【鉄道運輸機構労働組合】札幌や九州にいる同僚が隣にいるかのような距離感が近しく感じられるような組織を作りたい。

全国の新幹線鉄道など鉄道建設をメインに行っている独立行政法人の労組である、鉄道運輸機構労働組合(鉄構労)の前書記長 柏木様(写真左)と元書記長の柴田様(写真右)の2名に、労働組合の未来について、お話をお伺いしました!(以下敬称略)

目次

組織概要と自己紹介

組織概要

弊組の組合員が勤務している鉄道・運輸機構は、国土交通省管轄の独立行政法人で、全国の新幹線鉄道建設など鉄道建設をメインに行っています。現在、整備新幹線関係で言えば、北海道新幹線の新函館北斗〜札幌までの延伸工事を担当しています。また、今年3月には北陸新幹線の金沢~敦賀の工事が完了し、鉄道施設をJR西日本に貸し付けて開業しました。

新幹線以外では都市鉄道関係も行っていて、最近だと相模鉄道、JR東日本、東急電鉄が運行している直通線の工事を担当しました。鉄道以外では、船舶の共有建造事業も行っています。もともと鉄道・運輸機構は、鉄道建設公団が前身の一つですが、それ以外に運輸施設整備事業団も前身としていて、離島航路などにおいて船主と一緒に船を作っていくような事業となります。また、国際業務関係では、国が支援しているインド高速鉄道プロジェクトにも携わっています。さらに、最近取り上げられている2024年問題は、交通運輸関係でも影響があるため、そこに資するような支援として地域公共交通出融資等事業も実施しています。

以上のように様々なことを行っている全国的な組織なので、組合員も全国に散らばっている状況です。現在の組合員数は約800名で、北海道に約230名、関東圏に約420名、大阪・北陸に約100名、九州に約50名というような形です。弊組は、土木建設関係がメインなのでどうしても男性職員の採用比率が非常に高く、女性組合員は大体1割程度です。また、ベテラン層が抜けてきていて、34歳以下の青年部が半分を超えているような状況なので、組合組織としては若返りが進んでいます。

組織率としては、一般職員ベースだと8割程度は加入してもらっていて、最近は労働組合離れが進んでいると言われていますが、弊組はわりと加入してもらえている状況です。鉄構労の本部は機構の本社がある横浜にあり、札幌・東京・本社・関東甲信(新横浜)・大阪・九州(福岡)にある職場の拠点ごとに支部があります。これら6支部それぞれには、執行部を設置して役員を配置しています。その下には、分会や班があり、職場単位ごとに一名ずつ取りまとめの組合員がいます。皆さん非専従者として業務の合間を縫って組合業務を頑張ってくださっていて、大変頭が下がる思いです。

横浜の本部には、中央執行委員会を設置しており、委員長と書記長の2名が専従者、非専従の役員が5名で活動しています。我々のような組合員数の規模の労組で専従を2名置いているところはなかなかないかと思いますが、昔からの様々な活動を何とか維持していくために専従2名体制でやっているところです。今年6月に弊組は60周年を迎えましたが、昔は専従3名を置いていた時代もありました。当時と比べてしまうこともありますが、伝統をしっかり維持していけるように現在も一生懸命活動しています。支部の役員の年齢はわりと若く、20代で役員に就いている組合員もいます。本部の方は、基本30代ですが、他の労組を見る限りでは若手で結構回していけているのかなと思っています。また弊組は、交運労協や自治労の神奈川県本部での活動も行っています。

自己紹介

柏木:私は2012年に入社し、最初は札幌にある北海道新幹線建設局で勤務していました。当時は、本当に若手がいない時代だったので、半ば強制的に支部役員をやっていました(笑)ですが、他の役員の方などと組合活動について話をするのがすごく楽しくて、当時書記長をやっていた方とは今も一緒に本部で活動しています。その後、本社に異動になって本部で1年間執行委員を務め、次は九州に異動になりました。そこでは、3年間副委員長を仰せつかり、その後また異動して現在専従2年目です。

