【神戸市教職員組合】組合活動=仕事ではなく、生活の一部として感じてもらえるような組合へ ~ワークからライフへ、義務から権利へ~

神戸市立の全小・中・特別支援学校(254校)の職場に分会を持ち、約5,000名の組合員を抱えている神戸市教職員組合の副執行委員長の西川様(写真右)、書記長の中村様(写真左)にインタビューさせていただきました!(以下、敬称略)

目次

自己紹介からご経歴、組合に関わる経緯

西川:私自身、大学時代で労働組合に関して勉強もしたことなかったですし、知らないことも多くありましたが、我々はオープンショップだったこともあり、「とりあえず名前書いとけよ」と、先輩に声をかけられて加入しました。強制的にどうしても組合に加入させられたとかではないのですが、何も分からずに「先輩に入るもんやで」って言われて加入したのが、そもそものきっかけですね。

最初は、一組合員として、分会での係も特に受け持っていなかったのですが、組合員になった翌年に分会の青年部長をやってほしいと依頼を受けたことがきっかけで、組合の集会等に顔を出すことが多くなりました。

その後、2校目で「分会長をやってくれないか?」と依頼を受け、分会長をやることになりました。そうした流れで分会長をやっている中で、「次は支部役をやってくれないか?」と声をかけていただき、「なにもできないですけど私で良ければお願いします。」と依頼を受けました。

その後は、なんだかんだ組合活動に従事していたら、今の副委員長になっていましたね。(笑) “頼まれごとは試されごと”という言葉をモットーに日々活動していますので、分会長や支部役員の依頼も強制ではないので、依頼を断ることもできるのですが、「先輩から仕事を覚えたかったら、返事は、はいかイエスで0.2秒で答えろ」という熱い指導を受けていたこともあり、は「頼まれごとは試されことだから、とりあえず何かお願いされたら、絶対に全力で引き受けるっていうのは大事にしてきましたね。

中村:私は、他の業種を知らないまま、教職員組合に関わることになったのですが、元々小学校の教員になるきっかけをくれた小学校5,6年生の時の恩師が組合の役員として熱心に活動されていたんですよね。

私は、組合については全然知らなかったのですが、とにかくその恩師がやっていたような授業や学級経営をしたいと思い、大学の教育学部に入ってからも、何度もその先生の教室に張り付きで授業を見せてもらっていたんですよ。

その恩師から、ある時、「組合で学習会をやるんだけど、大学生の君も参加してみない?」と声をかけていただいて、大学生の時から組合の学習会に、参加していたんですよね。(笑)そんなご縁で、勤務し始めると同時に、当然のように組合に加入しました。その後、社会人2年目の時に「神戸市全体の青年部幹事をやってくれないか?」と依頼を受けました。

新卒3年目から青年部の幹事になり、翌年以降は、副部長や部長、そして、兵庫県教職員組合の青年部副部長も経験し、組合の活動を通して、全国の同世代と出会い、多くのことを学ばせていただきました。現在は神戸市教職員組合の書記長として、従事しています。

現在、注力している業務

西川:メインは、情報担当になるので、情報発信や情報ツール集約だったり、Canvaというツールを活用しながら、定期大会での広報資料やTUNAG導入の際に広報など、組合内での情報発信をメイン担当して、業務を実施しています。

ちょうど期が変わる前までは、青年部担当だったので、若い人が参加できるようなイベントを青年部のメンバーと一緒に考えたり、直近だと臨時採用の業務も引き継ぐことになりましたので、幅広くやっています。

中村:去年までは、賃金対策、賃金交渉の担当をしていました。神戸市教職員組合をはじめとして、他に6つの神戸市の公務員の労働組合が連携している市労連という組織の書記長として、神戸市の教職員だけではなく、神戸市の公務員全体の賃金交渉の最前線で闘っていました。

