労働組合の団体交渉とは?協議内容や進め方、知っておくべき事柄を解説

労働組合の団体交渉は、労働者が労働条件の改善や待遇の向上を目指して、企業側と協議する重要な場です。団体交渉の基本や協議内容、必要な準備など、知っておくべきポイントを解説します。団体交渉の意義や進め方について理解しておきましょう。

目次

労働組合による団体交渉とは?

団体交渉とは、労働者が集団として企業と対話し、労働条件や待遇について協議する制度です。まずは団体交渉の概要や法的根拠について、基本的なところを知っておきましょう。

労働者が集団として企業と交渉する場

団体交渉は、労働者が単独で企業と話し合うのではなく、労働組合が代表として企業と向き合う制度です。労働者が結束することで交渉力を高め、労働条件や賃金の改定、福利厚生などの改善を目指します。

一人一人の労働者が不利な立場に陥らないようにするため、重要な役割を果たすものであり、労働者の意見や要望を集約し、企業側に具体的な提案・要求として伝えられる場です。

労働組合の専門知識や経験を活用することで、労働者がより有利な条件を引き出せる可能性が高まります。

団体交渉の法的根拠

団体交渉は日本国憲法第28条や労働組合法で保障されている権利です。労働組合は団体交渉権を有しており、労働組合法第7条では企業が労働組合との団体交渉を、正当な理由なく拒否することを不当労働行為として禁止しています。

労働者の権利は法律によって守られ、交渉の場が確保されています。交渉の結果、合意が得られれば、その内容は法的拘束力を持ち、労働協約として取り決められる仕組みです。

労使協議とは何が違う?

団体交渉と労使協議は混同されがちですが、目的や法的拘束力が異なります。労使協議は労働者の代表と企業が意見交換をする場であり、法的拘束力がない場合がほとんどです。一般的に双方の理解を深めることを目的とし、必ずしも具体的な条件の変更を求めるものではありません。 

一方、団体交渉では具体的な労働条件の変更や協約の締結を目指し、上記のように合意内容には法的拘束力が伴います。団体交渉は労働者の権利を守るために、より強い効果を持つ手段と考えられています。

団体交渉で協議される内容

団体交渉では、主に賃金や労働時間・休暇・福利厚生・解雇条件など、労働条件に関する事柄が協議されます。加えて、企業の職場環境の改善や人員削減計画、新規の人事制度の導入なども、議題となるケースが珍しくありません。

一方、組合費の徴収方法や組合活動の時間確保など、労働組合の活動に関連する事項も話し合われます。組合の活動を含め、いずれも労働者の生活や働きやすさに直結しているため、企業と労働者の双方が真剣に取り組むべきテーマといえるでしょう。

団体交渉の流れと必要な準備

団体交渉を円滑に進めるには、事前の準備と明確な手続きが必要です。団体交渉がどのように進むのか、基本的な流れを確認しておきましょう。

1.団体交渉の申し入れ

団体交渉を開始するには労働組合が企業に対して、交渉の申し入れをする必要があり、交渉開始の日程や目的などを書面に明記します。申し入れを受けた企業は、交渉の意向を確認した後、日時や場所を調整するのが一般的です。

この場合、即座に交渉が開始されるわけではなく、企業との調整を経て初めて本格的に交渉がスタートします。

2.日時・場所・出席者などの調整

交渉の日程や場所・出席者などの調整は、組合側・企業側の都合を考慮する必要があり、双方の代表者の出席が求められます。交渉は労働組合の代表者が主導し、企業側からは経営者や人事担当者などが出席し、交渉を進めるのが通例です。

交渉の場が確保された後は、議題を事前に共有し、効率的に進められるように準備しなければいけません。交渉をスムーズに進行させるため、組合・企業は互いの立場を尊重し、調整に向けた意識の共有が必要です。

3.交渉・合意形成

団体交渉はまず議題を明確にした上で、労働条件や待遇に関する意見交換から始まります。双方が対立する点も多いため、合意を形成するには時間を要することも珍しくありません。

交渉の過程において、組合側は労働条件の改善を目指し、企業側は経済的な状況を踏まえて、現実的な提案をします。対話を通じて、双方が納得できる点を見出すことが重要です。合意の形成に至る過程では、第三者の仲介を受けるケースもあります。

