【日本ガス労働組合】「専従ゼロでも続く組織づくり」日本ガス労働組合が取り組む情報共有と効率化

日本ガス労働組合の古川書記長に、労働組合の課題解決から、組合活動で注力した取り組みや成果など、組合活動に従事された振り返りを幅広く聞かせていただきました。

目次

組織概要と自己紹介

— 組織概要

古川:日本ガス労働組合は、鹿児島市を中心に都市ガス事業などを展開している日本ガス株式会社の企業別労働組合です。2026年1月時点の組合員数は137名です。2019年7月当時に存在していた2つの労働組合が解散し、新たに現在の日本ガス労働組合が結成されました。  執行部は19名で構成されており、専従役員は置いていません。役員を含む執行部全員が社員として日々の業務に従事しながら、業務時間外に組合活動を行っています。

— 自己紹介

古川:私は新卒12年目で、入社4年目から執行部に所属しています。 当時、先輩社員から労働組合の執行部に入らないかと声をかけられ、最初は特に明確な理由もなく、「なんとなくやってみようかな」という軽い気持ちで執行部に加わりました。  その後、執行部内でさまざまな役割を経験し、2024年からは書記長として活動しています。

書記長になられるまでの過程

古川:執行部に入ってすぐの頃は、広報委員として年に数回発行する機関紙を担当したり、財政委員として組合費などの管理を行ったりしていました。そうした経験を通じて、組合活動全体の流れを理解することができたと感じています。その後、賃金対策委員として会社と交渉を行う立場になりましたが、実際の交渉の場では当初かなり緊張し、組合側の主張を伝えるだけでも精一杯だったことを覚えています。周囲の方々にフォローしていただきながら、少しずつ交渉のメインスピーカーを担うようになっていきました。その過程で、組合内においても徐々に重要な役割を担うようになり、新人事賃金制度の導入に向けた協議や上部団体への加盟、さらに組合活動の効率化を目的としたTUNAGアプリの導入など、さまざまな取り組みを経験させていただきました。

現在は書記長として組合全体の運営に携わり、特に会社との各種窓口対応や交渉を主に担当しています。現在の組合執行部は、役割に応じて大きく3つの部門に分かれています。イベントの企画や組合員同士の交流促進を担う「組織部」、職場環境や福利厚生・賃金などについて会社と交渉を行う「労働対策部」、そして組合費の管理や収支を担う「財政部」で構成されています。各部長および委員には、それぞれの役割を明確に割り当て、「何をすればよいか分からない」という状況が生じないよう配慮しています。組織体制については毎年少しずつ見直しを行いながら、現在の形に整えてきました。

現状の課題

古川:やはり大きな課題は、専従役員を置いておらず、業務時間外で組合活動を推進する必要がある点です。時期や職種によっては業務が多忙になったり、家庭やプライベートの事情が重なったりすることで、組合活動に充てられる時間がどうしても限られてしまいます。各部長や委員は、それぞれ想いと熱意を持って執行部に加わってくれています。本来であれば「もっと組合活動に力を入れたい」「職場のここを改善したい」という気持ちがあっても、活動に専念すること自体が難しい環境にあると感じています。

また、これは多くの労働組合が共通して抱えている課題だと思いますが、執行部として一生懸命活動しているつもりでも、「執行部は何をしているのか分からない」「組合活動に協力してもらえない」といった声に向き合う場面もあります。そうした中で、組合の存在意義を高めていくためにも、組合全体の活動に対する理解度や納得度を、いかに向上させていくかが常に大きな課題だと感じています。

併せて、執行部として日頃どのように組合員と関わっていくかという点も課題の一つです。以前は、組合の一大イベントとして組合旅行なども実施していましたが、社会情勢の変化やコロナ禍を経て、職場における人と人とのつながりに対する価値観も大きく変化したと感じています。そのような状況の中で、業務でもプライベートでもない、「組合だからこそできる取り組み」とは何かを、日々模索しながら活動しています。

現在取り組まれている施策

古川:最近は、組合間交流の取り組みとして、家族も参加できるイベントを組織部を中心に企画・実施しています。昨年度は、ホールを貸し切っての映画上映イベントを企画しました。普段の職場ではなかなか見ることのできない、組合員が家族と一緒に映画を楽しんでいる姿を目にし、大きな感動を覚えています。また今年度は水族館とコラボレーションし、夕方から水族館を貸し切って館内を回遊し、イルカショーを観覧した後、大きな水槽の前でディナーを楽しむイベントを実施しました。

100名を超える組合員とそのご家族にご参加いただき、イベント後のアンケートでは、回答者全員から満足の声をいただくことができました。組合員本人だけでなく、その家族にも参加してもらうことで、いざという時に「組合を頼れる存在」と感じてもらえるよう、組合活動への理解を深めてもらうことを目的としています。今後も慣例にとらわれることなく、「組合だからこそできる取り組み」を大切にしながら、継続して企画していきたいと考えています。