私は、北海道から本社に行くまでの間に1年間出向していて、その際に扶養手当がうまく支給がされなかったことがあったのですが組合を通じて助けてもらった経験があります。組合というのは、何か困ったときに助けになってくれるんだなというのを感じ、その経験を踏まえて自分も色んな職員の頼りになる存在になれたらいいなという思いがあり、今に至っています。

柴田:私は、2013年入社で最初は、北陸新幹線の長野~金沢の建設中に長野市にあった北陸新幹線建設局に勤務していました。通常、役員を務めるのは入社して1年経った2年目ぐらいからが多いのですが、人がいなかったこともあって私は入社半年で役員を務めることになりました。1年間執行委員を務めさせていただき、その後北海道に異動しました。そこでも1年間執行委員を務めて、その後九州にも異動しましたが、本社に来た時に中央執行委員を約1年間務めました。その後、当時の書記長の方から専従書記長をやってくれないかとお声がけいただいたんです。

柏木:本当は私がやる予定だったのですが、九州新幹線の武雄温泉~長崎の開業直前の時期でどうしても離れられず、1年でいいので他の方にお願いしたいという話の中で彼が来て繋いでくれたんです。

柴田:自分がやるしかないなというところと中央執行委員をやっていた中で勉強になることが多かったというのもあってありがたい経験だと思い、書記長を引き受けたというのが2、3年前の話になります。我々の組合自体、討論集会や定期大会など全国から人を集めてイベントをやることが比較的多いので、私もそれにかこつけて色んな人とお会いして色んな人と話をするというような経験をしてきた中で、人生にとっても仕事にとっても組合活動は良い経験になって面白いだろうなという思いがあり、今現在に至っています。

注力している業務内容

柏木:一つ目は、長時間労働というのがどうしても課題として大きく、そこを何とかしたいというところを含めて職場環境の改善に注力しています。建設現場に近いところで一生懸命働いている組合員の方もいて、そういった方々が働き詰めになっているというのも実情なので、そこを何とかしたいなと思っています。最近はAIとかDXという言葉がよく出てきますが、より効率よく働ける職場をいかに作っていくかというのは一番考えているところですね。

二つ目は、会社との交渉です。我々は全国転勤があるので、住む場所というのが組合員にとって大事なファクターになってきます。会社側が宿舎や寮を提供してくれていますが、組合員からの要望も色々とあるので、それを少しでも汲み取って会社側と交渉していきたいと思っています。

三つ目は、出向している方のフォローアップです。今年、北陸新幹線が延伸開業したので業務量としては一時期のピークから少し落ちてきています。特に新幹線関係だと電気設備や機械設備など色んな設備系統の工事があるのですが、現在はどうしてもそこの業務がない時期なので、出向している組合員が多くいます。ですが、会社から離れて出向していても組合員であることに変わりはないので、そういう離れた方達へのフォローアップもしっかりしていきたいと思い、今頑張っているところです。

四つ目は、横の繋がりをしっかり持てるような組織作りです。組合員全員が参加できるような組合活動を支部も巻き込んでやっていきたいですし、それに絡めて今後は組合費の見直しというのもしっかり考えていきたいと思っています。

鉄道運輸機構労働組合様の現状や課題

抱えている課題

柏木:冒頭、組織率はある程度維持できていると申し上げましたが、実は過去から比べると低下傾向にあるため、何とかしなければならないなと思っています。昔の新入職員の加入率は100%が当たり前だったんです。私が入社した時も全員加入していました。ですが最近はそうもいかず、今年に関しては20名ちょっとの新入職員が入社しましたが、まだ加入していない人が10名ほどいます。昔からいる先輩から言わせると、何で全員入らないんだという感じです(笑)さらには、加入してから途中で抜けられてしまう方もいらっしゃいます。我々の思いがうまく伝わっていなかったりずれていたりするのかなと思いますが、年間に5〜6名は抜けてしまう方がいますね。何とかしてここも減らしていきたいです。コロナ禍が影響しているのかもしれないですが、そこからうまく活動が再開できているのかどうかについてもしっかり我々の方で考えていきたいと思います。

