育児休業に関して労働組合ができること。制度の概要と併せて解説

育児休業(育休)とは、原則として1歳未満の子どもを養育するために労働者が取得できる、法律で定められた休業のことです。本記事では、育児休業の概要や給付金の支給要件、育児休業に関して組合ができることについて解説します。

目次

育児休業の基礎知識

労働組合には組合員から育児休業に関するさまざまな相談が寄せられます。担当者が適切に対応できるよう、まずは育児休業の基本を押さえておきましょう。

育児休業とは

育児休業は、労働者が1歳未満の子どもを育てる目的で仕事を休める制度のことです。「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」の第二章で規定されています。

一定の条件を満たす労働者が育児休業の取得を申し出た場合、会社は原則として応じる必要があります。女性だけでなく男性が育児休業を取得することも可能です。

母親は産前産後休業の終了日の翌日から、父親は出生日以降、育児休業を取得できます。休める期間は原則として子どもが1歳になるまでですが、保育所が見つからないなどの理由があれば最長2歳になる日まで期間を延長できます。

また、かつての育児休業制度では分割取得ができませんでしたが、2022年の法改正により、現在は分割して2回まで取得することが可能です。

育児休業と間違えやすいのが育児休暇です。育児休暇は会社が独自に設ける休暇であり、会社によっては育児休暇がないケースもあります。取得条件や休暇期間などのルールも、会社によりさまざまです。

出典:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 | e-Gov 法令検索

育児休業給付金の支給要件

育児休業中は会社から給料をもらえませんが、条件を満たせば給付金を受け取れます。育児休業給付金の主な支給要件は次の通りです。

1歳未満の子を育てるために育児休業を取得した被保険者であること

休業開始日前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上あること

育児休業を開始した日から起算した1カ月ごとの期間の就業日数が10日以下であること

また、有期雇用労働者については、「子どもが1歳6カ月になるまで契約が満了しないこと」の条件が追加されます。

出典:育児休業等給付の内容と支給申請手続 | 厚生労働省

産後パパ育休について

子どもの誕生から8週間以内に、最長4週間の育児休業を取得できる制度が産後パパ育休(出生時育児休業)です。2回まで分割して育児休業を取得できます。

産後パパ育休が新設された目的は、男性の育児参加を促進することです。労使協定が結ばれていれば休業中も働けるため、分割取得と併用すれば子どもが生まれた後も柔軟に仕事ができます。

出典:育児休業等給付の内容と支給申請手続 | 厚生労働省

パパママ育休プラスについて

育児休業制度で休める期間は、基本的に子どもが1歳になるまでです。しかし、パパママ育休プラスを利用すれば、休業期間を1歳2カ月まで延長できます。

パパママ育休プラスは、父母の双方が育児休業を取得する場合に利用できる制度です。また、父親と母親のいずれも育児休業を取得することが前提となります。両親がさまざまなパターンで休みを取得し、協力して育児に取り組めるようにするための制度です。

出典:改正育児・介護休業法のあらまし | 厚生労働省

育児休業に関して組合に求められる取り組み

労働者にとっての育児は、介護と並んで悩むことが多くなる問題です。育児休業について労働組合ができることを紹介します。

育休・復職支援プログラムの提供

労働組合が組合員に対して育休・復職支援プログラムを提供すれば、組合員は育児に関するさまざまな問題に対して適切なサポートを受けられるようになります。具体的な取り組みの例をまとめました。

育休前後の労働条件に関する相談窓口の設置

育児に関する情報提供

会社側で対策を講じているケースもありますが、組合としても組合員のために育休・復職支援プログラムを提供し、組合の存在価値を高めましょう。

育休・復職に関する労働条件の改善の要請

会社によっては育休の取得に難色を示したり、復職しにくい環境であったりするケースがあります。従業員が出産後も働きたいと思っていても、会社の労働条件に影響を受けてしまう側面は少なからずあるものです。

育休や復職に関して会社側に問題がある場合は、労働組合が会社に働きかけて労働条件の改善を要請しましょう。柔軟な働き方を認めさせるなど、従業員が仕事と育児を両立しやすい環境にしてもらうことが大切です。

また、労使協定を結べば休業中も柔軟に働けるようになるため、単に改善を要請するだけでなく労使間でルールとして定める必要もあるでしょう。

意識を高める活動や育児参加の推進

育児を行いながらキャリアをどう進めていくかについては、多くの労働者が悩みを抱えています。組合としてキャリアと育児を両立する重要性を伝え、組合員の意識を高めていくことが重要です。

また、国が男性の育児参加を促進しても、実際にはまだまだ育児で休みを取りにくいのが実情です。組合としてもセミナーの実施や情報提供を行い、男性の組合員に対して積極的な育児参加を促していきましょう。

育児休業に関して理解を深めよう

育児休業は、法律に基づき一定の条件を満たした労働者に認められている制度です。取得日数や取得条件が決まっているため、組合として相談を受けた場合に適切な対応をとれるようにしておく必要があります。

また、育児に関する労働者の問題に対し、労働組合が積極的に関わっていくことも重要です。育休・復職支援プログラムの提供や会社への労働条件の改善要請を行い、組合の存在価値を高めていきましょう。

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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