【沖縄県高等学校障害児学校教職員組合】子どもたちが困った時ときに、先生たちに頼れる場所になることを目指していきたい。

沖縄県にある県立学校の高校と特別支援学校の教職員組合の沖縄県高等学校障害児学校教職員組合(略称:沖縄県 高教組)の書記長 喜瀬様(写真左)と執行委員 砂川様(写真右)に、労働組合の未来についてお話をお伺いしました!(以下、敬称略)

目次

組織概要と自己紹介

組織概要

喜瀬:弊組は、沖縄県にある県立学校の高校と特別支援学校の教職員の組合です。教諭・事務職員・実習教諭・養護教諭・現業職員(用務員・調理員・介助員など)・図書館の司書・栄養教職員・船舶職員・寄宿舎指導員などで構成されています。学校現場を休職している専従役員は5名で、高教組任用の書記も6名います。1期2年なので休職期間も2年です。2年経つと改選を行い、継続する人もいれば一部役員が入れ替わるということもあります。

また弊組には、12の専門部があります。中でも、臨時採用教職員部という部には、臨時的任用職員が所属しており、本務の職員が産休育休、病休等で休職している方の代わりに任用される方や非常勤講師もここに含まれます。そして、臨時的任用として働きたいということで教育委員会に登録している方でまだ任用されていない方でも加入することができますし、60歳で1度退職し再任用となった方もこの臨採部に加入しています。また、勤務形態が全日制とは異なる、定時制と通信制の学校職員で構成される定通部という専門部もありますが、それぞれ独自の課題を抱えている状況があります。

支部に関しては、本島内が南部・那覇・中部・北部の4つ、離島が宮古・八重山と全部で6つの地区があります。

基本的には1つの学校を1分会としていますが、学校によっては定時制と全日制の両方設置されているところがあり、定時制と全日制で分会を分けている学校もあれば一緒にしている学校もあります。また、高校に高等支援学校が併設されている場合や中高一貫校等は、1つの分会になっていて、現在は全部で79分会です。それぞれ支部長や分会長がいるため、本部が連携を取りながら各現場への発信やイベントの巻き込みのようなところを中心にやっています。

自己紹介

喜瀬:私は、養護教諭として保健室で働いていましたが、コロナ禍を経て組合役員に立候補し、昨年度までの2年間は執行役員、今年の4月からは書記長をやらせていただいております。養護教諭は1校の中に一人か二人の職種なので、役員になる以前は、他校との情報交換を行ったり、日教組の全国や九州地区の養護教諭の集まりに参加したりしていたのですが、そこで都道府県によって色々と違いがあることに気づき、視野が広がり、他県での良い制度は沖縄でも取り入れてほしいというような要望を伝えるなどして組合員として活動していました。

しかしコロナ禍に入り、学校にとっても保健室にとっても厳しい状況になり、人員が増えないまま感染対策のための事務的な作業も増えていくというような悲惨な状況が続いていました。これに対して、組合が対応してくれたり個人的に管理職に言ったところで変わらないだろうという思いがあったりというところで、より組合の全体的なところに興味を持ち、養護教諭という少数職種の立場からでも専従役員になれば交渉の場に立って交渉していけるというところで役員への立候補を決めました。

また、以前までは、養護教諭での活動が中心だったので、全体のことはお任せ状態になっていてあまり理解できていませんでした。今後、組合加入の声掛けをする際には、全体像をある程度分かっていた方が声かけがしやすいだろうという思いもありました。

砂川:今年度から専従執行委員になり、賃金財政をメインに業務を行っています。臨任の頃は組合に入っておらず、当時は本務の先輩方が活動している様子を見たり、組合が主催している球技大会などのレクリエーション活動等に加わらせてもらったりしていました。そして、私が非常勤で勤めることになった際に教員採用試験の対策講座というものがあり、組合の臨採部に加入しているとその講座料が安くなるというメリットもあったため、そのタイミングで臨採部に入って講座を受講し、なんとかその年に合格しました。

翌年に採用となり、改めて本務として加入しました。どちらかというと、採用試験の講座があったからというよりは、すでに先輩方の活動の様子を見ていたので、組合に入ることに関しては自分の中で意志を固めていました。初任校には3年勤め、その後離島に異動しました。離島2年目のときに、当時の分会長から次の分会長になってくれないかと声をかけていただきました。私自身それを担えるほどの者ではないと思っていましたが、断りきれず引き受けました(笑)

