労働組合の団体交渉における妥結のポイントは?妥結までの流れも解説

労働組合が会社と交渉する場合は、妥結を勝ち取ることが最大の目標になります。納得感の高い内容で妥結するためには、ポイントを押さえた交渉を行うことが重要です。団体交渉で妥結するために組合が意識すべきポイントを解説します。
妥結に至るまでの団体交渉の流れ
団体交渉はどのように進められていくのか、まずは大まかな流れを紹介します。まだ交渉に携わったことがない担当者は、団体交渉の流れをイメージする際の参考にしましょう。
会社に団体交渉を申し入れる
労働組合が団体交渉を行うためには、会社に団体交渉を申し入れる必要があります。希望する日程や交渉の目的などを書面に起こし、会社に提出して申し入れるのが一般的です。
労働組合から団体交渉の申し入れを受けた会社は、原則として正当な理由なく団体交渉を拒否することはできません。ただし、交渉内容によっては会社が交渉に応じる義務がないケースもあります。
日時・場所・出席者を調整する
労使間で交渉を行うことが決まったら、次に交渉の日時・場所・出席者を決めます。労働組合からは組合の代表者が、会社からは経営者や人事担当者が出席するのが通例です。
労働組合と会社のそれぞれに事情があるため、日時や場所は双方が協力して調整する必要があります。スムーズな交渉を行うためにも、準備段階からお互いに意識を共有し、双方にとって無理のない調整を行うことが大切です。
交渉後に妥結書を締結する
交渉を経て合意に達したら、労使間で妥結書を締結します。妥結書は一般的に労働協約と呼ばれているものです。双方の署名または記名押印があれば効力が発生します。
団体交渉後に締結される妥結書の内容は非常に強い効力を持ち、就業規則や、個々の労働契約よりも優先されるルールです。妥結書の締結を目指すのが、労働組合における重要なテーマの一つとなります。
なお、労使間で議論を尽くしても妥協点を見いだせない場合は、争議行為や法的手続きに発展するケースもあります。
妥結するために組合が意識すべきポイント
会社との団体交渉で妥結に至るためには、ポイントを押さえて行動することが大切です。妥結するために組合が意識すべき五つのポイントを見ていきましょう。
現実的に妥結を目指せる要求を検討する
団体交渉で労働組合の要求を通すためには、会社が実現可能だと思われる目標を設定することが重要です。いきなり高い要求を突き付けても、会社にとって実現が困難な内容では妥結には至らないでしょう。
例えば、賃金の値上げを要求する場合は、値上げ幅の根拠を示せなければなりません。「地域や業界の水準と比較して自社の賃金はこれだけ低い」「経営状況を考慮するとこのくらいの値上げはできるのではないか」などを示す必要があります。
組合員に要求案を周知する
団体交渉で会社に要求する内容が決まったら、組合員に要求案を周知しましょう。要求案に対する組合員の声を集めておけば、要求内容が組合の総意であることをアピールできます。
なお、要求案を決める際は、できるだけ多くの組合員の希望に応えるものにするのが理想です。一般的には代議員が参加する議決機関で決めることになりますが、組合員の声も拾えるような工夫を考えるのもよいでしょう。
情報収集と分析を徹底する
説得力のある要求をつくるためには、客観的なデータに基づく根拠の提示が必須です。公的な統計資料や業界団体の調査結果を活用し、賃金水準や労働時間などの基礎情報を集めましょう。
自社の財務情報や人事関連の統計を調べることも重要です。売上高や営業利益の推移、離職率の変化などを示せれば、要求の妥当性の裏付けにつながります。
また組合員向けのアンケートを実施し、実態調査結果として示すことで、要求の必要性を訴えられるでしょう。
交渉中は冷静に対応する
会社との交渉がうまくいかない場合でも、交渉中は感情的になってはいけません。感情が先立つと冷静な判断ができなくなり、ますます交渉が難航してしまいます。
交渉中は常に冷静な対応を意識し、相手の話も理解しようとする姿勢を持つことが大切です。経営者や人事担当の感情に訴えたい場合は、自分の感情をぶつけるのではなく、要求の背景にある組合員のニーズや懸念を示しましょう。
組合員の数を増やす
組合員の数は交渉力の源泉です。組合員を増やして組織率を高めれば、要求実現の可能性も高まります。
厚生労働省の資料によると、組合加入への抵抗感が生じる理由で最も多いのは「労働組合や組合活動に興味がないから」です。以下、「加入するメリットが見いだせないから」「周囲に加入者がいないから」と続きます。
勧誘活動では組合に加入するメリットを具体的に示す必要があります。労働組合に興味がない人にも情報が行き渡るよう、社内メールや社内報などを活用して組合側から積極的にアプローチすることも大切です。
団体交渉で妥結を勝ち取ろう
団体交渉で要求を通すためには、現実的に妥結を目指せる内容を検討しましょう。具体的なデータや資料を用いて説得力を高めることも重要です。
感情的な対立を避けながら建設的な話し合いを進めていけば、妥協点を見い出しやすくなります。お互いの立場を尊重し、それぞれに利益が生じる、納得感のある妥結を目指しましょう。