また、今の若い方々の個人の意識は昔と大きく変化していて、コスパとかタイパとか何事も費用対効果を常に求めています。メリット・デメリットなどを考えることは非常に良いことだと思いますが、そういったところを考える世代だからこそ今後はそれに対応した活動の仕方を模索していかなければならないんだろうなと思っています。

柴田:弊組は、他の労組さんに比べて全国的にばらけているのが大きな特徴だと思っていますが、現場の声がなかなか上まで届かないという問題があり、皆が今どう思っているのか、どういうことが辛いと思っているのかという掘り起こしができているのかどうかというのは不安がありますね。また、こういうところは組織率の部分と両面の話だとも思っています。組合員の声を掘り起こして色んな話を聞くということは、組合に求心力があることに繋がると思っていて、そこに対して組織率が上がっていくんだろうと思います。なので、地理的な要因や人がばらけているというのがありつつも課題として今後しっかり考えていかなければならないと思っています。

課題に対するお取り組み

柏木:いかに組合活動に参加してもらえるかというところで新たな取り組みを行おうと考えています。弊組は、毎年の定期大会の中でスローガンというのを掲げています。すごく長いものが5項目ぐらいあるのですが、このスローガンを皆さんに考えてもらって募集をするという形に刷新しようかと考えています。TUNAGを活用しながら賞品的なものも用意し、少しでもこんな形で組合活動に参加できるんだという風に思っていただけると良いなと思っています。また、これを一例として色んな取り組みを今後も模索していき、今までの活動にとらわれないやり方で進めていきたいですね。

今後、スローガン募集というところをはじめとして、こんな企画だと組合員さんは参加してくれるんじゃないかというのを色々と模索していきたいなと思います。また、弊組においても、徐々に女性組合員のみならず男性組合員も育児休業を取得する者が増えてきました。世間的にも男性の育児休業取得が進んでいる中、機構の職場においてもそれが当たり前になるように、育児休業を取得しやすい職場環境づくりに労使で取り組んでいるところです。

鉄道運輸機構労働組合の強み

柏木:役員の更新が1年なので、色んな人が役員を経験できるというのは非常に強みだと思っています。他の労組さんでは同じ人がずっと続けるようなところもあると思いますが、弊組は本部も支部も含めて1年で改選が行われます。今年も結構な入れ替えがある予定ですが、役員を経験してくれる方がたくさんいることで活動にも活かしていけると思っています。最近は、役員経験を踏まえた意見を言ってくださる方も結構増えています。

柴田:先程も話にありましたが、若い世代で回せているのは強みだと思っています。若年層が800人中400人超えているような状況です。昔は、50代60代が5年も10年もやっていましたが、今は30代20代で役員をやっている方も多いですね。私も他の労組さんと話をしていると「そんなに若かったの?」と驚かれることもあります(笑)

柏木:平成29年あたりで60人ぐらい採用した世代があるのですが、もう少し経ったらその辺が中心となって活動を進めていってもらい、より若い力が入ってくれたら良いなと思います。私たちの5個下とか6個下だと思いますが、彼らが育って中心になってくれたらいいなと期待をしているところです。

組合活動の中で大事にされていること

柏木:「押し付けにならないように」というのは特に意識してやっています。やはり、やらされている感があるとモチベーションも上がらないと思います。当然意見も聞きながら、一緒にやっていこうという意識を持ってもらえるように心掛けていますね。基本的なことではありますが、色んな声に対して「そんなのはだめだ。」と一蹴するのではなく、相手の意見もしっかりと聞きながらその背景にあることは何なんだろうということもしっかり考えます。そこから繋がってくる何かがあるかもしれないので、親身になって対応しようと心掛けています。

