労働組合ではどのような相談を受ける?相談後の流れも解説

労働組合では組合員からさまざまな労働問題の相談を受けることになります。相談しやすい運営を行うポイントを押さえ、組合員に「労働組合に加入してよかった」と感じてもらえるような組織を目指しましょう。

目次

労働組合への相談内容

労働組合は、労働者が自らの権利を守りながら、職場環境や労働条件を改善していく組織です。組合員が抱える不安や悩みを組織として取りまとめ、団体交渉を通して要求の実現を図ります。

労働組合に寄せられる労働問題の内容はさまざまです。具体的にどのような相談を受けているのか、まずは労働組合がこれまでに解決してきた問題の詳細を見ていきましょう。

さまざまな労働問題を相談可能

日本労働組合総連合会が公表する資料を見ると、全国の地方連合会に寄せられた労働問題の相談内容や傾向が分かります。

労働組合への相談内容の内訳は次の通りです。

  • 労働組合:組合の結成や運営、上部団体加盟・不当労働行為・労使関係
  • 労働契約:雇用契約・就業規則、雇用形態、配置転換・出向・転籍
  • 賃金:賃金未払い・不払い残業、休日手当・割増賃金未払い、最低賃金
  • 労働時間:週40時間、休日・休憩、年次有給休暇
  • 雇用:解雇・退職強要・契約打ち切り、倒産・閉鎖、休業補償
  • 退職:定年、退職手続き、再雇用
  • 保険・税:雇用保険・労災保険、健康保険・年金、税金
  • 安全衛生:労働災害、職業病、メンタルヘルス
  • 差別:男女差別、セクハラ、パワハラ、マタハラ
  • その他:経営問題・労務管理

このように、労働組合には労働についての多種多様な相談が寄せられています。

出典:連合「なんでも労働相談ホットライン」2023年 年間集計報告 P7

労働相談の実態

2023年に全国の地方連合会に寄せられた相談内容の割合をランキング形式でまとめました。数値は全体に占める相談数の割合です。

1位:パワハラ・嫌がらせ(16.8%)

2位:雇用契約・就業規則(9.5%)

3位:解雇・退職強要・契約打ち切り(8.5%)

4位:退職金・退職手続き(7.5%)

5位:年次有給休暇(5.5%)

「パワハラ・嫌がらせ」は、2019年から5年連続で1位です。2位と3位も、2019年から5年連続で「雇用契約・就業規則」と「解雇・退職強要・契約打ち切り」のいずれかとなっています。

出典:連合「なんでも労働相談ホットライン」2023年 年間集計報告 P8

労働組合への相談後の流れ

組合員から寄せられた相談は、労働組合が要求としてまとめ、会社との団体交渉で提示します。交渉で合意に至った内容は労働協約にまとめられるという流れです。

それぞれのフェーズで行われる詳細を確認し、自分たちの組織運営に生かしましょう。

要求事項を取りまとめる

労働組合で最も重要な活動の1つが要求事項の取りまとめです。組合員から寄せられたさまざまな要望を労働組合でまとめ、要求として団体交渉時の主要テーマにします。

労働組合を結成した当初は、最も多くの組合員が希望する項目を要求のメインに取り上げましょう。そうすることで、組合員における労働組合への今後の期待感が高まり、組合活動も活発化しやすくなります。

要求事項のまとめ方は、組合によりさまざまです。個別に聞く方法やアンケートで希望を募る方法など、自分たちがやりやすい方法で意見を募りましょう。

団体交渉を行う

労働組合で要求事項を取りまとめたら、会社と団体交渉を行います。日時・場所・出席者・交渉内容については、労使間であらかじめ決めておくのが一般的です。

労働組合法第7条第2項により、会社側は正当な理由なく団体交渉を拒否できません。ただし、労働組合の要求に応じるかどうかは、会社側の判断次第です。

団体交渉における組合側の出席者については、労働基準法第6条で規定されています。交渉権限を持つのは、「労働組合の代表者または労働組合の委任を受けた者」です。

一般的には、団体交渉を申し入れた労働組合の役員や組合員、上部団体の役員などが出席します。

労働協約を作成する

労使間で交渉がまとまったら、労働協約を作成します。労働協約とは、団体交渉で双方が合意した内容をまとめたものです。

労働組合法第16条では、労働協約に違反する行為は無効になるとしています。労働協約は、個別の労働契約や会社の就業規則に優先する、とても強い効力を持つものです。団体交渉のルールも労働協約で定められます。

