【太平洋工業労働組合】もう一度原点に立ち返り、主体性を持って組合員が活動できるような組織にしていきたい。

自動車部品の製造販売をしている会社の企業別労働組合である、太平洋工業労働組合の書記長 堀田様(写真左)と執行委員の林様(写真右)の2名に、労働組合の未来についてお話をお伺いしました!(以下敬称略)

目次

組織概要と自己紹介

組織概要

堀田:弊組は、自動車部品の製造販売をしている会社の企業別労働組合で、組合結成年は1968年なので現在57年目に入っています。ユニオンショップ制を採用しており、組合員は現在1900名弱で、岐阜県に約1600名、福岡県と宮城県にそれぞれ約130名の組合員がいる状況です。産別についてはJAMに加盟をしており、組合役員としては執行部が12名、書記が1名、代議員が福岡県と宮城県含めて全部で53名います。専従者はおりませんが、私が書記長として半専従という形で組合の仕事をしています。

弊組の人数規模で専従者がいないというのは他労組さんからも驚かれることがありますが、半専従だからこそ職場にいる組合員の生の声を肌に感じられるというメリットがあります。やはり我々は、現場で働く組合員のための組織なので組合員と一緒に仕事をすることで組合員の気持ちを理解したり本音で話していただけるような関係構築を行ったりということを大事にしています。

また、専従として長期間組合にいると、組合役員を降りた後に会社に戻ってしっかり仕事ができるのかというような不安を皆さん抱えていらっしゃるんですね。そういった皆さんの将来やキャリアのためにも戻れる環境は作っていこうというのがあって半専従という形にしています。また、弊組は、単位労働組合ということで支部制は取っておりません。基本的には、各工場に執行部を1人は置いていますが、福岡県と宮城県の工場には役員を置けていないのが実情です。

自己紹介

堀田:私は元々工場の事務所の方で働いていたのですが、同じ事務所内に当時の副組合長(副執行委員長)がいらっしゃって、その方からまずは会計監査からやってほしいというお話をいただきました。当時の私は、組合について深く知っていたわけではなく、組合があるなぐらいの状態でしたが、話を受けて2年間会計監査をやっていました。

その後、また同じ方から今度は組合の執行部をやってほしいというお話しをいただきました。誰でもできることではないから是非君にやってほしいとのことでしたが、何をしていいのか分からない上に大変そうなイメージがありましたので2・3回は断りました。しかし最終的には引き受け、これが組合活動に関わるきっかけになりました。そして、執行部に入った2年後には、書記長をやってほしいというお話をいただきました。

当時のすごい書記長さんを見ていると、私には到底できないなという思いと当時営業職をやっていた中で半専従として半分職場を抜けるということになるととても両立できないという思いがあり、これをお伝えしましたが、最終的には上司と話をして悩みながらも、当時の組合の組織事情も理解していましたし、自分の成長というか人生の経験にもなるのかなと思い、書記長を仰せつかりました。それから現在10年が経とうとしている所です。

林:私は組合に関わって4年目になります。弊組の執行部は4年前までは男性のみで構成されていました。ジェンダー平等などの流れに伴って、女性の執行部を登用する必要があるのでは、という体制づくりのタイミングで声をかけていただきました。現在は執行部12名のうち私を含めて2名が女性の執行部です。私は元々、組合の福利厚生部の部員だったのですが、そこで色々と世話焼きをしていたところが組合長の目についたのかなと思っています。

注力している業務

堀田:手続き関係などの事務的なところについては、書記の方にお願いをしていますが、定期大会で承認された方針に沿って活動の具体化を行ったり、研修会やイベントの企画・運営をしたりというのをメインで行っています。ここ最近だと、コロナをきっかけに活動を棚卸しし、活動の目的や目標を改めて確認した上で今の活動がそれに合致しているのかというのを見ながら活動を変えたり辞めたり新たに作ったりしていて、ここにパワーをかけて進めています。

言い訳ではないですが、半専従というところもあり、なかなか他労組さんのようにガラッと活動を変えたり深く活動したりきめ細やかな組合員とのコミュニケーションだったりができていないのが悩みの一つではありますが、できる範囲でやっている状況です。

林:わたくしは教育文化部の部長をしており、組合員に組合の諸活動や情報を知っていただく広報的な役回りをさせていただいています。この教育文化部は、各生産拠点に一般の組合員を部員として配置しており、福岡県や宮城県の拠点にも1名ずつ部員を置いています。

TUNAG導入以前は、機関誌を配布していたのですが、PowerPoint等で作ってそれを印刷会社さんに渡して紙面にしていただくというアナログなやり方で行っていました。また、2カ月に1部は機関誌を発刊しようと思うのですが、非専従の組合活動の中、なかなか手が回らず難しい状況でした。そんな中TUNAGを導入したことで、非常に簡略化して工数も削減され、タイムリーに情報発信ができるようになりましたね。

太平洋工業労働組合の現状と課題

抱えている課題

堀田:やはり、組合の活動にごく一部の方だけにしか参加していただけていない状況になっていることが課題として抱えている部分です。組合活動に興味がない組合員が多い状況ですが、組合活動は役員だけがやるものではないという風に私は思っていて、数の力が組合の力だと思っています。全員が組合活動に参画して結束力を固めることによって初めて力を発揮する組織だと思うので、そこを変えていきたいですね。なぜ皆さん参加しないんだろうとかそういうことも考えつつ、もっともっとお互い仲間意識を持って全員で活動ができたら良いなと思っています。