そこから徐々にいろいろな役員をやらせてもらうようになり、離島で支部の役員を務めることにもなりました。離島での勤務が終わり本島に戻ってからも何度か分会長を務めました。本部では毎月評議員会というものがあり、各分会の分会長が参加するのですが、そこで本部へ現場の意見を伝えたり、要求を聞いてもらったりということがあったので、本部の方々とのつながりはそこでできたと思っています。

そして、執行委員のお誘いを受けました。当初は専従ではなく非専従として現場に身を置きながら定期的に執行委員会に顔を出すという立場でお引き受けしようと思っていましたが、専従の枠が埋まらない状況でしたので、その打診があり、お受けして今に至ります。

学校現場も忙しかったですが、組合は、現場の要望を集約して、それを実現するために自治体などとの交渉を行うなど、業務内容が異なり、新たな忙しさがありました。ですが、現場にいたときにかなえられなかったことを、実際に自分が動き、交渉で勝ち取ることもできる面では非常にやりがいも感じられますし、周りの専従の方に助けてもらいながら頑張れています。

注力している業務内容

喜瀬:執行部の業務効率化の部分に力を入れています。学校の方でも注力していかなければならないことですが、組合活動の方も労力を減らしつつ組合活動を維持しなければなりません。そこで、業務効率化と組合の機能維持の両立をどのようにやっていけるかというところに関しては重点的にやってきました。

例えば以前は、色んな学校の人数調査等をしたい場合、ファックスで送るかエクセルで入力したデーターで送るかのどちらかでやっていました。これが79分会から届くと、エクセルの場合は執行部がコピペしたり、ファックスで送られてくると送られてきた数ををこちらでまた入力するという単純作業があったりして入力ミスが起きる可能性がある状況でした。これを今ではGoogleフォームやTUNAGでやるようになりました。

また、人事異動で配慮してほしいという要望を受けて人事課に要請することがあるのですが、その結果どうなったかというのを私達が検証します。何%ぐらいの要望が通ったか、その場合に最終的にどこの学校に配属になったかというのを各学校の役員の方が集約して報告する流れでやってもらっていましたが、そうすると役員の負担が大きいため、QRコードを読み取って本人たちが直接入力できるようなシステムに変更しました。

あとは、以前は組合員全員に紙で資料を準備して配るなどアナログな方法で、分会長にも作業負担が大きくありましたが、現在はTUNAGを使いつつ各分会の必要枚数だけ配るというような形に変更しました。このように、いかに活動を維持しつつ労力を減らすことができるかというところを一番気にかけて業務を行っています。

砂川:現状での課題としてはやはり、教員の多忙化解消や働き方改革がかなり大きなものとなります。それに関し、学校人事課や、数年前に沖縄県にできた働き方改革推進課との意見交換の場において、直接要望を伝えているところです。これが何とか実を結び、現場の方々に成果を示すことができれば良いなという思いで今頑張っています。

沖縄県高等学校障害児学校教職員組合様の現状や課題

喜瀬:組合への新規加入者を増やしたいというのは本当に大きな課題だと思っています。やはり年代によってなかなか加入に繋がらないことがあります。私の場合は、親しくしていて尊敬できる先輩が組合に入っていて、組合は賃金のこととか色んな手当や制度のことを交渉したりできるし、今までの制度も組合の先輩方が交渉で得たものであって今もさらに交渉を頑張っているんだよというようなことをざっくり聞いていたので、そこに私も貢献しようという思いが芽生えて組合に入ろうという気持ちになったんです。

ただ、若ければ若いほど、自分にどういうメリットがあるのか、組合がなくてもそんなに変わらないんじゃないのか、組合があることでどれくらい変わるのかなど細かいところまで見えなければ、加入してもらえないのではないかと感じます。もちろん若い方でもすぐに加入する方もいらっしゃいますが、割合的にはそういった方が増えているのかなと思っています。

ここに関しては、ざっくりした内容だけで加入してくださいと言うのではなくてこっち側がしっかり細かいところまで伝えていく努力をしなければならないのかなと感じています。「実は組合がなかったら得られなかったけど組合があることでこういうことが得られたんだよ」というように具体的な話をしてそれが未加入の方にも伝わっていくような仕組みを作っていくことが今後重要になってくると思っています。

