労働組合への加入は拒否できる?基本的なルールを知っておこう
労働組合は労働者の権利を守る組織ですが、加入に関しては一定の決まりがあります。労働者が加入・脱退を選択できる一方で、組合側が加入を拒否できる場合もあるので、基本的なルールを知っておきましょう。企業の労働組合に関するルールも簡単に解説します。
労働組合への加入拒否は可能か?
労働組合は、労働者が自らの権利を守るために結成する組織であり、基本的に加入・脱退は自由とされていますが、加入の拒否に関しては一定の決まりがあります。まずは労働組合への参加に関して、基本的なルールを知っておきましょう。
任意団体であり基本的に参加は自由
労働組合は任意団体であるため、法律上、労働者が加入を強制されることはありません。労働者には加入の自由が保障されており、組合への参加は、あくまでも個人の選択に委ねられます。
ただし、組合が企業と交渉する際には、非加入者がその成果や恩恵を受ける場合もあるので、公平性の観点から加入を促されることも少なくありません。また、組合に加入することで交渉力が高まるケースもあるため、労働者は自分の立場やメリットを理解した上で、参加・不参加を決める必要があります。
基本的に脱退も自由とされている
労働組合への参加が自由であるのと同様に、脱退も基本的には労働者の任意です。一部の組合では規約に基づき、脱退の時期や手続きに制限がある場合もありますが、脱退できないわけではありません。
たとえ、組合側の承認がなければ脱退できないといった規約が存在していても、判例で公序良俗に反するとして無効とされています。従って労働組合は原則、労働者が望めば脱退を認める必要があります。
※出典:最判平19.2.2民集第61巻1号86頁|裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan
労働組合側が加入拒否はできる?
労働組合は原則として、労働者の権利を守ることを活動の目的としていますが、場合によっては労働者の加入を拒否できます。ただし、その際には法的に正当な理由が必要です。不当に加入を拒否した場合には、労働者からの申し立てにより、争いに発展する可能性もあるので注意しなければいけません。
詳しくは後述しますが、組合の活動方針に従わない可能性が高い労働者や、組合の規約に反する行為をした労働者が加入拒否の対象となる場合があります。さらに、加入によって組合の運営が著しく阻害されると判断される場合も、加入拒否の対象となり得ます。
労働組合への加入を拒否できる条件は?
それでは、労働組合が労働者の組合への加入を拒否できる条件について、具体的に確認していきましょう。上記のように、法律や規約に基づいた正当な理由がある場合には、労働者の組合への参加を拒否できます。
組合の目的や方針に著しく反する場合
労働組合は、労働者の権利保護を主として、特定の目的や方針に沿って活動しています。労働者が組合の目的に反する行動を取る恐れがある場合、加入の拒否が可能です。例えば、組合の活動を妨害する意図があると判断される場合や、企業側の利益を優先しすぎる行動が懸念される場合などが該当します。
また加入希望者が多く、全ての労働者を加入させると組合の運営に支障を来すような場合も、加入を拒否できる正当な理由と見なされるケースもあります。
組合規約に基づく正当な理由がある場合
労働組合にはそれぞれ独自の規約があり、それに基づいて加入を拒否することも可能です。例えば、過去に組合規約に違反した経歴がある労働者や、組合の活動を適切に支えられないと判断できる場合などが該当します。
特に部外者として、組合の活動を妨害していた者が加入を希望しても、組合として参加を拒否するのは正当な理由といえるでしょう。当該労働者の日頃の行動を鑑みて、加入を許せば組合の秩序が乱されてしまい、活動に支障を来すことが明白な場合なども同様です。
企業が社員を労働組合に参加させないことは可能か?
ここまで労働組合への加入に関して、組合側・労働者側のルールに関して解説しました。一方で、企業が自社の社員を労働組合に参加させないように、働きかけることは可能でしょうか?
不当労働行為として禁止されている
労働組合法において、企業は社員の労働組合への加入を禁止したり、組合活動を妨害したりすることを禁止されています。例えば、組合に加入した社員を解雇したり、待遇を悪化させたりする場合や、加入を強制的に阻止する行為は不当労働行為に該当します。
労働者には自由に組合活動をする権利が保障されており、これを侵害する行為は法的に許されません。労働者が企業から不当労働行為を受けた際には、労働委員会に救済を申し立てることが可能です。
労働組合への加入に関するルールを理解する
労働組合への加入に関しては、それぞれの立場や条件に応じたルールがあります。労働者は労働組合への加入・脱退の自由を持つ一方で、組合側は規約や活動方針に基づいて、労働者の加入の是非を判断できます。
ただし、その判断は法的に正当である必要があり、不当な制限は無効とされる可能性があるので注意しましょう。組合側・労働者側の双方がルールを正しく理解し、尊重することが、適切な関係の構築につながります。