【ワコール労働組合】一つ一つの情報に対して、周りの声に流されず、自分の意思で判断できる人を増やしたい

約3,400名の組合員で構成されている京都府に本社を置く衣料品メーカー「株式会社ワコール」の労働組合で中央執行副委員長の山内様(写真右)、中央執行委員の希代様(写真左)のお二人にどんな想いを持って組合活動に取り組まれているのか、労働組合の在り方や未来についても交えながら、お話をお伺いしました!(以下、敬称略)

目次

組合に関わる経緯や自己紹介

希代:私は、2018年の4月に株式会社ワコールに入社をし、今年で7年目を迎えます。入社1年目は、販売企画部に配属され、量販店向けの商品構成や売り場レイアウトの検討・企画等を2年半ほど経験し、その後、モノ作りに関わる技術生産本部でも2年半経験を積みました。弊社はメーカーですので、幅広く業務を経験できたことはキャリアにおいても非常に良かったと思っています。

販売とモノ作り、異なる両サイドでの経験をしましたが、今後どういったキャリアを歩んでいこうか迷っていました。その時、現在の事務局長である大山より労働組合に関する話を伺って感銘を受けたのが契機となり、2023年4月から労働組合の専従として活動しております。現在は、中央執行委員という立場で組合の業務遂行から、TUNAGのメイン運用担当や機関誌「ルキャット」の発行等を中心に業務を担っております。

山内:私は、2016年4月に入社をしておりますので、今年で9年目になります。入社から4年間はずっと東北エリアの営業担当で、最初の2年間は百貨店、後半2年間は量販店を担当していました。主に売り場の販売員のマネジメントや、得意先様とのイベント企画~実行~立案、予算管理や在庫管理といった役割を担っておりました。

ただ、東京に居住しながら東北エリアの営業担当をしていたため、月の半分以上は、東北に出張する日々を繰り返す大変な生活ではありました。プライベートのライフイベントが重なったこともあり、ワコールでのキャリアを歩むのか、もしくは、転職をするのか、正直に言うと非常に悩んでいました。

労働組合との関わりは入社2年目にセクション委員(=いわゆる職場委員)になったことがきっかけです。3年目にはセクション長と呼ばれる職場委員を束ねる役割に従事。4年目には、東京支部の組合副代表という形で、中央執行部に関わるようになりました。そんな時に、現委員長の綾部から「労働組合の専従をやってみないか?」と打診を受けました。やりがいを強く感じたと同時に、私が兵庫県出身で関西にも縁があり、京都本社で勤務できることも決断を後押ししてくれました。

それまでの4年間は東北エリアしか見ていなかったこともあり、ワコールという会社にいながらも、会社の内部を全然知れていないこともありましたので、視野を広げ、より視座を高めたいと思えたのも専従になった理由の一つです。

専従になってからは、約3年間評価制度や賃金・賞与関連など、労働組合の根幹に関わる案件を経験させてもらったため、現在それらの案件はサブ担当として関わりながら、新たに退職金・年金関連の案件をメインで担当しています。

また、組織内活動においては、希代を含むメンバー個々人の業務マネジメントを行っています。ありがたいことにこの4年間で、労働組合のある程度の業務は一通り経験させていただきました。

ワコール労働組合の現状や課題に感じている事

希代:大きく3つの課題があると考えています。

1つ目は、ワコールという会社自体が厳しい状況にある中で、労働組合の在り方や存在価値が問われていること、です。会社と組合員を繋ぐ原点に立ち返り、会社をより良くするための取組みを実直に重ねていく必要があると考えています。

2つ目は、労働組合内のつながりが弱まっていることです。もともと対面活動を始め、組合員同士のつながりが感じられる場を提供する事も組合の役割でした。コロナ禍を経て働き方も変わり、対人コミュニケーションが希薄化したことで、労働組合への帰属意識も弱まってしまったと認識しています。

3つ目は、会社と向き合う上での労働組合が取るべき姿勢です。働き方や休み方、従業員を取り巻く処遇全般は少しでも良くしていきたい。一方で会社の経営状況は芳しくない。そういった苦しい状況下で、何を目指していくべきなのか、難しく感じています。どうすれば従業員は納得、そして満足して働けるのか、本当の意味での「働きがいって何だろう」と葛藤しながら進めている状況です。

山内:労働組合として、「個人の既得権益を優先すべき」か、「これから先、未来の労働組合としての在り方を模索していく」のか。組合としてどう決断すべきか今一番悩んでいますね。

例えばですが、社内でも個々人が担う業務の難しさや責任の大きさはまちまちです。世の中の潮流として年功序列型が廃止されていくことを鑑みると、若い人であろうと、能力を発揮して素晴らしい成果を出しているのであれば、年次に関係なく処遇されるべきという考え方もあります。一方で、長きにわたり会社に貢献をしてくれた人も当然会社にはいらっしゃいます。誰に対して、どのように報いる制度や仕組みを考えるべきなのか、社会の流れと組織にいる人の思いを擦り合わせていく塩梅がやっぱり難しいなと感じています。

