労働組合の後継者不足にはどのように取り組むべき?

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労働組合の後継者不足とは

労働組合が直面している後継者不足の問題は、組合の運営において重要な役割を担う役員の交代が困難である状況を指します。多くの場合、現役の役員が退任を希望しても、適切な後任者が見つからないというジレンマに直面しています。

たとえば、職場の後輩の中に後継者になってくれないか打診しても、「組合に興味がない」「仕事面で今が重要な時期であり、組合活動に時間を割けない」といった声が出ることがあります。彼らにとって、組合役員を担うことの意義や必要性を理解することは容易ではないのです。

後継者が見つからないことで、結局同じ人が組合役員を続けることもよくあります。

他方で、役員を続けたい、あるいはより上位の組織で役員を務めたいと考える人々も、組織の再編成や専従者数の制限などの問題により、その願いを実現することが困難になっています。

他方、本人が役員継続あるいは上位組織役員となることを望んだ場合に、そうすることが困難であ る問題も抱えています。連合総合生活開発研究所編『労働組合の職場活動に関する研究委員会報告書』では、深刻な問題と組合役員たちに広く認識されていることとして、役員後継者、役員確保が困難となっている問題を挙げて、以下のように述べています。

他方、本人が役員継続あるいは上位組織役員となることを望んだ場合に、そうすることが困難である問題も抱えている。事業の再編以降の変化に対応する組合組織の再編成に伴って支部以上の組合役員専従者数が限られている状況となっているからである。急速に技術革新が進む現代にあっては、仕事の上でのブランクの影響は大きい。特に、成果重視の処遇体系の制度で働いている環境では、組合 役員としてのキャリア展望が見通せないなら、役員を継続していくことをためらう状況につながってしまう。このような背景により、組合役員のなり手不足が生じ確保することさえ難しくなることから、今後の組合役員の確保に大きな懸念がある。さらに、将来の組合役員に有望と思う人材は、会社側も高く評価している人材であり、職場での組合役員確保が難しくなる要因ともなっている。

出典:連合総合生活開発研究所編『労働組合の職場活動に関する研究委員会報告書

この引用から明らかなように、労働組合の後継者不足は、組合運営の持続可能性に影響を及ぼす深刻な問題です。組合は、この問題に対処するために、組合活動の魅力を高め、より多くのメンバーが役員職に関心を持つような取り組みが求められています。

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後継者不足を放置すると労働組合はどうなるのか

労働組合の後継者問題を放置していると、以下のような問題が生じます。

役員の任期が長期化し、マンネリ化が進む

後継者が見つからない状況が続くと、組合の役員が固定され、同じ人々が長期間にわたって役職にとどまることになります。

一部の参加者の意見のみで運営する状況を放置しておくと、その考えは偏った正確を帯び、多くの組合員の利益につながらない恐れも出てきます。

さらに、役員が自らの意志で退任したいと考えていても、適切な後継者が見つからないためにその意志を実現できない場合があります。これは、彼らのキャリアや働き方に制約を与え、モチベーションの低下や不満の蓄積につながる可能性があります。

組合員の無関心化が進み、組合活動への参加率が低下する

組合の活動が一定のパターンに固定され、新しい取り組みや変化が見られない場合、組合員の関心が薄れ、組合活動への参加率が低下する傾向があります。

組合員が組合活動に関心を失う主な理由は、活動が彼らの個人的なニーズや期待に応えていないと感じるためです。たとえば、組合が古いシステムを使い続けている、または組合員の現在の問題や関心事に対応していない場合、組合員は組合活動に価値を見出さず、他の選択肢に目を向けるようになります。

現代の忙しい仕事環境やプライベートを考慮すると、組合員が組合活動に時間を割くことのメリットを感じにくいのは理解できることです。

組合員の関心が低下すると、職場の不平や不満が埋もれたままになり、それを解決するための労働組合という役割を果たせなくなってしまいます。

会社に対する交渉・協議力が低下する

組合活動の参加者が一部のものに固定され、組合員の参加率も低くなると、組組織としての一体感も薄くなってしまいます。

本来、労働組合は、団結という理念のもと多様な職場の仲間が集まり、自由に意見を述べあい多数決で組合の方向を決めていく組織です。一部の参加者の意見のみで運営する状況を放置しておくと、その考えは偏った正確を帯び、多くの組合員の利益につながらない恐れも出てきます。このことは、過去の組合活動の例においても多くみられるのです。

また、少人数の議論からまとめてきた要求は、経営者にも軽んじられかねないということを理解する必要があります。

組合活動の弱体化により、職場環境や労働条件に関する労働組合の発言力が低下し、労働環境の改善や労働条件の向上に支障をきたす。

後継者育成には、組合活動の意義に共感を得ることが必須

組合役員の後継者育成には、労働組合に対する現役員自身の姿勢が問われます。つまり、現役員が考える組合活動の意義につき役員後継者の共感を得ることが必須となります。

人を引きつけるためには、まず組合の目的や意義を明確に伝えることが必要です。役員がこれらを理解し、情熱を持って伝えなければ、後継者は共感を抱くことはできません。

無理やり説得することは、後継者を育成する上で有効ではありません。

そこで、組合役員として次の点を振り返ってみましょう。

  • これまでの活動は何を目指してきたのか
  • 活動の結果、組織や自身にどのような影響を与えたか
  • なぜ組合役員に立候補し、熱心に活動してきたのか

これの経験をもとに、相手の意見も受け入れながら説得しましょう。この姿勢がなければ、後継者を動かすことはできません。

また、組合役員になることの魅力を周知することも重要です。組合役員になれば、経営陣との懇談に参加したり、他部門の人とネットワークを築いたり、他社の労働組合と交流し社外ネットワークを広げたり、様々な勉強会やセミナーに参加して知識を身につけたり、コミュニケーションスキルを磨く機会が提供されます。

これにより、組合役員は仲間のためだけでなく、自身のキャリアアップにも繋がることを理解してもらえるでしょう。

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この記事を書いた人

筑波大学国際総合学類卒業。2023年にスタメンに入社し、人事労務・情報セキュリティに関するデジタルマーケティングを担当。 現在は「for UNION」の立ち上げメンバーとしてメディア企画に従事。

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