また、組合に入ると役員や係があって、現状ただでさえ忙しいのに余計忙しくなるのではないかというのが加入のネックになっている方、組合に入らない状態だと組合費を払わなくていいけど得られた権利は全職員が得られるから入らない方がお得なんじゃないかというような認識の方達も増えているのが現状です。この状態が今後続いてしまうと、組合が潰れてしまいます。最悪本当になくなってしまった場合、そこからまた立ち上げようというのは相当の労力がかかると思います。なので、今私たちがしっかり踏ん張って、後輩たちに今ある組織のまましっかりと引き継げるように頑張っていきたいです。

現状、加入していない際のデメリットに本人たちも気付いていない状況だと思います。例えば、給与明細をもらうと手当の金額が間違っていたり手当が入っていなかったりすることが稀にあります。組合は給与明細の見方を色々と発信していますが、組合に入っていなければそもそも気づくことができないので、そういうこともあるよということまで含めて理解してもらい、加入に関して深く検討してほしいと思っていますし、こちら側も深いところまでしっかりと発信していきたいと思っています。

さらには、多忙化によって組合活動への参加者が減ってきているというのも課題として感じます。以前は、休日や平日の夕方、土日の学習会などに参加してそこで元気をもらってまた職場で頑張ろうというような雰囲気だったのが今では、休めるときに休みたいというような感じになってきています。こちらも魅力ある企画を行うことを心掛けるのは大事だと思っていますが、それと同時にゆとりがないと参加する元気もなくなってしまうと思うので、そういう意味でも業務削減や働き方改革に向けての交渉も頑張っていきたいです。その中で、組合加入者にも加入者ではない人にも組合の存在意義を実感してもらえたらいいなと思います。

砂川:組合員が減少し、毎年加入者数がなかなか伸びないというのは同じ悩みですが、やはりどういう理由・目的を持って組合の加入を考えるか、それぞれのきっかけによって、入る人、入らない人、もしくは入っても辞めてしまう人などで違いが出てくると思っています。私は、個人的なメリットだけを追求して組合に加入すると、それは当然、割に合わないと思う人が出てくると思うんです。なので、一般の企業が何かお得な情報を顧客に提供し、それを求めて会員登録するというようなものと組合の性質というのは同じではないと思っています。

少し堅い話になってしまいますが、特に教職員組合の発足は、かつての大戦における深い悲しみや悔やみが関係しています。学校現場が、国の方針、軍部の方針に従い、その価値観をそのまま生徒たちに押し付けるような形で戦場に赴かせてしまったため、多数の教え子を亡くしました。その反省から教職員組合が立ち上げられています。必ずしもこの国の方針が正しいわけではないですし、おかしいと思ったときにしっかり意見が言えるような立場でいるということがそもそもの大きな目的であると私自身は捉えています。

今は確かに当時とは状況が違いますが、そのような状況に置かれたとき、それはおかしいと教職員団体として明確に意見が言えるのかどうか、不当な扱いに抗うことができるのかということも組合の存在意義として大事なところだと思っています。なので、個人のメリットというより、今現在の生活環境、学校現場の状況、そこを全体として改善していくために必要な組織なのだということが伝わらないと簡単に辞めていってしまうんだろうなと思います。そして、その伝え方がとても大事ですし、どう伝えたらよいのかというのは今でも簡単に答えは出ませんが、なんとか探っているところです。

組合活動の中で大事にされていること

喜瀬:集まりに来て良かった組合に入って良かったと思ってもらえるようなことができればいいなと思って組合活動を行っています。組合員自身が組合に入って良かったと思えるような形にするためには、交渉で成果を得られることももちろんですが、例えば組合の学習会でお菓子が出てきたとか(笑)小さなことですが、そういったところで組合員の方々に入って良かったと言ってもらえるような組織でありたいですね。

また、先程砂川さんから個人のメリットだけではないという話もありましたが、私たちは今でいうと大多数の教職員が求めている業務削減や人員を増やしてほしいというところにはもちろん力を入れていますが、同じ仲間として考え、仲間のために動くというのが弊組の特徴でもあります。例えば、臨時的任用職員や非常勤職員が本部と少し待遇が違って理不尽だったり、養育里親をしている方は育児休業を取れなかったり、事実婚や同性パートナーだと単身赴任手当や育児休業、介護休暇などを取ることができなかったり、日本国籍がない状態で採用試験に受かった方は給与水準が違っていたりします。