市労連の書記長を2年間勤め、今年から、神戸市教職員組合の書記長に戻ったところになります。

神戸市教職員組合様の現状や課題

西川:新規採用者の方に労働組合を正しく理解し、労働組合って大事だなと感じてもらわないといけないと思っています。昔は、組合活動が目に見える形のものが多かったし、だからこそ労働組合の重要性を語れる先輩も多かったので、自然とみんなで「組合には加入しないといけないよ」って話をしてくれていたと思うんです。

一方で、今はストライキもできなくなった関係で、目に見えた形で組合活動が伝わりにくくなってきていますし、伝えてくれる世代もどんどん退職をしていっているので、しっかりと組合の意義を継承しながら、若い世代を上手く巻き込みながらやっていかないといけないという大きな課題も感じています。

組合員にしっかりと情報発信をして、組合ってこんなことしてるんだなっていうのを知ってもらう機会を作っていかないといけないと思っています。だからこそ、TUNAGがその一助になってくれると思っています。

中村:労働組合っていうのは、みんなで職場を良くしようっていうものだと思います。昔は、年功序列で終身雇用の文化が社会全体にあって、就職をしたその会社がファミリーという意識があったんだと思います。

ずっとその会社でお世話になるからこそ、先輩も後輩を可愛がるし、後輩も先輩や職場を大事にする文化があったと思います。でも、今は、職場環境が合わなかったり、人間関係がうまくいかなかったり、他の企業の方が給料が良いなど、職場に不満があると、職場や組織を改善しようとするのではなく、転職して自分の環境だけ改善できればいいという社会情勢になっていると感じています。

でもそれでは、日本全体で考えると、働きがいのある良い職場が減る気がします。結局、良い職場が限られているからこそ、競争社会になってしまい、そこで生き残れる能力が高い人たちや器用な人たちだけが「勝ち組」になり、競争に負けた大多数の人たちは、結局転職を繰り返して、個人も職場も不安定になり、結果的には社会全体で見ると何も良くならないと思うんですよね。転職を否定するわけではないんですけど、みんなで職場を良くしていこうという思いを大切にしたいと僕は思っています。

あとは、やっぱり教職員の多忙化の課題ですね。多忙化によって人員不足も進み、余計に多忙になり、労働環境が悪化する悪循環に陥ってしまっています。業務量が増えて忙しくなってしまうと、組合活動をする余裕がなくなったり、一緒に働いている人のことを気にかける余裕がなくなったりと、悪循環が生まれてしまいますよね。

そんな状況の中で、組合員同士が支え合える関係を維持するためには、組合を身近に感じてもらいながら、組合活動の意義を組合員同士で共有することが改めて必要だと感じています。組合員と執行部とが今まで以上につながりやすくするためのツールを探していた時にTUNAGと出会いました。これは偶然ではなく、必然だと思います!

現状に対して、取り組んでいる打ち手や大事にしているポイント

中村:組合も、今の時代に合わせて、変えるべきところは変えていかなきゃいけないと感じています。みんなで職場を良くしようという大前提は全く変わらないですし、同僚や仲間を大事にするっていう気持ちは全く変わりません。しかし、組合活動に触れる機会が少ない組合員も多くいる中で、時にオンラインを活用しながらも、反対に対面の良さを見つめなおしたり、会議の在り方をゼロベースで検討しながら、時代に合わせた活動を常にアップデートしていく必要があると感じています。

西川:あとは、組合員に「動員」という義務感を感じさせる組合ではなく、「組合って楽しそうだな」と思ってもらえるような、イベントや研修・学習会といったコンテンツもこちら側からも提案していていきたいと考えています。組合員からの意見を反映したコンテンツを形にできる組合にしていきたいなと思っています。

中村:今までの組合活動って「義務」重視だったんです。いわゆる動員ですね。どの労働組合の方も共感してもらえると思いますが、会議への参加なども、職場から何名出すという動員があるのですが、義務感が強いのが現状です。

もちろん、それは今も昔も大事なことではあるので、否定するわけではないですが、義務が行き過ぎると、PTAや自治会のように、関わりたくない、抜けたいみたいな感じになってきてしまうと思います。特に公務員の組合は、オープンショップなので、組合に加入するしないの自由がある中で、「義務」だけでは若い組合員には理解してもらえない時代になっていると感じます。

