労働組合に入れない人はどんな人?組合がない場合の選択肢も紹介
労働組合には誰でも入れるわけではありません。加入資格のない人が組合に所属している場合、組合が法律で認められる保護を受けられなくなる可能性があります。そのため、加入資格について正しい知識を持つことが大切です。労働組合に入れない人はどのような人なのかを詳しく解説します。
労働組合に入れない人は?
組合員の範囲は基本的に組合が自由に決められますが、労働組合法では特定の人を組合に入れない人として規定しています。まずは、どのような人が加入できないのかを理解しておきましょう。
会社の役員や上級管理職
労働組合法第2条第1号では、「使用者の利益を代表する者(利益代表者)」を労働組合に加入できない人と定めています。具体的には次に挙げるような人です。
- 会社の役員(取締役・監査役・理事)
- 会社の人事に直接関わる人(人事・労務・総務の部長クラス以上)
- 労働条件や雇用制度の改変に直接関わる人
会社の人事に直接関わる人のことを、上級管理職と呼ぶこともあります。上級管理職以外の管理職は労働組合に加入することが可能です。
憲法第28条では労働三権を保障しており、労働者は労働組合を結成できる権利があります。管理職も労働者であることには変わりないため、上級管理職でなければ労働組合に参加できるのです。
その他の利益代表者
前項で紹介した利益代表者以外にも、労働組合に加入できないとされている人がいます。主な該当者を併せて押さえておきましょう。
- 人事・労働関係の秘密情報に接する機会がある人
- 採用・昇進・異動の直接的な決定権を持つ人
- 従業員に対する取締権限を持つ人
- 秘書
- 工場の支配人
これらの人も利益代表者と見なされるため、組合への加入を希望してきた場合は注意が必要です。
出典:使用者の利益を代表する者
組合規約で加入不可となっている人
組合員の範囲は組合が自由に決められるため、組合規約で加入不可となっている人は組合に参加できません。例えば、組合によっては管理職を全員加入NGとしているケースもあります。
なお、上級管理職であっても、労働組合に加入すること自体は可能です。上級管理職がいる組合が法律上の労働組合として認められていないだけの話であり、上級管理職も労働者であるため、憲法にのっとれば労働組合に加入する権利はあります。
組合に入れない人が加入するとどうなる?
労働組合法はなぜ組合に入れない人を規定しているのでしょうか。利益代表者が法律で参加を認められない理由や、労働組合が法律で保護される条件を見ていきましょう。
組合が法律の保護を受けられなくなる
労働組合法第2条では、労働組合に自主性を求めています。労働組合とは労働者が結成する組織であり、会社と対等の立場でなければならないためです。
労働組合と会社が対等の立場でない場合、労働組合は会社の言いなりになってしまう恐れがあります。会社の言いなりになっている労働組合が会社とまともに交渉することは不可能です。
利益代表者が労働組合に加入していると、会社側の人間と労働者が混在している状況になり、組合が正常な運営を行えなくなるリスクが生じます。この状態を法律は良しとせず、法律で保護できないと判断しているのです。
法適合組合として認められる条件
労働組合が法律から守られるための条件は、労働組合法第2条で定められています。主な条件は次の通りです。
- 労働者が主体となって運営している
- 労働者が自主的に運営している
- 労働条件の維持や改善を主な目的としている
一定の条件を満たした労働組合は、労働組合法により以下のような保護を受けられます。
- 正当な争議行為については刑事上の責任を問われない(第1条第2項)
- 会社の不当労働行為から保護される(第7条)
- 正当な争議行為については民事上の責任を問われない(第8条)
- 労使間で労働協約を締結できる(第14条)
法適合組合として認められないケースも確認しておきましょう。
- 利益代表者が加入している
- 会社から経済的な支援を受けている
- 政治・社会運動を主な目的としている
- 共済・福利事業のみを目的としている
労働組合がないために入れない人の選択肢
労働組合に入れない人の中には、会社に労働組合がないために入れないケースもあります。このような状況にある人には、どのような選択肢があるのでしょうか。
ユニオンに加入する
ユニオンとは、働き先に関係なく個人で参加できる労働組合のことで、さまざまな企業の従業員が加盟できるため合同労組とも呼ばれます。業種や地域ごとに組織されているケースが多く、全国に存在しています。
アルバイトやパートでもユニオンへの参加は可能です。一般的な労働組合と同じく、ユニオンも労働組合法の保護を受けられます。
ユニオンは社外にあるため、会社とのしがらみを気にせず活動することが可能です。一方、自分が直接関係しない団体交渉への参加義務が生じることもあります。
自分で労働組合をつくる
労働組合をつくること自体は、それほど難しいことではありません。従業員が最低2人集まれば、誰でも労働組合をつくれます。役所への届け出や会社の承認は不要です。
憲法第28条では労働者の団結権・団体交渉権・団体行動権を認めており、労働条件の改善を目指して労働者が団結することは、基本的人権の一つとして憲法が保障しています。
労働組合のつくり方
労働組合のつくり方は法律で定められているわけではなく、一般的には以下に挙げる流れでつくっていきます。
- 結成準備会を発足する(会社の情報収集、組合加入の呼びかけ、組合規約案の作成など)
- 結成大会を開催する(準備段階の経過報告、三役の選出、結成宣言など)
- 労働組合を立ち上げたことを会社に通知する
労働組合を立ち上げたら組合員の要求を取りまとめ、団体交渉などの活動を始めることになります。
労働組合に入れない人のよくある疑問
労働組合の運営中にはさまざまな疑問が生じます。以下に挙げる疑問と回答を確認し、組合運営に役立てましょう。
労働組合への加入中に退職した場合は?
労働組合法の労働者には失業者も含まれると解釈されています。労働基準法とは異なる解釈です。労働組合への加入中に退職した場合、そのことだけで組合員資格が消滅するわけではありません。
ただし、会社の従業員しか加入できないことが組合規約で定められているなら、退職した時点で脱退しなければならなくなるでしょう。
労働組合への加入中に昇進した場合は?
組合員が会社で管理職に昇進した場合、上級管理職になったのなら抜けてもらうのが一般的です。加入したままの状態になっていると、トラブルが発生した場合に組合が法律の保護を受けられません。
組合員の昇進で問題になりやすいのが、「会社がその人を組合から抜けさせるために昇進させたのではないか」ということです。
その人が組合にとって重要な人であれば、脱退することで少なからず影響を受けるでしょう。会社が労働組合に影響力を持とうとすることは、不当労働行為として労働組合法第7条で禁止されています。
ただし、労働者には等しく昇進する権利があり、会社や組合が昇進を不当に制限することはできません。組合側としては会社の不当労働行為を疑いたくなるケースもあるでしょうが、労使間での取り決めがない限り、会社側の一方的な人事ともいえないのです。
労働組合に入れない人について理解しよう
労働組合に入れない人の代表例は、会社の役員や上級管理職などの利益代表者です。労働組合に利益代表者がいる場合、トラブルが発生しても組合は法律から保護されません。
組織運営をスムーズに進めるためにも、労働組合に入れない人について理解を深めておきましょう。