労働組合の団結権とは?知っておきたい労働三権と労働三法を解説

労働組合の三役として活動していると、組合員勧誘の資料作成や説明会での登壇機会が多くあります。その際、「団結権とは何ですか?」「労働組合にはどのような権利がありますか?」といった質問を受けることもあるでしょう。本記事では、団結権を含む労働三権と労働三法について、労働組合の立場から詳しく解説します。
労働三権(労働基本権)とは
労働三権は、日本国憲法第28条で保障された労働者の基本的な権利です。働く人が対等な立場で使用者と向き合うための重要な権利として位置づけられています。ここでは、3つの権利それぞれについて詳しく見ていきましょう。
労働組合をつくる権利「団結権」
団結権とは、労働者が労働組合を結成し、組合に加入する権利のことです。この権利により、労働者は個人では対抗できない使用者に対して、集団の力で立ち向かうことができます。
団結権の具体的な内容は以下の通りです。
- 組合結成の自由:労働者が自由に労働組合を設立できます
- 組合加入の自由:労働者が組合への加入・脱退を自由に決められます
- 組合運営の自主性:使用者の介入を受けずに組合を運営できます
- 組合活動の保障:正当な組合活動は法的に保護されます
労働者が団体で使用者と交渉できる権利「団体交渉権」
団体交渉権は、労働組合が使用者と対等な立場で労働条件について交渉する権利です。個人では難しい交渉も、組合として行うことで効果的な結果を得られます。
団体交渉権の特徴は以下の通りです。
- 対等な交渉:使用者は正当な理由なく団体交渉を拒否できません
- 誠実交渉義務:使用者には誠意をもって交渉に応じる義務があります
- 代表権の尊重:組合が組合員を代表して交渉できます
- 合意の効力:交渉で合意した内容は法的な拘束力を持ちます
労働者が団結して行動を起こせる権利「団体行動権」
団体行動権は、労働組合が団体交渉を有利に進めるために、ストライキなどの争議行為を行う権利です。争議権とも呼ばれ、労働三権の中でも特に強力な権利とされています。
団体行動権に関連する主な権利は以下の通りです。
- 争議権:ストライキや職場放棄などの争議行為を行う権利
- 組合活動権:職場での組合活動を行う権利
- 情報開示要求権:交渉に必要な情報の開示を求める権利
ただし、団体行動権の行使は慎重に判断する必要があります。まずは団体交渉での解決を目指し、最後の手段として考えることが重要でしょう。
労働者を守る法律「労働三法」とは
労働三法は、労働者の権利を具体的に保障し、労使関係を適切に調整するための法律です。労働三権を実効性のあるものにするため、詳細な規定が設けられています。
ここでは、それぞれの法律の内容と役割について解説します。
労働条件の最低基準を定める「労働基準法」
労働基準法は、すべての労働者が守られるべき最低限の労働条件を定めた法律です。主な内容には「1日8時間・週40時間以内」の労働時間制限、年次有給休暇の付与、最低賃金の保障、安全衛生対策の義務などが含まれます。
違反があれば、労働基準監督署へ相談することで是正を求めることができます。たとえば、未払い残業代や有給取得の妨害、長時間労働の常態化といった問題も、法に基づき改善を図ることが可能です。
労働者が安心して働ける環境を整えるための土台となる法律といえるでしょう。
労働組合の権利を保障する「労働組合法」
労働組合法は、労働者が自発的に労働組合を結成し、団体交渉を行う権利を保障する法律です。
この法律では、組合員であることを理由に不利益な扱いをすることや、正当な団体交渉を拒否する行為などを「不当労働行為」として禁止しています。
労働組合法は、労働者が対等な立場で企業と交渉し、働く環境を改善していくための大切な権利を守る法律です。
労使間の労働争議の調整手続きを定める「労働関係調整法」
労働関係調整法は、労使間の対立や争議を未然に防ぎ、円満な解決を図るための制度を整えた法律です。
調整方法には「あっせん」「調停」「仲裁」があり、それぞれに役割と特徴があります。
あっせんや調停は合意を前提とした話し合い型ですが、仲裁は最終決定に従う義務がある点で異なります。
たとえば、団体交渉が難航した場合でも、労働委員会のあっせんを利用することで、双方が納得できる合意に至るケースもあります。
冷静かつ建設的に課題を解決するためにも、組合としてこうした制度を積極的に活用することが欠かせません。
労働三権と労働三法について理解を深めよう
労働三権と労働三法は、労働者の権利を守る重要な制度です。労働組合の三役として、これらの知識を正確に理解し、組合員への説明や組合活動に活用することが求められています。
これらの制度を効果的に活用するためには、日頃からの学習と情報共有が重要です。組合員勧誘の際も、「労働組合には法的な根拠がある」「憲法で保障された権利を行使している」と明確に伝えることで、組合加入の意義を理解してもらえるでしょう。
また、組合活動を行う際は、常に法的な正当性を意識することが大切です。適切な手続きを踏み、法的根拠に基づいた活動を行うことで、会社側も真摯に対応せざるを得ない状況となります。