希代からもお話しした通り、会社自体は厳しい状況なので、今までと同じようなやり方をしていてはいけない、という危機感を持つ方もいれば、中々変化を好まずに今まで通りでいいじゃないかという方も存在します。そういった人たちの意識を引き上げるために労働組合がどうやってコミットするかが大きな課題ですね。

言葉だけでは簡単に聞こえますが、様々な意味合いで「バランスを保つこと」は本当に難しいと日々感じています。

現状や課題に対して、打ち手や取り組んでいる事

山内:今までは会社からの発信だけで済ませていたようなことも、組合側でもより丁寧に噛み砕いて従業員に伝えることを心がけています。ある決定事項や方針変更の発信に対して、意思決定に至った背景やどのような協議を繰り返してそうなったのかなど、詳細が見えてこないと、結果的に不満に繋がります。全貌が見えない故に生じる不安や反発が起きてしまうことは出来る限り避けたいと思っています。

まだまだこれからではありますが、中央執行部内での話し合いや労使協議の内容も組合員にもなるべくオープンに開示していきたいですね。

私が担当していた評価制度では、例えば昇降格審査において、人事部の内規として定められていた基準が開示されないが故に従業員の不満につながっていたため、会社の未来のためにも見える化すべきだよねと、労使双方で協議を重ね、最終的に開示することが出来ました。結果的に、従業員からプラスの意見も多くきましたので、こういった積み重ねを続けていきたいです。

希代:会社であっても組合であっても、情報を発信した後に、それがどう受け止められているのかは、なかなか反応がないと分からない悩みを抱えています。ネガティブな反応があったとしても、話を伺いながら、細かく丁寧に説明し、考えが正しく伝わることで、共感や深い理解に繋がった経験があります。少しずつではありますが、それを繰り返すことで良い方向に向かっていけていると思います。

加えて、我々も耳を傾けなきゃいけないってなった時に、「なぜそういう声が上がっているのか?」「どこまで聞くべきなのか?」を見極めなきゃいけないとも感じています。

組合活動で大事にされているポイント

希代:組合員と向き合うにあたっては「共に働く仲間であって、味方ですよ」という想いを大事にしています。労使協議を経て決定した内容やその発信に対して、様々なご質問もいただきますが、組合員のためになること、そして会社がより良い方向に進むことを目指して取り組んでおり、覚悟を持って取り組んでいるのを理解いただけるよう努めています。

ただ、言葉だけで一方的に伝えてもなかなか難しいと思うので、しっかり時間を割いて、組合員の話に耳を傾け、姿勢で示すことも意識しています。時には、反省すべきこともあり、失敗してしまったと振返ることもあります。ただ厳しいお言葉をいただいた際は、労働組合なら何とかしてくれるという期待の表れだと思うので、その期待に応えるべく、今後も取り組んでいきたいなと思います。

山内:一人一人の声に耳を傾けるっていうのは本当にその通りではありますが、傾けるべきではない声もあると考えています。組合員とも建設的な議論をしながら、「対話」をしていきたいですし、単純な文句や悪口といった声には、耳を傾けていられません。

我々は会社が社会から取り残されないよう、会社が少しでも前進していけるよう、そして多くの組合員が前向きになれるよう、日々様々な制度を新設・見直すべく検討しています。その中で当然変わることを恐れている人たちも多くいらっしゃいます。そこに対しては、我々は正しい理解をしてもらうよう努めますが、一方で、過剰な抵抗感から周囲のメンバーの足を引っ張るような人にまでは、目を向けるべきではないと感じています。

正しく思いが伝わっている人たちや、迷いを持たれている人たちをどう引き上げていくかを常に意識していますし、大事にしていきたいです。全ての声に向き合っていければベストではありますが、優先順位やスピード感を考えた上で、出来ること、やらなければならないことに注力しています。

労働組合の未来について

理想の組織像や目指していきたい姿について

山内:従業員一人一人が処遇や評価を会社と交渉でき、自分の労働環境等の改善について、建設的な議論を出来る状態になれば、従業員代表として、その声を取りまとめて伝える必要さえ無くなります。それが理想形かなと思っていますが、ここから3~5年でそこまで持っていけるかというと、難しいのが実状です。

とはいえ、今ある組織をより良くしていくために、という観点だと、従業員側の真価が問われるんだろうなと感じています。「一つ一つの情報に対して、周りの声に流されず、自分の意思で判断できる人を増やしたい」と強く願っていますし、そんな人が集まる組織を作りたいなと思います。

希代:組合員と従業員がワコールという会社で働くことへの納得度と期待感を高めていきたいなと思います。働く環境や職場、会社は自由に選ぶ。転職が当たり前だ、という社会に変わっていく中で、今のワコールで納得して働けているのかっていうのは、会社の魅力、ひいては働きがいや働きやすさに直結すると思うんですね。

現状を正しく理解してもらい、ワコールで働きたい、と期待感を持ってもらえることが、会社の業績改善にもつながり、社会に還元できるものの価値も高めていくと思っていますので、そこに注力していきたいです。

〜山内様、希代様、ありがとうございました!〜

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この記事を書いた人

「for UNION」編集長。
2020年にスタメンに新卒入社。
その後、2022年1月に労働組合向けアプリ「TUNAG for UNION」を立ち上げ、現在はマネージャーとして、事業拡大に従事。

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