業務の片手間では組合活動に十分専念しにくいという課題については、業務時間外の活動時間そのものを増やすことが難しい以上、「いかに組合活動を効率化するか」という視点が重要になると考えています。具体的には、取り組む事項の取捨選択やマニュアル化、運営の仕組みを簡潔なルールとして整理し、まずは土台をしっかり固めていくといった効率化を、できる範囲から進めていきたいと考えています。

そうした中で、TUNAGを導入して以降、組合活動の効率化が一気に進んだと実感しています。これまで組合の各種資料はパソコンで作成した後、紙に印刷して配布や回覧を行っていました。また、執行部内での連絡手段も、直接顔を合わせて話す以外に方法がなく、多くの手間がかかっていました。これらの活動をTUNAG上に集約することで、執行部にとっても組合員にとっても負担が大きく軽減されたと感じています。

紙を使わなくなったことで、印刷作業だけでなく、配布準備や大会不参加者へのフォローなども不要となり、これまで想像以上に多くの手間がかかっていたことを実感しました。また、TUNAGのチャット機能を気軽に活用することで、LINEアプリのように日常的な組合に関するやり取りを、個人間やグループで行えるようになりました。その結果、執行部のメンバー一人ひとりが役割を意識しながら、より動きやすい環境が整ってきたのではないかと感じています。

今、一番大事にされていること

古川:執行部で取り組んでいる内容や協議している状況を、一人でも多くの組合員に理解してもらい、当事者意識を持ってもらうことを大切にしています。そのため、可能な範囲で、できるだけ多くの組合員に情報を共有するよう意識しています。 以前から「執行部が何をやっているのか分からない」「どのような交渉をしているのか見えにくい」といった声が多くありました。そうした声を受け、例えば執行部で企画・実施している勉強会の様子をTUNAGを通じて写真付きで公開し、「執行部できちんと活動している」ということを感じてもらえるようにしています。 また、会社との交渉についても、実際に使用した資料を可能な限りTUNAGを通じて組合員に共有しています。

これまで紙で配布していた場合には、何十枚ものコピーが必要だった資料も、記事の添付資料として簡単に共有できるようになりました。その結果、職場が離れている組合員や、育児休業・産前産後休業などで会社を離れている組合員にも、確実に情報を届けることができています。こうした取り組みを通じて、組合員の執行部に対する理解や納得感を高めることを心がけています。イベントについても同様に、実施後は必ず写真付きの記事を投稿し、活動の様子が伝わるよう意識しています。

さらに、伝えたい情報がしっかり届くよう、アプリのプッシュ通知についてもメリハリをつけて活用しています。議決権の行使が必要な内容や交渉結果など、組合員に必ず伝えるべき情報についてはプッシュ通知を設定し、記事を投稿しています。一方で、興味のある人に見てもらえればよい内容や、雰囲気を伝えることが目的の記事については、プッシュ通知は使わず、タイムライン上で自然に目に入る形にしています。 組合員にとって情報発信が負担に感じられてしまうことは避けたいと考えており、発信の「濃淡」を意識しながら、いざという時には「組合がある」としっかり認識してもらえるような働きかけを心がけています。 今後は、TUNAGアプリを開いた際に、楽しそうな雰囲気や活動のにぎわいが伝わるような発信にも、より意識的に取り組んでいきたいと考えています。

今後の理想の組織像

古川:組合員の皆さんに組合への理解を深めてもらうとともに、執行部の活動に対する理解も高めることで、「組合執行部」という存在そのものの価値を高めていきたいと考えています。 専従役員がいない体制である以上、執行部の活動に対する相応の理解がなければ、そもそも執行部に入ってもらうことが難しくなりますし、仮に入ってもらえたとしても「得るものがない」と感じてしまうようでは、本人にとっても組合にとっても決して良い状況ではないと思っています。

組合執行部に入ることで、「さまざまなことに挑戦できる」「普段は経験できないイベントの企画ができる」「他職種・他企業の組合員とのつながりができる」といった前向きなイメージを持ってもらえれば、それで十分だと考えています。さらに、会社との交渉を経験することで、会社の考え方をより深く理解できたり、自身のスキル向上につながったりする面もあります。 最初は「よく分からないけれど、誘われたからやってみようかな」といった、私自身がそうだったような入り方でも良いと思っています。そうした経験を通じて、組合執行部の価値を高めていきたいと考えています。また、執行部に限らず組合活動に理解を示してくれる組合員が増えていくことで、現在の役員が入れ替わっていったとしても、次の世代が自ら考え、主体的に動ける、強い組織として組合が継続していってほしいと願っています。 

〜古川様、ありがとうございました!〜

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この記事を書いた人

「for UNION」編集長。
2020年にスタメンに新卒入社。
その後、2022年1月に労働組合向けアプリ「TUNAG for UNION」を立ち上げ、現在はマネージャーとして、事業拡大に従事。

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