【ダイナムユニオン】自分で変化を作り出して動ける人を増やし、持続可能性のある組織へ推進。
※お二人が抱えているぬいぐるみは、ダイナムのマスコットキャラクターの「モーリーズ」
全国チェーン展開しているパチンコホールダイナムの労働組合、ダイナムユニオンの中央執行委員長 佐々木様(写真左)と中央執行委員 前田様(写真右)のお二人に、労働組合の未来についてお話をお伺いしました!(以下、敬称略)
組織概要と自己紹介
組織概要
佐々木:弊組は、全国チェーンで展開しているパチンコホールダイナムの労働組合「ダイナムユニオン」です。パチンコ業界で初の労働組合がダイナムユニオンで、結成から26年が経ちます。ユニオンショップ制を採用している為、基本的には入社して3ヶ月になると組合員となり、正社員とアルバイトで構成される約7400人の組織です。
現在、専従者9名と書記局パート職員3名の体制で行っており、ダイナムの本社が日暮里にあるため、すぐ隣の西日暮里に事務所を構えて専従者メンバーが勤務しています。
全国チェーンで展開しているため、組織の形としては全国各地域にそれぞれ支部を設置しており、現在25支部で活動しています。北は北海道、南は鹿児島まで支部を置いているため、基本的には専従者が出張で現地の支部に行って支部の役員や組合員と交流しています。やはり組合員との距離が遠いところと職場数が多いという点でなかなか顔も出しづらいというところが課題になっています。
自己紹介
佐々木:2005年にダイナムに入社しました。実は、最初の職場環境があまりよくなかったので会社を辞めたいなと思っていた中で、他のお店は違うのかもしれないと思い、様々な情報を得るために組合活動に参加しました。
最初の配属は新潟だったので、新潟支部の支部執行委員会に職場リーダーという役割で参加したのが組合活動に関わるスタートとなりました。実際、他のお店の話を聞くと自分のお店の常識が他店の非常識であったり、他店の常識が自分のお店の非常識であったりということがわかり、必ずしも職場環境が悪い店ばかりじゃないということを知り、もう少し仕事を続けてみようと考えるようになりました。
組合活動を通じていろいろな人脈ができたり、会社のことを深く知ることができたりするのが気持ち良くて組合活動にのめり込み、新潟支部で支部書記長から支部長までを経験しました。それから、店長に昇進するタイミングで四国へ異動になり、愛媛県と徳島県の店舗でそれぞれ店長を経験しました。徳島で店長をやっていた時に約2年間組合活動を離れていたのですが、その期間に会社の情報を得る機会が減り、会社の事情に疎くなってしまったため、もう一度職場リーダーから組合活動を始めることにしました。
その後、地域を統括する現場に近い間接部門に異動となり、四国支部の副支部長や支部長を経験しました。間接部門では現場を回ってオペレーションを改善するような業務を担当しており、その中で環境の良い職場、悪い職場を目にする機会があり、職場環境を良くすることが会社の業績向上につながるのではないかと思うと同時に、自分のリソースをそこに割いていきたいという想いが強くなりました。その頃、組合の執行部の方から中央執行委員をやってみないかと声をかけていただき、非専従の中央執行委員を1年経験した後に自分の持つ全てのリソースを割ける専従者に立候補しました。これが8年前のことで専従者として活動してから中央執行委員を3年間、中央執行書記長を4年間担い、1年半前の2022年10月から現在まで中央執行委員長を担っています。
前田:2003年にダイナムに入社しました。当時から、職場リーダーが組合の情報を職場に伝える場が設けられていたのですが、限られた時間の中で説明を受けても組合や会社のことがよく分からないなと感じていました。そこで入社して間もなかったのですが、職場リーダーに立候補し、組合活動に参加し始めました。組合が何をしている組織なのかも全く知らずに飛び込みましたが、それまで関わる機会がなかった他の店舗の従業員ともつながりを作ることができ、初めての転勤でも知っている人がいる安心感から気負うことなく勤めることができました。
それから、10年以上組合の担当からは離れていたのですが、支部のレクリエーションの企画などには関わらせていただいており、過去にお世話になった上司が組合の専従となったタイミングで山口のお店で職場リーダーに復帰することになりました。活動に参加させていただく中で副支部長や支部長代理を務めました。当時はコロナ禍であったこともあり、人とのつながりが希薄になる中で組合活動の重要性を再認識することができました。