労働組合というのは義務ではなく、労働者の権利なんだということをもう一度組合員とともに学びなおして、様々な活動をシフトチェンジしていきたいと思っています。

西川:委員長もよく言っているのですが、組合=仕事ではなく、自分たちの生活の一部じゃないですか。ワークじゃなくライフであると思っています。どう組合員に伝えて、落とし込んでいくかが非常に大事だと感じています。

個人として、大事にしていること、意識していること

西川:地道に組合員との信頼関係を作っていくことが大事だなと思って、日々取り組んでいます。相談があった際には、しっかりと寄り添い、ともに伴走できる執行部でありたいと思っています。

中村:組合員とのコミュニケーションで、「言葉の使い方を変えよう」っていう話をよくしています。今までだと、本当は組合って分会が下で本部が上とかじゃないはずなんですけど、ついつい組合も執行部から何か指示が下りてきて、分会はそれを受けてやらなきゃないみたいな感じになっちゃうんですよ。

やらされ感みたいなものですね。本来は、組合活動の主役は、分会であり、各個人の組合員が主であるので、執行部っていうのは指示を下す立場じゃなく、主役である組合員を後押しすることが執行部の役割だと思います。だからこそ、組合員には、当事者意識を持ってほしいですね。

例えばですけど、今までだと加入促進に関する説明会を「加入促進説明会」とタイトルを決めて、運用していましたが、それだと、執行部が決めたことを説明するんですよね。細かいところですが、そこの前提がもう違うなと思ったので、今年からは「分会長・サポート会」っていう名前に変えたんですよ。このような、会議の名前をはじめ、言葉の使い方にはこだわりを持って、取り組みをしています。

「よろしくお願いします。やってください。」こういった号令ではなく、「一緒にやりましょう。共にがんばりましょう。」といった、言葉の語尾を変えるだけでも主役はあくまで組合員であり、現場であると、意思表示にもなるので、意識する様にしています。

“未来”への想いや実現したい組織像、ありたい姿とは

西川:私は、組合員に組合員であることを誇りに感じてほしいと思っています。同じ職場に組合員が少ないと、組合員である意味があるのかと不安に思っちゃうじゃないですか。ただ、そんな職場でも、しっかり胸を張って組合員であることを誇りに思えるようにサポートをしていきたいと思っています。

例えば、トップダウンで降りてきた指示や前例踏襲で行われる業務に対して、考えることをあきらめず、組合員が主体となって新たな提案ができるように、さまざまな「きっかけ」を執行部から情報発信していきたいと思っています。

中村:何かあったらとりあえず組合に来てもらえる状態を作っていきたいと思っています。とりあえず、組合に相談しようみたいな、身近な存在になりたいですし、なにかあったら組合がパッと頭に浮かぶ存在にしていきたいです。加えて、みんなで共有したい思いとしては、みんなで職場を良くしていこうっていう感覚を作っていきたいです。

冒頭お話しした部分にもありますが、社会全体としても転職が当たり前の時代に抗って、みんなで職場をよくしていく文化や風土を醸成していきたいと考えています。本当の意味でみんなで繋がって、みんなで職場を良くするということだけは、いつまでも忘れずに、大事にしつつ、労働組合を通して、きっかけ作りをしていきたいなと思います。

ただ、だからと言って、若い人たちは絶対責めてはいけないと思っていて、我々が伝えきれていなかったことも多いと思うので、もう一度諦めずに人任せじゃなく、みんなで良くするのが当たり前だよねっていう感覚を広げていきたいと野望を抱いています。最後に、TUNAGとはどんな存在ですか?

~西川様、中村様、ありがとうございました!~

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この記事を書いた人

「for UNION」編集長。
2020年にスタメンに新卒入社。
その後、2022年1月に労働組合向けアプリ「TUNAG for UNION」を立ち上げ、現在はマネージャーとして、事業拡大に従事。

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