また、交渉を経て合意に達した際には、内容が労働協約として正式に文書化され、労働者全体に適用されます。先述のとおり合意内容には法的拘束力が伴うため、企業は確実に履行しなければいけません。

団体交渉を進める上で知っておくべきポイント

団体交渉を成功させるには、守るべき法律やNG行為を知っておく必要があります。特に重要なポイントを押さえておきましょう。

企業(使用者)側のNG行動

団体交渉において、企業は労働組合との交渉を適切に進める義務があります。企業側に都合の悪い労働協約の締結を避けるため、組合の代表者を脅迫したり、交渉を無理に拒否したりするのは、不当労働行為として禁止されています。

また、交渉の進行中に一方的に条件を変更したり、参加者を不当な理由で排除したりするのもNG行為です。労働者の団体交渉権を侵害するものであり、法律に基づき労働委員会などで処罰される可能性があります。

団体交渉は拒否される場合もある

団体交渉は労働組合に保障された権利ですが、企業側が交渉を拒否できる場合もあります。具体的には以下のようなケースです。

  • 労働組合が正当な代表機関でない場合(例:過半数代表者を欠く団体など)。
  • 交渉内容が曖昧であり、具体的な議題が提示されていない場合。
  • 労働組合が暴力的または違法行為を伴う活動を行っている場合。 

ただし、企業が団体交渉を拒否する場合、理由が法的に正当でなければいけません。特に理由もなく交渉を拒否した場合、上記のように不当労働行為に該当し、労働組合は労働委員会に訴えることが可能です。企業側は交渉を拒否する前に、法的根拠を十分に確認する必要があります。

合意は労働協約に該当

団体交渉の結果、労働組合と企業が合意に達した場合、内容は労働協約として文書化されます。労働協約は労働条件や賃金・福利厚生などの取り決めを含むもので、法的に拘束力のある契約であるため、企業は合意した内容を順守しなければいけません。

労働協約には、交渉で決定した全ての条件が明記され、労働者全体に適用されます。もし企業側が労働協約に従わない場合、労働者は労働委員会への申し立てが可能です。労働協約は個別の契約とは異なり、集団での契約であるため、企業が特定の労働者と交渉し、一方的に条件を変更することはできません。

団体交渉を成功させるには?

団体交渉を成功させるには、労働組合側と企業側の双方が信頼関係を築き、誠実に対応することが重要です。組合側は事前準備を徹底し、交渉で求める条件や改善点について、具体的なデータや資料を用意する必要があります。

準備を徹底することで主張の根拠が明確になり、企業側にも納得してもらいやすくなります。また、現場の労働者の意見やニーズを、条件にうまく反映させるのも重要な準備の一環です。

一方、企業側も労働者の意見に耳を傾け、感情的な対立を避けつつ、冷静かつ建設的に問題解決を図る姿勢が求められます。自らの立場を押し通すのではなく、組合側と共に共通の解決策を見出す努力が必要です。

また、交渉においては柔軟性を持つことも重要であり、双方が譲歩できる部分と譲歩できない部分を明確にし、合意可能なポイントを見つけなければいけません。譲れない部分を明確にしつつも、互いの立場を理解することで交渉がスムーズに進み、双方が満足できる結果を得やすくなります。

団体交渉の進め方を知っておこう

労働組合による団体交渉は、労働者の権利を守るための重要な制度です。交渉を通じて労働条件の改善や賃金の改定、福利厚生の向上などを実現できる可能性があります。基本的な交渉の進め方を理解し、きちんと準備を進めることが成功につながります。

事前に交渉の目的や要求内容を明確にして、必要な資料やデータを用意しておきましょう。また、企業側との信頼関係を築くことも重要で、対話を通じて問題解決を目指す姿勢が求められます。一方的に主張し続けるのではなく、相手の立場を考えた上で、うまく妥協点を探るようにしましょう。

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この記事を書いた人

筑波大学国際総合学類卒業。2023年にスタメンに入社し、人事労務・情報セキュリティに関するデジタルマーケティングを担当。 現在は「for UNION」の立ち上げメンバーとしてメディア企画に従事。

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