例え自分自身に直接関係ないことであったとしても、仲間のためにこういったものを撤廃して改善に向けて動けるというのは組織として非常に良いところだと思っています。個人ではなかなか言えないことを組織として言えるのはすごく大きな部分なので、私も仲間のために動いていけるよう意識しています。

また、今現在教員不足や教職員の病気、離職者の増加という話が多いですがそれと同時に、子どもたちのいじめ、不登校の増加など子どもたちにも悲鳴が上がっている状況です。今までは、子どもたちをどうにかするために無茶な長時間勤務を行っていましたが、結局体調を崩したり辞職したりする教員が多発しました。なのでまずは、教職員の待遇の改善が必要であり、そこから子どもたちの支援に繋げていかなければならないと思っています。待遇がよくなることで、子どもたちのちょっとした変化にすぐ気づけたり授業の準備を充実させて楽しく授業を行うことができたりすると思います。私たちの待遇が良くなることが最終目標ではなく、それによって子どもたちが学校が楽しくなるとか困ったときに先生たちに頼れるとかそういう場所になることを目指しています。

砂川:現時点で、専従役員は忙しくしていますが、忙しく見えないような仕事をしたいと思っているところです(笑)組合活動が負担だと思われると、加入率も上がらないですし、入ったのに辞めていく方も出てきてしまうと思っています。組合活動は、悲壮感を漂わせてやることではないと思っているので、みなさんにも楽しくやってほしいです。そういう面を何とか伝えられたらと思います。

そして、特に学校現場がそうですが、国や自治体があれこれやることを増やし、教員が疲弊してしまうという状況があります。教員自身、子どもたちのため、地域のためという思いで教員を目指してきた人たちが多く、頼まれると引き受けてしまうような人達がほとんどで、どうしても多忙化に拍車が掛かってしまいますが、こういった状況の中でも、現場、組合、ともに負担を分かち合えるようにやっていけると良いですね。また、負担を軽減するよう国や自治体に呼びかける組合自身も、楽しく活動できるように、その内容を精選しながら続けられたらというのは日頃思っているところです。

沖縄県高等学校障害児学校教職員組合様の未来

喜瀬:学校にいたときは、させられている感じの仕事もすごく多かったですが、組合の仕事は本当に必要性を感じていますし、自分のことや周りの仲間のために繋がる仕事なので楽しい仕事だと思っています。そこがうまく伝わるようになればいいなと思ってます。ただ、やはり大変そうに見えてしまうのでそこをどうしたらいいのかというのはテーマだなと感じています。

また、今回専従役員の委員長が女性になりました。こういった時代に乗った役員体制だったりTUNAG導入のようにデジタルとリアルを両立させて昔からあるものも大事にしつつ新しいことを取り入れているという取り組みだったりがうまく周りにも伝わるような発信の仕方ができれば良いなと思っていますね。

砂川:実は現在、専従役員5名のうち女性が4名で男は私だけなんですね。よく先輩方から、どういう意味なのか、「大丈夫?」と言われるんですが、自分としては仕事に関して性別を気にしてやっているわけではないですし、ざっくばらんに話もできて楽しくやらせてもらっています。未来ということであれば、今回に限らず女性役員がどんどん増えていってほしいなと思っています。また、子育てで忙しい方は、ひと段落してからでも構わないと思いますし、本人が担える状況になったときにぜひ協力してほしいなという思いはあります。

そして、先ほどから、個人のメリットではなくて、ということを言ってはいますが、私が賃金財政担当ということもあり、今の経済状況を考えたときに、組合費の件が気にはなっているので、ゆくゆくこの辺もどうにか負担軽減できないかと考えているところです。経済的な負担が軽減され、活動内容も負担に感じないような組織を将来的に目指せたら良いなと思っています。

喜瀬:今の話を聞いていて思いましたが、子育てや介護などプライベートで忙しい方はなかなか活動に参加できないとか役員をできないとかあると思いますが、そこは全く罪悪感を感じずにいてほしいと思います。本当に加入してもらっていること自体が力になっているので。そういった方が罪悪感を感じずに、加入していることで胸を張れるような組織にしたいですね。

〜喜瀬様、砂川様、ありがとうございました!〜

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この記事を書いた人

「for UNION」編集長。
2020年にスタメンに新卒入社。
その後、2022年1月に労働組合向けアプリ「TUNAG for UNION」を立ち上げ、現在はマネージャーとして、事業拡大に従事。

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