その後、福岡に転勤となり山口支部を離れることになったのですが、福岡支部でも引き続き副支部長を務めるなど、組合活動に積極的に参加していたところ、声をかけていただき、2022年の10月から専従者として活動させていただいております。
ダイナムユニオンの現状や課題
佐々木:ダイナムユニオンは、「組合員と家族の幸せの追求」というミッションを掲げていますが、まずこの「幸せ」とは何だろうというところが私はずっと気になっていました。「幸せ」は人それぞれ違うよねというようなことはよく言われますが、活動していくにあたって何か共通概念のようなものがないだろうかとずっと考えてきた中で、「幸福学」という学問に出会いました。(添付資料参照)
ダイナムに新卒で入社される方に入社理由を聞くと、ありがたいことに「ホワイト企業だから」とか「働きやすい、福利厚生が充実しているから」というような動機を持っている方が非常に多いです。これは、幸福学の中では地位財的な要素として定義されています。しかしこの地位財というのは、長続きしにくい幸せと言われています。ダイナムユニオンもダイナムもこれまで労使協議を重ねてきて、より働きやすい環境を整え、賃金も上げてきていますが、組合員の不満などは正直あまり減っていないのだろうなと思っています。
実際に、組合員の幸福度調査というのを行ったのですが、結果、日本人の平均値を下回っていました。大きな企業で収入も安定しているのに幸福度は低いというのは課題です。これを解決するためには、幸福学でいう長続きする幸せ「非地位財(健康、社会・職場の繋がり、幸せだと感じる心)」への取り組みが必要だと思い、私が委員長になってから活動の方針を変えていきました。幸せが高まると創造性や生産性が向上する。結果的にそれが業績に繋がれば処遇向上にも繋がっていくと思っています。
他の企業と比べてダイナムが全ての処遇で勝っているとは言いませんが、かなり高い水準まで来ています。しかし、組合員自身がそれを幸せに感じていない。この状況を打破しなければ、一生ベースアップや休日数増加という地位財を求めていかなければならなくなってしまうと思っています。ここが現状、ダイナムユニオンの大きな課題です。
今までは、お金や働き方を追求してきましたが、これからは非地位財要素も高めなければいけないということで、そこに必要な4つの因子(添付資料参照)に対する取り組みを進めています。私が委員長になってからの1期が今年の10月で一区切りになりますが、ちょうど1期目は「ありがとう因子」を高めていこうということで取り組んできました。その中で「繋がりと感謝」を高めるツールとしてTUNAGがマッチすると思い、そこが最初の入口になりました。
前田:委員長が今説明した幸福学の中で4つの因子というものが出てきましたが、これを一つ一つ分解して調査をしてもかなり数字が低く出ています。私は活動をしている中で、主体的に動いて何かを変えていこうという意識が弱くなってしまっているのかなと感じます。それこそ、4つの因子の中の「やってみよう因子」で表現されるように自ら何かやってみようと新しいものにチャレンジしたり、現状を変えていこうという気持ちが強くなってくると「幸せ」というものに近づいてくるのかなという印象は持っています。
課題に対しての打ち手や活動の中で大事にしていること
課題に対しての打ち手
佐々木:打ち手として、コロナが流行る前にできていた活動を再開して横の繋がりを取り戻すことに注力しました。ダイナムは年配のお客様が多く、接触を気にされる声もいただいていた為、コロナ禍の約2年間は従業員が近隣の店に顔を出しに行って、他店の従業員と直接会話をすることがほとんどできませんでした。それによって、隣のお店で働いている店長の顔を知らないとか役職者の顔を知らないというようなコミュニケーションの取りづらい環境が発生するようになりました。私自身この状況は、営業力が非常に弱くなってしまう原因であると思っています。
人の繋がり、特に役職者同士の繋がりがなければ、困った時に気軽に相談できなかったり悩みを言えない状況になります。そうなると、人に聞けばすぐ解決できるのに、もう少し自分で考えてみようとなってしまい、解決まで時間がかかってしまいます。これが業績にすごくマイナスの影響を及ぼしてしまうと感じていました。この状況を脱するために、レクリエーション活動や集合しての会議、懇親会などを順次再開し、その活動費も組合から補助を出していきました。実は当時、会社は酒席の開催がNGだったのですが、何かあれば私が全部責任を取るからと組合員に声をかけて実現していきました。
