労働組合が「オワコン」と言われてしまう理由とは?

近年、労働組合は「オワコン」と揶揄されることがあります。かつては労働者の権利を守る重要な役割を担っていましたが、現代社会においてその存在意義が問われています。

この記事では、労働組合が「オワコン」と言われる理由について、歴史や現状、そして未来への展望を交えながらわかりやすく解説していきます。

目次

労働組合の歴史と現状

まず、労働組合が「オワコン」と言われる背景を理解するために、その歴史と現状について確認していきましょう。

労働組合は、産業革命による資本主義の進展とともに、劣悪な労働環境から労働者の権利を守るために生まれました。長時間労働や低賃金、安全衛生の不備など、企業と労働者の間には大きな力格差が存在し、労働者は団結することで待遇改善を求めてきました。

労働組合の目的は、賃金引上げ、労働時間短縮、休暇取得の促進など労働条件の改善、安全衛生対策の強化や職場環境の改善など労働環境の改善、そして解雇や配置転換からの保護、差別やハラスメントへの対応など労働者の権利の擁護です。

労働組合は、労働者と経営者の間を取り持つ「橋渡し役」として、団体交渉、団体行動、労働相談、共済事業、政治活動といった役割と機能を担っています。団体交渉では、賃金や労働時間などの労働条件について、労働者側と経営者側が交渉を行い、労働組合は労働者の意見を集約し、経営側と交渉を行います。団体交渉が成立しない場合、労働組合は、ストライキやサボタージュなどの団体行動を起こす権利を有しています。その他、労働問題に関する相談窓口を設け、組合員からの相談に応じたり、組合員向けに、共済保険や融資などのサービスを提供しています。また、労働者の権利を守るための政策を提言したり、支持する政党や候補者を支援したりする政治活動も行っています。

高度経済成長期には、日本の労働組合は大きな影響力を持っていました。春闘と呼ばれる賃上げ交渉は毎年恒例行事となり、労働組合は労働条件の改善に大きく貢献しました。しかし、近年は経済のグローバル化や雇用形態の多様化、労働組合への関心の低さなどから、労働組合の組織率が低下傾向にあり、その影響力は低下しています。

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労働組合が「オワコン」と言われる理由

労働組合は、現代社会において様々な課題に直面しており、「オワコン」と揶揄されることがあります。ここでは、その主な理由について詳しく見ていきましょう。

かつては、多くの企業が終身雇用や年功序列を前提とした雇用システムを採用していました。しかし、近年は成果主義の導入や非正規雇用の増加など、雇用環境は大きく変化しています。このような変化に伴い、労働者のニーズも多様化しており、従来型の労働組合の活動は、現代の労働者のニーズに合なくなってきているとの指摘があります。例えば、従来の労働組合は、正社員中心の活動になりがちで、多様な働き方をする労働者のニーズに対応しきれていないという指摘や、企業側も、労働組合との対立を避け、従業員満足度向上のための取り組みを強化するようになっていること、そして労働基準法など、労働者の権利を守る法律が整備されたことで、労働組合の役割が薄れてきたという見方もあります。

労働組合の組織率は低下傾向にあり、企業に対する交渉力は弱体化しています。

厚生労働省が実施した「令和5年労働組合基礎調査」の結果によると、令和5年6月30日時点での労働組合および労働組合員の状況は以下の通りです。

  • 単一労働組合の総数は22,789
  • 日本全国の雇用者総数は約6,100万人であり、その中で労働組合に所属している人の数は約990万人
  • 労働組合の組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は16.3%で、これは前年を下回り過去最低の水準

これらのデータから明らかなように、労働組合および労働組合員の数は減少傾向にあります。

また、労働組合離れが進んでいる若年層の取り込みも課題となっており、労働組合の存在感低下に拍車をかけています。労働組合の影響力低下により、賃上げ交渉などが難航し、労働条件の改善が停滞する可能性や、労働組合の存在感が薄れることで、労働者の権利意識が低下し、不当な扱いを受けても泣き寝入りしてしまうケースが増える可能性も懸念されています。

若い世代は、従来の労働組合の活動内容や組織運営に魅力を感じず、加入をためらう傾向にあります。インターネットやSNSの普及により、情報収集や発信が容易になった現代において、労働組合の情報公開の不足や、時代に合わせた活動のアピール不足が指摘されています。若い世代は、個人の自由や自己実現を重視する傾向があり、集団行動を伴う労働組合の活動に魅力を感じないことがあったり、インターネットやSNSで簡単に情報収集ができるようになり、労働組合に加入しなくても、必要な情報を得られるようになっていること、そして労働組合に対して、「古臭い」「硬い」などのネガティブなイメージを持つ若い世代も少なくありません。

労働組合の今後の課題と展望

厳しい状況に置かれている労働組合ですが、その存在意義を改めて見直し、未来に向けて変革していく必要があります。

労働組合が再び労働者の支持を得るためには、時代に合わせた活動内容や組織運営への転換が求められます。例えば、ホームページやSNSなどを活用し、活動内容や成果を積極的に発信していくことや、若手組合員が中心となって活動できる環境を整え、組織の活性化を図る必要があります。また、パートや派遣社員など、非正規雇用労働者の加入促進や、それぞれの働き方に合わせた支援体制の構築も必要です。

労働環境の変化や労働者のニーズの多様化に対応するため、従来の枠にとらわれない新たな役割や機能を模索する必要があります。例えば、育児や介護と仕事の両立支援、休暇取得の促進など、労働者が働きやすい環境作りを支援したり、変化の激しい社会に対応できるよう、労働者のスキルアップを支援するセミナーや研修などを実施したり、労働組合が中心となり、労働者同士の交流を促進することで、孤独や孤立を防ぎ、働きがいを高めることも考えられます。

労働組合は、労働者の権利を守るという原点に立ち返りつつ、時代の変化に対応していくことで、未来の労働社会においても重要な役割を果たすことができると考えられます。 正社員だけでなく、非正規雇用労働者やフリーランスなど、様々な働き方をする人々にとって、よりどころとなる存在を目指したり、企業と協力し、働き方改革や人材育成など、社会全体の労働環境改善に積極的に取り組む姿勢が求められます。また、労働組合が、地域社会との連携を強化することで、労働者と社会全体の幸福度向上に貢献することが期待されます。

おわりに

労働組合は、「オワコン」と揶揄されることもありますが、労働者の権利を守り、より良い労働環境を実現するために、今後も重要な役割を担っていくことが期待されます。

そのためには、労働組合自身が時代に合わせた変化を遂げ、労働者にとって魅力的な組織へと生まれ変わっていくことが不可欠です。

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この記事を書いた人

筑波大学国際総合学類卒業。2023年にスタメンに入社し、人事労務・情報セキュリティに関するデジタルマーケティングを担当。 現在は「for UNION」の立ち上げメンバーとしてメディア企画に従事。

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