春闘2026年の予想|賃上げ率の見通しと企業の対応策をわかりやすく解説

物価上昇が続く中、実質賃金はいまだマイナスが続く中、2024年と2025年は2年連続で5%を超える賃上げが実現しました。では、2026年春闘はどうなるのでしょうか。労働組合の三役として企業との交渉を控える方にとって、来年の賃上げ相場を正確に把握することは欠かせません。

本記事では、過去の賃上げ率推移から2026年春闘の予測、産業別の動向、そして中小企業・非正規労働者への賃上げ波及策まで、交渉準備に役立つ情報をわかりやすく解説します。

目次

2020年〜2025年の賃上げ率推移と実質賃金の動向

春闘の賃上げ率は、ここ数年で大きく変化しました。まずは過去の推移を振り返り、2026年春闘を見通すための土台を整理しましょう。

春闘賃上げ率の推移(2020年〜2025年)を振り返る

連合(日本労働組合総連合会)の集計データによると、過去6年間の賃上げ率は以下のように推移しています。

年度全体平均中小企業大企業大企業との格差前年比変動
2020年1.90%1.81%1.91%▲0.10pt
2021年1.78%1.73%1.79%▲0.06pt-0.12pt
2022年2.07%1.96%2.09%▲0.13pt+0.29pt
2023年3.58%3.23%3.64%▲0.41pt+1.51pt
2024年5.10%4.45%5.19%▲0.74pt+1.52pt
2025年5.25%4.65%5.33%▲0.68pt+0.15pt

出典:連合「春季生活闘争」(各年度の回答集計から)

2020年から2022年まではコロナ禍の影響もあり、1%台後半から2%台で横ばいの状況が続いていました。

転機となったのは2023年です。物価上昇への対応や人手不足を背景に、賃上げ率は3.58%へと大きく伸びました。さらに2024年には5.10%に達し、1991年以来となる5%超えを記録しています。

2024年・2025年の賃上げ率は5%を上回る

2025年春闘の最終集計では、平均賃上げ率は5.25%となりました。これは1991年の5.66%以来、34年ぶりの高水準です。金額ベースでは16,356円の賃上げとなっています。

特に注目すべきは、ベースアップ分が3.70%に達したことです。これは連合が集計を開始した2015年以降で最高の水準となりました。定期昇給分を除いた純粋な賃金水準の引き上げが進んでいることを示しています。

大企業と中小企業の賃上げ格差の実態

2025年春闘では、大企業(300人以上)の賃上げ率が5.33%だったのに対し、中小企業(300人未満)は4.65%でした。その差は0.68ポイントとなっています。

日本商工会議所の調査(中小企業の賃金改定に関する調査)によると、従業員20人以下の小規模企業では賃上げ率が3.54%にとどまるケースも見られます。中小企業においては、賃上げの原資確保が依然として大きな課題となっています。

価格転嫁の難しさや、大企業との取引条件の厳しさが、中小企業の賃上げを抑制しているのです。

非正規労働者の時給引き上げ率は5.81%

2025年春闘では、非正規労働者(有期・短時間・契約等労働者)の時給引き上げ額は66.98円でした。引き上げ率に換算すると5.81%となり、正社員の5.25%を上回る結果となっています。

従来、非正規労働者は正社員に比べて賃上げの恩恵を受けにくい立場にありましたが、人手不足を背景に、パートやアルバイトの時給引き上げにも積極的に取り組む企業が増えたことが、この結果の背景にあります。

連合の2026年春闘方針では、非正規労働者に対して7%の賃上げ目標を初めて数値で明示しました。雇用形態間の格差是正に向けた動きが加速しています。

2026年春闘の賃上げ率予想と各機関の見通し

過去を踏まえた上で、2026年春闘ではどのような見通しになるのでしょうか?各機関からの予測を踏まえた上で解説します。

3年連続の「5%水準」維持と賃上げ率の予測

第一生命経済研究所の予測によると、2026年春闘の賃上げ率は厚生労働省ベースで5.20%、連合ベースで4.95%と見込まれています。2025年の5.52%(厚労省ベース)、5.25%(連合ベース)からはやや低下するものの、3年連続で5%前後の高水準を維持する見通しです。

日本経済研究センターのESPフォーキャスト調査(2025年11月時点)では、民間エコノミストの予想平均は4.81%となっています。5%に届くかどうかは微妙なラインですが、これまでと比較すれば、依然として高い水準といえるでしょう。