前田:私はコロナ禍の最中に福岡の店舗が密集している地域へ転勤しました。コロナ禍前までは、数店舗が集まって懇親会などを開催して交流していたらしいのですが、コロナの流行後はそのような機会がなくなってしまいました。そのために他の店舗で働く従業員のことをほとんど知らないような環境でした。まさに今、佐々木委員長が話していた状況が私のお店でも起きていたなと思います。つながりが作れない働きづらさはあったので「まずはコロナ前に活動を戻そう」という方針は共感できました。
組合活動の中で大事にしていることや信念
前田:私は「ダイナムという会社が好きだという想いを持って働ける従業員を増やしていきたい」というのが組合活動を行っている中での軸になっているのかなと思います。「労働組合があって良かった」ということを組合員に言ってもらえるというのももちろん嬉しいことですが、何よりもこの「ダイナムという会社に勤めて良かったな」とか「ダイナムが好きだ」と想いを持って働ける従業員を増やしていきたいです。自分の勤めている会社を好きになれないのはすごく寂しいなと感じますし、現状そういう声をあげる方が多くなってしまっている状況もあります。
自分も以前、会社を辞めようかと悩んだ時期があったのですが、「自分はどうしたいのだろう?」と内省を繰り返したところ、ダイナムでお世話になった人や関わった人たちへの感謝や好きだなという想いにたどり着きました。その大事な人たちが働いているこの会社が好きだと認識したときに改めて、幸せを感じて今の仕事を続けようと思った経験があります。
だから自分の今勤めている会社が好きだという想いを持って働ける従業員を増やすことに注力していきたいです。
佐々木:私は、組合員との距離感を委員長として意識しています。やはり、組合員が委員長の顔を知らないとか委員長を遠く感じていると、組合が何か困った時にお願いや協力要請をしても応えてくれないと思います。委員長の佐々木塁がどういう人間なのかということを知ってもらえるように、1期目の2年間は種まきの時期だと思って意識的にいろいろな仕掛けをしています。また、「組合活動は仕事じゃない」ということを信念としてよく言っています。
「業務」ではなく「活動・運動」なので、やりたいことをやった方がいいと思っています。ダイナムは、チェーンストア理論を志向している会社なのでどちらかというとマニュアル重視であったり法令順守の意識が高い従業員が多くいます。それは良いことなのですが、一方で私は型にはまりがちに見えています。今の現場は、昔と比べると裁量が減ってしまっていますが、大きい支部の支部長には100万円程お金を渡して、その100万円で支部にとってより良い活動ができるように考えて執行してもらっています。このように、自分の裁量で使えるお金を持って何かをする経験など様々な組合活動を通して成長できる場を作り、やりたいことに挑戦できる環境にしていきたいということは常日頃考えています。
未来への想いや今後取り組みたいこと
佐々木:委員長の立場としては、やはりダイナムユニオンという組織を持続可能性のある組織にしていきたいと思っています。ただ、将来に亘ってダイナムユニオンという組織がずっと活動できる状態にしなければならない中で、最大の課題が「組合の次期役員の育成」です。私が委員長になったのは立候補でしたが、委員長や役員は前任の方から指名されて引き受けることが多いです。
私はこの指名により役員を決める方法だと、適任者がいなかった時に組織が大きく間違った方向に舵を切ってしまうのではないかと思っています。そのため、組織内で組合役員候補を選抜して育成するような仕組みがないことは、将来的な危機だと思っているので、来期から着手していきたいと思っています。現時点で、「これだ」という答えには出会えていないのですが、まずその仕組み作りをしていきたいです。
この課題に対する二の矢としては、組合の歴史教育を考えています。やはり、代が変われば変わるほどダイナムユニオンが発足した当時の経緯や理念、想いは薄れてしまいます。そこで、現在、「組合役員教育」というコンテンツを作って代が変わっても当時の想いを継承していけるように様々な取り組みを進めています。また、未来への想いとしては、労働組合がない会社の方が幸せだというのはなかなか悲しいので、組合がある会社の方が幸せであってほしいなと思います。
前田:私は、周りに期待するだけでなく、自分で変化を作り出して動ける人を増やしていきたいです。「会社の制度に納得がいかない」というような場面で諦めるのではなく、自分で動いて変えていけるような人です。組合活動に参画してもらうことがそのきっかけになると考えています。その為に、まずは「労働組合」がどんな存在で、どんな活動をしているのか。これを知ってもらうことが大事だと思いますので組合教育や広報活動に力を入れて取り組んでいきたいです。
〜佐々木様、前田様、ありがとうございました!〜