コロナもあり、恐らく人との関係が希薄になってしまっていたり多様性や個々の尊重といったところでどこまで人と繋がったらいいのかが分からなかったりということがあると思いますが、組合員が組合活動に参加されない理由の一つとしては、我々の発信方法に問題があったのかなと思っています。組合がどんな活動をしているんだとかどんな福利厚生があるんだとか現状組合はどんなことを議論しているんだとか、我々もできる限り機関誌などのツールを通して発信をしていたのですが、実際に知らない人が非常に多いです。

例えば、我々は組合費からお金を払って全組合員が団体共済に入っているので、実際に病気になられた方や交通事故に遭われた方には共済金が出るようになっています。組合は、誰が事故に遭われたか等知るすべがないので、個人で申請をしてもらわないといけないのですが、団体共済に入っているということを知らずに結局数年経って共済金が下りないという話になってしまい、何で言ってくれなかったんだということを言われることがあるんですよね。こちらから発信はしているつもりですが、しっかりと伝わっていなかったり覚えてもらえなかったりして、これが我々組合としての弱さだと感じます。

林:代議員を通じて色々と組合活動を発信はしているつもりですが、実際私もそうでしたが、執行部に入ってガッツリ携わってみないと組合は何をしているのかがなかなかわからない、というのがあると思います。今年9月に組合執行部の改選があるのですが、多くの組合員に興味を持って立候補してほしいとは思っていますが、積極的に手を挙げてくれる方は少ない現実があります。

堀田:執行部に入らないと分からないというのはやはり我々の反省だと思いますね。皆さんから集めている組合費が何に使われているのかを知っていただけていないのは、我々の発信方法に問題があると思っています。

課題に対してのお取り組み

堀田:解決の一つの手段としてTUNAGの導入を決めました。まさに課題解決の糸口として合致したツールで、現在は林の方から組合活動をタイムリーにこまめに発信してもらっています。組合員の方々は、何をしているのか分からないと組合費だけ取られて結局不満だけが溜まっていき、悪循環になってしまいます。そうすると、結束力もなくなり、組合としての力も失われていくと思います。ここを変えていきたいという思いで、情報発信の方法を変えました。

また、原点に戻りもっと組合員との対話を大切にしようということで、組合員と話す機会を増やしてきています。現場の監督者と言われる方々と組合役員を含めた4人〜5人のグループを作り、労使でどんな話し合いをしているのかとか会社が今向かっている方向に対して組合は何ができますかねみたいなお話をして、対話することを大切にしています。

また、これに付随して今まで新入社員にしかやっていなかった研修会を3年目の方達にも実施して、終了後には組合役員と懇談できるような場を作ったり組合を身近に感じてもらえるような機会も作ったりして皆さんが組合に関わるきっかけを増やしています。さらに、今まで定例的にやっていた福利厚生のイベントであるバスツアーなども参加している人が同じような方々になってきているので、もっと組合員のニーズに合うような新しいことをやってみようということで色々と模索しながら活動内容を徐々に変えています。

組合員が主体性を持って活動に参加してほしいと思っているので、参加してもらえるような仕掛けや取り組みを行うことに注力して進めています。新しく活動を行っていくことで、こういう活動をやっているんだったら一回参加してみようかなとかそういうふうに思ってもらえれば一番いいかなと思っています。

太平洋工業労働組合の未来について

堀田:やはり、自分達の生活を良くするとかもっと充実させる為にみんなで助け合っていくというのが組合の原点だと思いますので、もう一度そこに立ち返る必要があるなと思います。そして、自主性主体性を持って組合員が活動できるような組織にしていきたいです。誰かが変えてくれるだろうとかやってくれるだろうというように他人任せになるのではなく、組合員一人一人が自ら変えるとか変えられるんだという意識の元、どうすれば職場が良くなるのかとかどうすれば自分の周りで働いてる同僚や仲間が働きやすくなるのかとかみんなで協力すれば何かできないのかとかそういった意見交換や議論が自然と出てくる雰囲気にしたいですね。

そこでやろうとしたことに何か障壁があれば、我々が会社に提起してその障壁を会社が取り除いていくというような、問題を提起する提起型から解決の提案型にもう少しウエイトを置いた組織になっていきたいと思います。また、職場環境が悪いというようなところは会社側が整えていくべきだと思いますが、職場の雰囲気や風土などは誰かが変えるというよりも自分たちが変えられる部分だと思っています。なので、会社が職場環境を改善し、職場の雰囲気は自分たちで変えていき、それを会社がサポートしていくというようなスパイラルが生まれたら良いなと思いますし、そのスパイラルを生み出すために組合が機能していきたいと思います。そうすることで、最終的には会社の健全な成長と組合員がより安心して働ける状態ができてくると思いますね。

林:当社は製造業なので元々女性社員比率が少ないのですが、スタッフとして入社した女性は結婚され出産されても大半は復帰され、時短などを活用し勤務を継続しています。家庭との両立や、今まさに子育て真っ只中の女性の声がもう少し組合に届くといいなと思います。またそういった女性が執行部に加わって頂き生の声を挙げて活動してほしいなとも思いますね。そのためには活動の内容や方法もフレキシブルなものに変えていく必要があると思います。あとはやはり、若い方にもっと興味を持っていただけるような活動をしていきたいです。

〜堀田様、林様、ありがとうございました!〜

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この記事を書いた人

「for UNION」編集長。
2020年にスタメンに新卒入社。
その後、2022年1月に労働組合向けアプリ「TUNAG for UNION」を立ち上げ、現在はマネージャーとして、事業拡大に従事。

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