な組合活動を進められるよう、組合規約の役割や盛り込むべき項目について理解を深めておきましょう。

目次

労働組合に組合規約が必要である理由

労働組合における規約の必要性を理解するためには、労働組合そのものについてもきちんと理解しておかなければなりません。まずは、労働組合と組合規約の関係性について詳しく解説します。

組合規約は組合の団体性を示す要素の一つ

労働組合法では、労働組合を「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目的として組織する団体」としています。組織の団体性は組合の実質的な要件であり、団体性を欠いた労働組合は労働組合法上の保護を受けられなくなるのです。

また、労働組合の団体性を示すためには、「2人以上の組合員で組織されている」「規約が存在する」「運営のための役員や財政を有している」の3要素が必要であるとされています。

つまり、労働組合が法律上認められる組織であるためには団体性がなければならず、その団体性を示すための要素として組合規約が必要になるのです。

出典:労働組合法 | e-Gov 法令検索

労働組合は組合規約に基づいて結成される

労働組合の結成については、法律で特に規定されているルールはありません。しかし、労働者の団体としての実体を備える目的に沿って、実際は一定の手続きで結成されています。

一般的には、発起人を中心としたグループが結成準備委員会を立ち上げ、組合規約の原案や構成員とすべき者などが話し合われます。最終的に開催される結成大会において承認された組合規約に基づき、組合三役などの代表者が選出されて労働組合が誕生するという流れです。

組合の組織構造や役員の選任方法、総会や委員会などの機関の設置と運営方法などを定めた組合規約は、労働組合の活動の基盤となるものなのです。

規約不備組合に生じるリスク

規約不備組合とは、組合規約が存在しない組合や、労働組合法第5条第2項で規定された規約の必要記載事項の要件を満たしていない組合のことです。

規約不備組合は労働組合法上の労働組合として認められないため、法的保護を受けられなくなります。主なリスクは次の通りです。

  • 組合員を不当に解雇するといった会社の不当労働行為から保護されない
  • ストライキを実行した際、行為の内容によっては刑事責任を問われる
  • ストライキにより発生した会社側の損害に対する民事責任を問われる
  • 団体交渉による労働協約を締結できない

規約不備組合になると、労働組合の本来の目的を達成することが困難になり、単なる従業員の集合体となってしまいます。

出典:労働組合法 第五条 | e-Gov 法令検索

組合規約に盛り込む項目

組合規約に記載すべき項目は法律で決まっています。それ以外に定めた方がよい項目や、項目を決める際のポイントと併せて見ていきましょう。

必ず記載しなければならない項目

労働組合法第5条第2項では、組合規約に次の項目を盛り込まなければならないとしています。

  • 労働組合の名称
  • 事務所の所在地
  • 組合員が均等な取り扱いを受ける権利を有すること
  • 組合員資格が人種・宗教・性別・門地・身分により剥奪されないこと
  • 役員を直接無記名投票で選出すること
  • 総会を毎年最低1回は開催すること
  • 資格を保有する会計監査人の会計報告が毎年最低1回は組合員に公表されること
  • ストライキの実施には組合員の直接無記名投票による過半数の支持が必要であること
  • 規約の改正には組合員の直接無記名投票による過半数の支持が必要であること

出典:労働組合法 第五条 | e-Gov 法令検索

あらかじめ定めておくべき項目

以下に挙げる項目は、規約に必ず盛り込まなければならないものではありませんが、定めておくと組合運営をスムーズに進められるでしょう。

  • 組合の事業内容
  • 組合員の範囲
  • 組合員の権利や義務
  • 加入や脱退の手続き
  • 組合の機関
  • 選挙や議決の方法
  • 組合費
  • 会計
  • 表彰や制裁

組合規約の項目を決める際のポイント

規約に盛り込む項目を見ると分かるように、組合規約で最も重要なのは民主的な組合運営が保障されることです。また、組合員を平等に取り扱うことを示す必要もあります。

任意で決められる項目については、組織が強くまとまれるかどうかを基準に検討しましょう。他の組合が公開している規約を参考にするのもおすすめです。

組合規約が細かくまとめられていない場合、意思決定の際に都度話し合いを行わなければならなくなります。組合員が疑問に感じることも多くなり、苦情が増える恐れもあります。

組合規約は労働組合のあり方を方向づける根本的な規則集です。現在の組合員だけでなく、将来の加入者も拘束することになるため、どのような組合を目指すのかよく検討して作成することが重要です。

組合規約について理解を深めよう

組合規約を適切に整備することは、組合が法的保護を受けるための条件です。規約不備組合にならないよう、記載すべき項目を確認しておかなければなりません。

また、組合規約には組合のあり方を方向づける側面もあります。目指すべき組合像をしっかりとイメージして規約を作り、活動をスムーズに進めていきましょう。

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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