柴田:私は、労使関係は相互関係だと思っていて、我々が労働者・使用者に対して意見をまとめて伝えることが、組合の機能だと思います。他方、我々は労働者の意見をまとめつつも使用者側との交渉もまとめなければなりませんが、その過程の中で労働者側としても法的な義務権利を守る必要がありますし、それとともに労働者としての権利をきちんと主張していく必要があります。そういう意味では、理解と納得というのが非常に大事だと思っていて、使用者の言うことが全部おかしいとか全部反対だというわけではなく、「使用者はこういう論拠で主張しているんだよ」というように、我々執行部が噛み砕いて組合員に伝えていく役割を担わなければならないと思っています。

なので、労働者にとって面倒くさいようなことや耳に痛いことであっても、我々はしっかりと伝えていかなければなりません。そしてその先に、そのような主張であれば、もっとこうしていこうというような議論のステップアップがあるのではないかと思っています。組合員に伝える時には、組合員が納得できることなのか、理解できることなのかということを噛み砕きながら伝えていき、その中で組合員から出てきた疑問についてはまた使用者と労使交渉でお話ししましょうというかたちで進めていっています。他方、使用者から言われたことに対して我々がそのとおりだなと思ったことに関しては、組合員にも納得してもらえるように説明していっています。労働組合とは労働者と使用者の間で、相互の理解の促進に繋がるような存在であるべきなんだろうなと思っているので、個人的にはそこを意識しています。

鉄道運輸機構労働組合様の未来

柏木:遠い未来のことまで考えが及んでいないかもしれないですが、簡単に言えば「組合に入っていて良かったな」と思ってもらえる組織にしていきたいですね。やはり組合費を払っているわけなので色んな意見を言ってほしいですし、コスパじゃないですが、組合費を払っている分ぐらいは良かったと思ってもらえるような組織でいたいと思っています。どうしてもうちの職員は他の民間企業さんと比べると、内向的なタイプの人が多いのかなと感じています。そうでない職員もいますが、どちらかというとその傾向が強いと思います。やはり、色んな意見を自分から言っていかなければ良い方向に繋がらないと思うので、多くの意見を出してほしいなと思っています。

また、労働組合に入るためにこの会社に入っているわけでないと思っているので、労働組合に入っている中で業務にも何か活きていくようなものが得られたら良いですし、「働きやすい職場」というのは組合を通じて目指していくものだとも思うので、組合での活動が業務にも繋がっていると感じられる組織が理想ですね。

あとは、こういう時代だからこそしっかり繋がりを持てる組織であってほしいですし、この繋がりを持つことが本当に良いものだと感じてもらえる組織でありたいと思っています。そして、弊組は60周年を迎えましたが、これまでの伝統を引き継いで未来永劫続いていく組織にしたいです。

柴田:機構は公的組織なので、民間に比べると働き方改革などが遅々として進まない部分がありつつも、PCがあればどこでも何でもできるというような働き方はどんどん進んでいます。それによって、地理的な距離感がだんだん薄くなってきていると思うんですね。昔は、札幌にいる人と会うとなるとかなり難しいことでしたが、今ではPCを繋げばすぐに遠くにいる人とも会話することができます。地理的に組合員が散らばっている状況にありながらも、札幌にいる同僚や九州にいる同僚が隣にいるかのような距離感が近しく感じられるような組織、そしてその手助けができるような組織になれば良いなと考えています。これは、組合にとっても機構という組織にとってもいいことだろうと思うので、そういう存在であり続けたいです。

〜柏木様、柴田様、ありがとうございました!〜

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この記事を書いた人

「for UNION」編集長。
2020年にスタメンに新卒入社。
その後、2022年1月に労働組合向けアプリ「TUNAG for UNION」を立ち上げ、現在はマネージャーとして、事業拡大に従事。

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