労働組合が相談窓口として無理なく対応するには?外部の窓口とも連携を

労働組合に寄せられる相談が増えたり多様化したりして、組合では対応しきれなくなっていませんか。組合が信頼される窓口として機能するためには、無理のない相談体制づくりが必要です。信頼できる外部窓口の情報を交えて、労働組合が相談窓口としての役割を果たすための取り組みを紹介します。

目次

労働組合の相談窓口としての役割は広い

労働組合は、さまざまな労働問題に関する相談窓口として相談を受けることも期待される団体です。日本では非正規雇用者の組合加入率が増えており、相談する人の属性が広がっている組合もあるでしょう。

労働組合の悩みになりがちな、相談窓口としての役割の広さ・対応の難しさについて解説します。

参考:令和6年労働組合基礎調査の概況「概況版」PDF|厚生労働省

相談内容はハラスメントや雇い止めなど幅広い

労働相談の典型的なテーマとして、「解雇」「雇い止め」「ハラスメント」「労働条件の引き下げ」などがあります。これらのテーマは、連合・全労連・厚生労働省の窓口でも類似の相談事例が提示されており、労働相談として多いことが分かるでしょう。

労働組合の相談窓口には、このように幅広い労働問題について相談が寄せられる可能性があります。窓口担当者はそれぞれの内容について、知識を持って対応しなければなりません。特にハラスメントは問題が複雑化しやすく、組合の初期対応にも一定の知識と判断が求められます。

参考:連合|労働相談 労働相談集計報告「5月の労働相談報告(PDFファイル 1.1 MB)」相談内容

参考:相談事例 | 全国労働組合総連合(全労連)

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

リソース不足で十分な対応が難しい場合も

組合内で相談対応を担う執行部の人員が限られ、全ての相談に即応できないケースも考えられます。連合や全労連に寄せられた相談内容からも分かるように、内容が複雑化・多様化することで対応負担が重くなっている可能性もあるでしょう。

もしリソースが足りないなら、外部窓口との連携が現実的な手段として選択肢に入ります。無理に組合内だけで対応を完結させようとすると、実際には相談をさばききれずに組合員の信頼を失う事態になりかねません。

労働組合が対応できない場合に信頼できる相談窓口

リソースや知識の不足などの理由で、全ての相談の窓口にはなれない組合もあるでしょう。自組合だけでは相談窓口として十分ではないと判断したときに案内したい、信頼できる外部窓口を紹介します。

連合・全労連など労働組合系のホットライン

全国に下部組織を持つ、連合や全労連の相談窓口は、相談実績も豊富で信頼できます。

<連合の相談窓口(なんでも労働相談ホットライン)>

  • 相談の方法:電話・メール・LINE(期間限定)・チャットボット
  • 電話番号:0120-154-052
  • 相談受付時間:電話は平日日中、メールやLINE・チャットボットは曜日や時間を問わず相談可能(メールやLINEの回答は翌営業日になると思われる)
  • 料金:無料

連合|労働相談

<全労連の相談窓口(労働相談ホットライン)>

  • 相談の方法:電話・メール
  • 電話番号:0120-378-060
  • 相談受付時間:電話は平日10時〜17時(地方によって受付時間が変わる可能性あり)、メールは曜日や時間を問わず相談可能(回答には数日かかる可能性)
  • 料金:無料

フリーダイヤル 労働相談ホットライン | 全国労働組合総連合(全労連)

いずれの窓口も、解雇・未払い賃金・ハラスメントなど幅広い労働相談をカバーしています。雇用形態も問われません。自組合では対応できないことを説明した上で上記の窓口を案内すれば、組合員の信頼を損なう心配はないでしょう。

厚労省が設けている相談窓口

厚生労働省は、労働相談の窓口として「総合労働相談コーナー」を用意しています。無料・予約不要で利用でき、各都道府県の労働局や全国の労働基準監督署内など379カ所に設置されていて対面での相談にも便利です。

電話での相談も受け付けており、コーナーごとの電話番号は下記のサイトに記載されています。解雇や労働条件の引き下げ、いじめなどの労働問題に幅広く対応している心強い窓口です。

総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

総合労働相談コーナーでは、法律に基づく労働相談に応えるほか、裁判所や法テラスなどの外部機関とも連携したあっせんも提供しています。

相談者の状況に応じた使い分けが重要

労働組合が相談窓口となって相談を受けるか、外部の窓口を紹介するかは、相談者の状況や希望に応じて判断しましょう。組合員からの相談内容に団体交渉が有効な場合は、労働組合内での対応が適しています。

一方、損害賠償など法的な対応を求めているケースでは、弁護士につながる窓口(総合労働相談コーナー)などを紹介した方がよい場合もあります。また、自組合で相談実績がなかったり知識が不足していたりする分野の相談なら、連合や全労連の窓口につなげる方が相談者にとって有益です。

組合が初動で相談を受け、専門家や関係機関へ橋渡しするという考え方でも問題ありません。「全てを内部で抱え込まない」姿勢が無理なく質を落とさない相談対応につながります。

労働組合が無理なく相談窓口として機能するための備え

労働組合は組合員にとって、身近な相談窓口であるのが理想です。ただ、無理をして相談を受けても、解決できなければ意味がありません。相談窓口として無理なく機能するために、労働組合として何をすればよいのかを解説します。

組合内で対応する範囲と外部連携のルールを決める

人的リソースや知識面から現実的な相談対応をするためには、相談内容の性質によって、組合で対応するかどうかの判断基準を明確化しておくことが必要です。

例えば下記のような切り分けが考えられます。

  • 給与や長時間労働についての相談:組合で対応
  • ハラスメントに対する損害賠償の相談:厚生労働省の総合労働相談コーナーに連携

ルールが決まったら、文書化した上で組合内に共有しておきましょう。相談対応の属人化を防げます。

相談役に労働についての基礎知識を共有する

相談窓口担当に雇用形態の違いや最低限の労働関連法令についての知識がないと、誤った対応から組合員の信頼を損なってしまいます。労働局・連合のQ&Aや労働関連法令の知識を盛り込んだ研修資料を用意し、定期的に知識を共有しましょう。

外部機関に連携する場合も、法令や制度への理解が必要です。例えば、使用者のどのような対応が違法になるか分からなければ、弁護士につなぐのが適切かどうかを判断できないでしょう。

外部窓口の情報を整理し紹介できる状態にしておく

組合が窓口となる労働相談と、外部窓口につなぐ労働相談の切り分けが終わったら、活用できる外部窓口の情報を一覧化しておきましょう。迅速な対応が必要な労働相談が持ち込まれたときも、スムーズに必要な窓口に連携できます。

特に厚生労働省の総合労働相談コーナーは地域ごとに電話番号や対応時間が違うため、事前に自分の地域の番号・対応時間をメモしておくのが賢明です。相談方法も機関によって変わるため、電話・Web・来庁などもまとめておくと即時に対応できます。

また、外部窓口の情報は知らないうちに変わっていることも少なくありません。小まめに更新して情報の鮮度を保つよう意識しましょう。

外部の窓口とも連携して信頼できる労働組合に

労働組合は組合員が気軽に相談できる窓口であるべきですが、相談の内容や組合の人手不足・知識不足で対応が難しいケースも少なくありません。

無理のない運営を実現するには、連合や全労連・厚生労働省などが用意している外部窓口との連携も必要です。信頼できる外部窓口を把握して上で、必要なときスムーズに連携できるよう、外部窓口の情報は分かりやすくまとめておきましょう。

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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