賃上げ率がやや鈍化すると予測される理由としては、トランプ関税の影響による企業業績の下振れが挙げられます。特に自動車関連企業では業績悪化が目立っており、春闘への影響が懸念されています。

連合が掲げる「5%以上」の賃上げ目標の背景

連合は2025年11月28日の中央委員会で、2026年春闘方針を正式決定しました。賃上げ目標は、定期昇給とベースアップを合わせて「5%以上」、ベア分で「3%以上」としています。これは2024年、2025年と同じ水準であり、3年連続で高い目標を維持する形です。

なぜ連合は高い賃上げ目標を維持するのでしょうか。その背景には、実質賃金のマイナスが続いているという現実があります。

名目賃金は44カ月連続でプラスとなっています。しかし物価上昇を差し引いた実質賃金は、2025年8月時点で8カ月連続のマイナスでした。つまり、賃上げしても生活向上を実感できている人は少数にとどまっているのです。

連合は、実質賃金を年1%上昇の軌道に乗せることを目指しています。これを「賃上げノルム(当たり前の基準)」として社会に定着させ、経済の好循環につなげたいという狙いがあります。

構造的人手不足への対応

2026年春闘において賃上げ圧力を高める最大の要因は、構造的な人手不足です。生産年齢人口の減少が続く中、人手不足は一時的なものではなく構造的な問題として認識されるようになりました。

需給ギャップの分析でも、人手不足が供給制約となっていることが示されています。企業にとっては、人材の確保・つなぎ止めのための賃上げが不可避な状況なのです。

特に若年層を中心に転職が活発化しており、優秀な人材の流出を防ぐためには、競争力のある賃金水準を維持する必要があります。企業業績が悪化しても賃上げを続ける企業が増えているのは、この人材確保の観点からです。

産業別・労働組合側の方針

2026年春闘に向けて、各産業の労働組合が具体的な方針を打ち出しています。産業ごとの動向を把握することで、自社の賃金戦略を検討する際の参考になるでしょう。

全日本自動車産業労働組合総連合会(自動車総連)

自動車総連は2025年12月12日、2026年春闘におけるベースアップ要求額の目安を「1万2000円以上」とする方針を発表しました。2025年春闘では「1万2000円」としていましたが、「以上」を付け加えることで要求水準を引き上げています。

金子晃浩会長は会見で「額で言えば昨年を下回る理由はない」と強調しました。自動車各社の業績はトランプ関税の影響で悪化していますが、金子会長は「賃金は中長期を見据えたかたちで取り組んでいくべき。この3年間の物価上昇で生活毀損が激しい」と述べ、1万2000円以上の実現にこだわりを示しています。

自動車総連が具体的な金額を示すのは2年連続です。この狙いは、大手との賃金格差拡大の是正にあります。具体額を提示することで、中小組合の賃上げ向上を図る考えです。

参考:〈2026春闘〉自動車総連、ベア要求方針「1万2000円以上」 中小の賃上げで格差是正へ

大和ハウス

大和ハウス工業は2025年1月、大卒新入社員の初任給を月額25万円から35万円に引き上げると発表しました。一気に10万円の増額となり、建設・不動産業界で最高水準となっています。

さらに、正社員約1万6000人を対象に、年収ベースで平均10%の賃上げも実施します。月給の平均昇給率は23.5%、平均昇給額は9万2945円に達します。

芳井敬一社長は「業績給(である賞与部分)を縮め、安定をベースにしていきたい」と説明しています。厳しい採用環境の中でも、成長を担う人材を確保するための施策です。

参考:給与水準の改定および初任給の引き上げに関するお知らせ | 大和ハウス

東北電力

東北電力と東北電力ネットワークは2025年11月26日、2026年4月入社向けに初任給を引き上げると発表しました。大学卒は25万3000円(1万1000円増)、大学院卒(修士)は27万6000円(1万1000円増)、大学院卒(博士)は28万5000円(1万円増)となります。

なお、初任給の引き上げについては、今後、労働組合との協議を経て正式に決定する予定です。両社は優秀な人財の確保を目的に、持続的な事業展開を支える経営基盤の強化に取り組んでいく方針です。

参考: 東北電力 | 2026 年 4月入社向け 初任給の引き上げについて

三菱UFJ銀行

三菱UFJ銀行は2026年度入行の大卒初任給を4万5000円引き上げ、月額30万円とすることを発表しました。地方の異動手当なども含めると、新入行員の年収は最大550万円超となります。

