オープンショップ協定とは?他の協定との違いやショップ制の歴史

労働組合について調べていると、「オープンショップ協定」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。ユニオンショップ協定は聞いたことがあっても、オープンショップ協定については詳しく知らないという方も多いでしょう。本記事では、オープンショップ協定の基本的な内容から他の協定との違い、ショップ制の歴史まで、労働組合の理解を深めるために必要な知識を分かりやすく解説します。

目次

オープンショップ協定とは

オープンショップ協定の基本的な仕組みと特徴、そして他の協定との違いについて詳しく見ていきましょう。

組合加入を雇用条件にしない協定

オープンショップ協定とは、労働組合への加入を雇用条件としない協定のことです。つまり、従業員は労働組合に加入するかどうかを自由に決めることができ、組合に加入していなくても雇用に影響はありません。

オープンショップ協定の特徴

  • 加入の自由-従業員が組合加入を自由に選択できる
  • 脱退の自由-組合員が自由に組合を脱退できる
  • 雇用への影響なし-組合への加入・非加入が雇用条件に影響しない
  • 開放性-誰でも組合活動に参加する機会がある

オープンショップ制では、組合は魅力的な活動を通じて自発的な加入を促す必要があり、活動の質の向上が求められます。

ユニオンショップ協定との違い

オープンショップ協定を理解するには、ユニオンショップ協定との違いを知ることが重要です。

オープンショップとユニオンショップの比較

オープンショップ協定ユニオンショップ協定
組合加入自由選択雇用条件として必須
脱退自由に可能原則として制限
非加入者の扱い雇用に影響なし解雇事由となる可能性
組合の安定性変動する可能性高い安定性
組合費徴収加入者のみ全従業員(一般的)

ユニオンショップ協定では、入社から一定期間内(通常30日以内)に組合に加入することが雇用の条件となります。

一方、オープンショップ協定では、従業員が自由に組合加入を選択でき、非加入者に対する不利益な取扱いは禁止されています。

日本におけるショップ協定の現状

日本では、労働組合と企業の間でユニオン・ショップ協定を結ぶかどうかは、企業の規模や業種によって大きく異なります。

厚生労働省の調査によれば、全体の66.2%の労働組合がユニオン・ショップ協定を締結していますが、その割合は企業の規模が大きいほど高くなる傾向にあります。

たとえば、従業員1,000~4,999人規模の企業では76.9%、5,000人以上の企業では69.6%が協定を結んでいます。一方で、従業員100人未満の小規模事業所では協定締結率が50%を下回るなど、協定が結ばれていないケースも多く見られます。

産業別で見ると、「電気・ガス・熱供給・水道業」(91.2%)、「卸売業、小売業」(87.1%)、「鉱業・採石業・砂利採取業」(83.0%)などでは協定締結率が特に高くなっています。一方で、「医療・福祉」(16.1%)や「教育」(6.8%)といった分野では協定の締結率が低く、ユニオン・ショップが主流とは言えません。

このように、ユニオン・ショップ協定の採用状況は、業界の労使関係や労働組合の組織率などによって大きく左右されています。

出典:企業のAI等の導入状況と労使コミュニケーションの現状について|厚生労働省

ショップ制の歴史

ショップ制がどのように発展してきたのか、その歴史的背景を把握することで、現在の労働組合制度をより深く理解できるでしょう。

18世紀に欧米でクローズドショップ制が誕生

ショップ制の歴史は18世紀の欧米にさかのぼります。最初に確立されたのはクローズドショップ制でした。

クローズドショップ制の特徴

  • 組合員のみ雇用-労働組合員でなければ雇用されない
  • 組合の強い影響力-雇用に関して組合が大きな権限を持つ
  • 職種別組織-特定の技能を持つ職人による組合が中心
  • 排他的な性格-組合員以外は職場から排除される

18世紀のイギリスでは、熟練工による同業者組合が「現在でいうクローズドショップ制」を確立しました。これは特定の技能を持つ職人たちが、その技能を独占することで労働条件を保護する仕組みでした。

日本でも明治時代初期には、職人の世界でクローズドショップに近い制度が見られました。

例えば、建設業や印刷業などの職人組合では、組合員でなければ一人前の職人として認められず、仕事に就くことも困難でした。

19世紀後半からユニオンショップ制が広まる

19世紀後半になると、より柔軟なユニオンショップ制が登場し、急速に普及しました。

ユニオンショップ制普及の背景

  • 産業の大規模化-大量の労働者を必要とする工場制手工業の発達
  • 労働者の多様化-熟練工だけでなく未熟練工も組織化の対象
  • 法的な制約-クローズドショップに対する法的規制の強化
  • 企業側の要請-雇用の柔軟性を求める企業側のニーズ

アメリカでは、1935年のワグナー法(全国労働関係法)により、労働者の団結権が法的に保障され、ユニオンショップ制が制度的に確立されました。

日本では戦後の労働三法(労働組合法、労働関係調整法、労働基準法)の制定により、ユニオンショップ協定が法的に認められ、多くの企業で採用されるようになりました。

近年はオープンショップ制をとるケースも増加

現代では、労働環境の変化に伴いオープンショップ制を採用する企業が増加しています。

オープンショップ制増加の要因

  • 働き方の多様化-正社員以外の雇用形態の拡大
  • 個人主義の浸透-個人の選択の自由を重視する価値観
  • 労働市場の変化-転職の一般化と雇用の流動化
  • グローバル化-国際的な労働慣行の影響

近年の傾向として、IT業界やサービス業を中心にオープンショップ制を採用する企業が増えています。

オープンショップ制の課題と展望

しかし、オープンショップ制の増加が組合離れを加速させている側面もあります。

組合加入率の低下は、労働者全体の交渉力や発言力の低下につながる可能性があるため、組合側はより魅力的で実効性のある活動を展開する必要があります。

労働組合のあり方や歴史を理解しよう

ショップ制の違いや歴史を理解することは、現代の労働組合の役割と重要性を考える上で非常に重要です。

オープンショップ協定、ユニオンショップ協定、クローズドショップ制のそれぞれには、それぞれの時代背景と目的があります。

現在主流となっているユニオンショップ制は、労働者の権利保護と企業の運営効率のバランスを取った制度といえるでしょう。

一方、近年増加しているオープンショップ制は、個人の選択の自由を重視する現代的な価値観を反映しています。

しかし、どの制度を採用するにしても、労働組合の本質的な役割である「労働者の権利保護と労働条件の改善」は変わりません。

労働組合がこれからも重要な役割を果たしていくためには、時代の変化に適応しながら、労働者にとって真に価値のある組織であり続けることが求められています。

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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