出典:e-Gov 法令検索

労働組合の運営で困ったときの相談先

労働組合の運営中にはさまざまな疑問が生じます。困ったときの相談先としておすすめなのが、労働組合の上部団体です。

日本の労働組合は企業別に組織されるのが一般的ですが、企業別組合では労使間のみで解決できない問題も数多く発生します。以下に紹介する上部団体に加盟し、いつでも相談できる体制を整えておきましょう。

産業別組合

産業別組合は、同一産業の企業別組合が集まってつくる団体のことです。さまざまなジャンルの産業に存在しています。

産業別組合で取り組んでいるのは、産業全体に共通する労働条件や政策などの課題です。産業別組合に加盟すれば、同業他社の人たちとの交流も図れるでしょう。

地方連合会・地域協議会

地方連合会は各都道府県で地域ごとにつくる団体です。地域における労働者のよりどころとして、地域政策の実現や労働相談、組合結成の支援などを行っています。また、各地域連合会の下には、地域協議会という組織もあります。

産業別組合と地方連合会を取りまとめている組織が「連合」(日本労働組合総連合会)です。連合は中央組織としての役割を持ち、個別の産業や地域で解決できない問題に取り組んでいます。

出典:日本労働組合総連合会 連合について

組合員が相談しやすい運営を行うポイント

運営に問題がある労働組合は、組合員の参加意欲が失われやすいため、機能不全に陥りかねません。組合員が積極的に相談できる組織にするためのポイントを紹介します。

組合員の意識を高める

労働組合を健全に機能させるためには、各組合員の意識を高める必要があります。組合の存在意義や労働者の権利を理解してもらい、組合活動への積極的な参加を促すことが大切です。

組合員の意識を高めるのにおすすめの方法が勉強会の開催です。関連法令や組合活動について理解を深められる勉強会を、定期的に開催するとよいでしょう。

組合活動を活性化させる

労働組合の活動を活性化させるポイントは、役員だけの活動にならないように意識することです。参加型のイベントやレクリエーションを開催するなど、組合員全員を巻き込める施策を考えましょう。

労組新聞の発行やネットを通した情報発信も効果的です。組合活動の内容が分かる情報を組合員に届けることで、労働組合をより身近に感じてもらえるようになります。

デジタル化を進める

組合員が相談しやすい運営を行うポイントとしては、運営のデジタル化も挙げられます。ITシステムを導入すれば情報を発信しやすくなるほか、双方向のコミュニケーションが活性化されるため組合員からの要望も集まりやすくなります。

業務DXから組織内交流まで幅広くカバーするTUNAGを導入すれば、労働組合のデジタル化に役立てることが可能です。例えば、コミュニケーションを促進するチャット機能の活用により、組合員がより相談しやすい環境を構築できます。

何でも相談できる労働組合を目指そう

労働組合はより良い労働環境を実現するために必要な組織です。しかし、機能不全に陥ると組合員から相談されなくなり、本来の役割を果たせなくなってしまうでしょう。

組合の役員として意識すべきことは、何でも相談できるような環境の整備です。組合活動の活性化に効果的なTUNAG for UNIONを導入し、日々の活動情報の発信や組合員の反応の見える化に役立てましょう。

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この記事を書いた人

筑波大学国際総合学類卒業。2023年にスタメンに入社し、人事労務・情報セキュリティに関するデジタルマーケティングを担当。 現在は「for UNION」の立ち上げメンバーとしてメディア企画に従事。

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