また、2025年春闘では労働組合からの3%ベースアップ要求に即日満額回答しました。福利厚生の拡充も含め「実質9%程度」の賃上げを実施します。

さらに、2027年度から定年を60歳から65歳に引き上げる方針も示しています。約2万5000人の全行員が対象となり、55歳で自動的に職責や給与が下がる仕組みも廃止します。

参考:三菱UFJ銀行が定年65歳に延長 若手の待遇も改善、初任給30万円

賃上げを中小企業・非正規労働者に届けるための戦略

賃上げを社会全体に波及させるためには、中小企業や非正規労働者への対応が欠かせません。連合は2026年春闘において、格差是正に向けた具体的な戦略を打ち出しています。

「率」ではなく「金額」で要求し価格転嫁交渉の根拠を作る

中小企業の賃上げを促進するポイントの一つが、賃上げ額の「金額」での明示です。自動車総連が「1万2000円以上」という具体的な金額目標を示したのも、この考え方に基づいています。

賃上げ率ではなく金額で要求することの利点は、取引先との価格交渉において具体的な根拠になることです。人件費がいくら増加するかを明確に示すことで、その分の価格転嫁を求めやすくなります。

連合の2026年春闘方針でも、中小組合の賃上げ目安を「6%以上・18,000円以上」と金額でも示しています。金額を明示することで、規模や業種が異なる組合間でも公平に比較できるようになるのです。

サプライチェーン全体で労務費転嫁を当たり前にする

中小企業が賃上げ原資を確保するためには、労務費の価格転嫁が不可欠です。公正取引委員会は2023年11月に「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表しました。

この指針では、発注者と受注者の双方が労務費上昇分を適切に転嫁するために取るべき行動を具体的に示しています。発注者には、受注者からの労務費転嫁の申し出に対して協議に応じる義務があることも明記されています。

サプライチェーン全体で労務費転嫁を「当たり前」にする機運を高めることが、中小企業の賃上げ余力を生み出すことにつながります。

産業別統一闘争で中小組合の交渉力を補強する

連合は2026年春闘において、共闘体制の構築を掲げています。5つの部門別共闘連絡会議(金属、化学・食品・製造等、流通・サービス・金融、インフラ・公益、交通・運輸)を設置し、産業ごとに情報交換と連携をはかる方針です。個々の企業労組では交渉力に限界がある場合でも、産業全体で足並みをそろえることで、より強い交渉力を発揮できるでしょう。

産業別・地域別に賃金データを共有し、相場観を形成することも重要です。連合は「地域ミニマム運動」を積極的に推進し、地域における産業別賃金相場の形成を視野に入れた取り組みを進めています。

「代表銘柄・中堅銘柄」の拡充と開示により、賃金水準の相場形成を重視した情報開示を行う方針です。こうした共通認識ができれば、個別企業での交渉も進めやすくなるでしょう。

物価高対策ではなく働きやすさのための賃上げを実現する

2026年春闘を成功させるためには、単なる物価高への対応ではなく、働く人の生活を持続的に向上させる視点が重要です。賃上げを一過性のものではなく、「当たり前」として定着させることが、経済の好循環につながります。

また、賃上げと同時に働きやすさの向上も重要です。働き方改革や福利厚生の充実、キャリア開発支援など、総合的な処遇改善が従業員のエンゲージメント向上につながります。

こうした組合活動を円滑に進めるうえで、TUNAG for UNION(ツナグ フォー ユニオン)の活用が効果的です。TUNAG for UNIONは、労働組合と組合員をつなぐ、組合活動に特化したアプリです。

組合関連の情報共有、アンケート・投票・出欠確認、各種申請・手続き、活動報告、相談窓口など、組合活動に必要な機能を一つのアプリに集約できます。執行部からの発信がタイムリーに届くだけでなく、組合員一人ひとりの反応も見える化されるため、一方通行ではない双方向のコミュニケーションが実現します。

産別や業種・規模を問わず多くの労働組合が導入しています。「組合の存在意義が”伝わる”ツール」として、組合員とのつながり強化に活用されています。

2026年春闘は、賃上げの流れを確実なものとして定着させられるかどうかの正念場です。労使ともに建設的な対話を重ね、持続可能な賃金戦略を構築していくことが求められています。

労働組合向けアプリ – TUNAG for UNION|情報共有、申請手続きをペーパーレス化

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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