ユニオンの団体交渉の特徴は?過去に行われた具体的な事例も紹介

労働組合がない会社の労働者にとって、ユニオンは重要な存在です。ユニオンも労働組合であることに変わりはありませんが、一般的な労働組合とは異なる部分もあります。ユニオンの団体交渉の特徴を理解し、ユニオンについて深く知るために役立てましょう。

目次

ユニオンとは

日本の労働組合は企業別組合が主流ですが、業種や職種を問わず加入できる地域合同労組も存在し、その代表的な形態がユニオンです。まずは、社外組合の代表格であるユニオンの概要を解説します。

会社の外で結成された労働組合

ユニオンとは、会社の枠組みを超えて組織された労働組合のことです。合同労組とも呼ばれます。ユニオンの主な特徴は次の通りです。

  • 労働者が1人でも加入できる
  • 中小企業の労働者が多い
  • 勤務先や雇用形態に関係なく誰でも加入できる
  • 地域単位で組織されている

会社に労働組合がない場合や組合が十分に機能していない場合、賃金や労働条件などに問題を抱えている労働者がユニオンに加入すれば、一定のサポートを受けられます。一般的な労働組合のように、団体交渉で労働者の要求を伝えることも可能です。

ユニオンが存在する理由

労働組合は労働者の雇用確保や労働条件の維持向上を目的として結成される組織です。労働者個人が会社と対等に渡り合うのは困難ですが、労働者が団結すれば会社と対等な立場になれるため、要求を伝えやすくなります。

しかし、現在は労働組合の組織率が低く、特に中小企業は労働組合がないケースも多いのが実情です。また、自社の組合が正社員中心である場合、パートやアルバイトなどの非正規労働者は組合に加入しづらいでしょう。

このような状況から労働者を守るために誕生したのがユニオンです。経営者の力が強い中小企業でも、ユニオンに加入すれば交渉力が高まり、個人の問題解決に結びつきやすくなります。

ユニオンの主な活動内容

ユニオンの主な活動内容は、労働者の権利保護と労働条件の改善です。具体的には、賃金交渉や労働環境の改善要求、不当解雇やハラスメントといった労働問題解決のサポートを行います。

ユニオンと企業別組合の違いの一つに、組合員が抱える悩みの切迫度合いが挙げられるでしょう。企業別組合の場合は「組合に加入すればメリットがあるから」「周囲が加入しているから」という理由で加入する人も少なくありません。

一方、ユニオンに加入する人の多くは、今まさに悩みを抱えている人です。そのため、ユニオンの活動内容は、個々の労働者の労働問題を個別に解決する活動が自然と多くなります。

ユニオンの団体交渉の特徴

ユニオンには会社の垣根を超えた労働者が集まるため、団体交渉はさまざまな会社を相手に行うことになります。ユニオンの団体交渉の特徴を見ていきましょう。

ユニオンの団体交渉の流れ

団体交渉とは、労働者の問題解決を図るための労使間交渉のことです。さまざまなテーマについて意見交換を行う労使協議と異なり、団体交渉では要求に対して何らかの結論を出すことが前提となります。

ユニオンが団体交渉を行う場合も、基本的には企業別組合のケースと同じです。まずはユニオンが会社に団体交渉を申し入れ、予備折衝や準備を経て実際の交渉を行い、妥結または決裂をもって団体交渉が終了するという流れです。

企業別組合の場合、団体交渉の相手は常に自社となりますが、ユニオンの団体交渉の相手は労働者ごとに異なります。そのため、準備段階での会社のリサーチが特に重要な作業となります。

従業員本人も交渉に出席するのが一般的

ユニオンの団体交渉では個々の労働者が抱える個別の問題がテーマになるため、交渉には従業員本人も出席するのが一般的です。通常はユニオンの役員1~2名と一緒に参加することになります。

労働者にとっては、自分が勤務する会社の代表者と直接対面して交渉を行うため、精神的な負担を感じることもあります。

ユニオンの団体交渉の具体的な事例

ユニオンの団体交渉で実際に扱われた問題の例をまとめました。

  • 度重なる退職勧奨により退職を強要された
  • 育児休業中に不利益な取り扱いを受けた
  • 有期雇用従業員が雇い止めの撤回を求めている
  • うつ病に罹患した労働者が労災保険の申請を希望している
  • 整理解雇対象者が退職金の加算を求めている

団体交渉で折り合いがつかない場合、労働委員会への救済申立てが行われることもあります。

会社はユニオンの団体交渉の申し入れを拒否できる?

労働組合から団体交渉の申し入れがあった場合、会社は原則として正当な理由がなければこれを拒否できません。ユニオンも労働組合であることに変わりはないため、会社はユニオンの団体交渉の申し入れに応じる必要があります。

ただし、ユニオンが労働組合法上の労働組合でない場合や、要求内容が義務的団交事項(労働条件や待遇などに関する事項)ではない場合は、会社が団体交渉を拒否できる可能性もあります。

ユニオンの団体交渉の特徴を理解しよう

労働者が1人でも加入できるユニオンの団体交渉では、個別に抱える問題が団体交渉のテーマになるケースが多くなります。交渉には従業員本人も出席するのが一般的です。

ユニオンには他にも企業別組合と異なる部分が多いため、特徴を正しく知り、ユニオンについての理解を深めておきましょう。

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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