【宇部市職員労働組合】執行部と組合員、双方向の動きを見える化し、「組合に入っててよかった」と思える組織を作りたい。

山口県宇部市に位置する市役所の労働組合(約1,000名)で中央執行委員長(非専従)として、2023年6月より従事されている山根様に、現在感じられている労働組合に対しての課題感から、今後実現したい”労働組合の未来”について、お話しをお伺いしました!

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宇部市職員労働組合様の現状や課題

やはり、組合員全体の状況、考え、意見を十分に把握するのが難しいことですね。情報発信ツールとして、週3回、機関紙を発行しています。市役所の玄関に置いたり、掲示板に貼ったり、各職場に郵送しているのですが、どの程度の方が読んでいるか、また読んでどう感じたかも把握することは非常に難しいと感じています。端的に言うと、一方通行で投げかけているような状態でした。

ありがたいことに、一部の組合員で意見を伝えてくれる方もいらっしゃるのですが、少数の意見が組合活動を動かしていくことは、それはそれで問題があると思っています。可能な限り広く意見や意向を聞く方法はないかと考えていました。また、コロナ禍に入り、リアルでの活動が激減しました。

コロナ以前では、レクリエーションやイベントをはじめ、青年部活動の一環で若手でバーベキューを企画したり、泊まり込みの学習会や職場オルグを実施していましたが、そうした活動もコロナ禍では自粛していましたので、対面で組合員と接する機会が極端に減少してまったんですよね。その影響で、コロナ禍中に加入した組合員には、労働組合自体が「よくわからない」と言われることがあり、執行部と組合員をこれまで繋いできたものが途絶えてしまったということを痛感しました。

組合員や職場の様子

私は、入所して12年目になりますが、周りから「職場で労働組合の話をすることが減ってきた。」というのは、声として多く聞いています。職員数も減ってきて、日常業務に追われていると周囲の人と話をしている余裕もないですし、職場単位での空気感や雰囲気にもよりますが、周りが忙しくしているので仕事に関係ない話もしづらくなってしまっています。

職場の雰囲気だけではなく、市民の皆様から、雑談している様子をご指摘いただく場面もある中で、組合員も気楽に労働組合などの業務に関係のない話をすることは年々難しくなってきていることも一因としてはあるかと思います。また、コロナ期間中、早期退職者が多く出てしまったことがありました。

コミュニケーション機会の減少だけが理由ではないと思いますが、今までは組合主催のイベント等で、課をまたいでの交流や人と人のつながりがありました。激務の部署で組合や誰かに助けを求めたいけど、面識がないから相談しづらいといった事もあったんだろうなと感じています。

さらに、「みんなが加入しているから加入する」が当たり前でない時代になっているとも思います。“労働組合”という言葉のイメージだけで敬遠してしまっている組合員もいるとは思うのですが、組合活動は自分達(=組合員)に関係ない話は扱っていないですし、だからこそ組合活動にもっと関わってほしいと思っています。

 各職場にいる職場委員とのお取り組み

執行部と職場委員間の活動ではないのですが、各職場では職場委員会活動というのがありまして、各職場の問題や要求を共有・集約する場と位置付けています。職場委員会を活性化させる目的で、活動内容を報告したら、1人1,000円まで補助するという制度を設けています。

ただ、利用者が限定的であったり、組合活動について具体的に深い話までできていないのが実態です。執行部として、職場委員の役割を明確化できていない点も改善する必要があると感じています。

“未来”への想いや理想の組合活動の在り方、今後の展望

執行部と組合員との関係性の構築という観点で、今後実現していきたいこと

まずは執行部と組合員、双方向の動きを”見える化”することだと思っています。労働組合というコンテンツに少しでも多く触れてもらう機会をつくり、接点を持ち続けることです。そのためには、こちらの発信が届いているのか、きちんと把握する必要があります。

また、組合の入口として、イベントは非常に有効だと思っています。早いうちから面識を広げておくと、仕事のしやすさにも繋がってきますので、つながりが作れるメリットも感じてもらいながら組合活動に参加してくれる人材を増やしていけるといいかなと考えています。

今後の執行委員の育成の観点で、今後の取り組みへの想い

私は、これまでの歴代委員長に比べると非常に若いんですよね。周りは私に「あと30年ぐらいやってくれるんじゃないか」と期待しているかもしれませんが(笑)、自身としては、委員長の任期を3年と決めています。1人が長く続けて属人化すると次の人が大変ですし、非専従で委員長を続けることは非常に負担です。組織の循環や持続性を考えると、そのくらいが妥当と考えています。

ただ、丸投げではなくて、委員長を辞めた後でも役員の中に残って引き継ぎを行い、役員間でナレッジが循環していかないといけないと思っています。イベントが復活した関係で、若手でも組合主催のお祭りの準備や運営に関わってくれる人も増えているので、そういった方には、他行事にも参加してもらったりしていきたいですね。

青年部活動は、組合活動に親しんでいただくきっかけになってたところがあるので、そうした活動を通じて、ゆくゆくは次期役員候補生を探していきたいと思っています。他の事務的な作業については、TUNAGでどんどん効率化していくと、コア業務にリソースを活用することが出来るので、効率化と引き継ぎをセットで実施していきたいです。

例えば、私たちは抽選会のイベントを実施しているのですが、この準備がとても大変でして、具体的な話をすると、中心メンバー2人が、約300個ある商品を全部買ってくるなどがあります。たまたま、その分野に詳しい2人だから運営出来ていますが、こういった作業も引き継げる後任者を育ててもらわないといけないことにもなります。

さらに書記局の体制のお話をすると、30年以上携わっていた方が退職されるので、ここのノウハウの継承も今まさに実施している状況です。先ほどの抽選会もビッグイベントになってしまったので、誰でも出来るようにしておいて、イベントを続けていけるようにしていきたいです。

労働組合の在り方や実現したい組織像

まずは、労働組合や組合活動を自分事として認識してほしいですね。私の感触ですが、組合に対しての抵抗感みたいなものを払拭しないといけないと思っています。私たちがTUNAGを導入した狙いの一つにも、組合活動=アナログのイメージが根強くあったので、新しいデジタルツールを入れて刷新し、若い人も入りやすくしていこうというのがありました。

こういったツールを導入したことによって、直接意見が言いづらい方からも意見が出てくることを期待しています。実際、職場オルグも実施をしていますが、一方的に喋って終わりで対話が生まれにくい状況です。ですので、執行部の想いを伝えて、それに対する想いが返ってきて、その想いが反映された運動になればいいなと思っています。

例えば、要求書にしても、「執行部が作って出すもの」というように見えてしまっています。これは執行部と組合員、双方にとって不幸なことです。執行部としても「誰に向けてこれだけの労力をかけてやってるの?」とモチベーションも下がってしまいますし、組合員も労働組合の意義を認識できないですよね。このように、お祭りやイベントだけじゃなく、組合活動のコアな部分にも積極的に意見が出てくるような環境が理想ですね。

〜山根様、ありがとうございました!〜

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この記事を書いた人

「for UNION」編集長。
2020年にスタメンに新卒入社。
その後、2022年1月に労働組合向けアプリ「TUNAG for UNION」を立ち上げ、現在はマネージャーとして、事業拡大に従事。

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