介護休業とはどのような制度?基礎知識や労働組合への相談例を紹介

介護休業は、労働者が家族を介護するために取得できる休業のことです。さまざまな相談が想定されるため、組合の担当者はしっかりと知識を得ておきましょう。介護休業の基礎知識を解説し、労働組合への相談例も紹介します。

目次

介護休業とは

介護休業とはどのような制度なのでしょうか。介護休暇との違いも併せて、まずは介護休業の基本を見ていきましょう。

家族を介護するために取得できる休業制度

介護休業とは、労働者が家族を中長期にわたり介護する必要がある場合に、仕事を休むことができる制度です。「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」により規定されています。

家族が要介護状態にある労働者は、介護休業を取得することが可能です。労働者の配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫が対象家族となります。

従業員から介護休業取得の申し出があった場合、企業は従業員に対し、休業の開始予定日と終了予定日などを速やかに書面などで通知する必要があります。通知書の様式に決まりはありません。

出典:介護休業について|介護休業制度特設サイト|厚生労働省

出典:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 | e-Gov 法令検索

介護休業を取得できる日数

介護休業は対象家族1人あたり3回まで取得できます。取得日数の上限は93日です。1回の取得期間についての定めはなく、93日連続で取得したり、30日・30日・33日と分けて休んだりできます。

育児・介護休業法の法改正前は、上限93日の休業を1回しか取得できませんでした。しかし、休業を取るタイミングが難しかったため、法改正後は最大3回まで分割できるようになっています。

介護休業の取得要件

介護休業は正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員といった有期雇用契約の労働者も取得できます。また、性別で区別されることはありません。

ただし、休業開始予定日から起算して93日を経過する日までに労働契約が終了することが明らかな場合は、介護休業を取得できません。

介護休業と介護休暇の違い

介護休暇とは、要介護状態にある家族がいる場合に、家族1人あたり年5日まで休暇を取得できる制度です。1日単位だけでなく、時間単位でも取得できます。

介護休業の場合は労働者が会社に書面で申し出る必要がありますが、介護休暇の場合は口頭による申し出も可能です。また、介護休暇には給付金制度はありませんが、会社が独自に有給とすることは可能です。

介護休業は介護のための中長期的な休みを必要とする場合の制度、介護休暇は突発的な介護が必要となった場合の制度といえるでしょう。

介護休業に関する労働組合への相談例

介護休業について組合員からの相談が予想される代表的な内容を紹介します。制度をきちんと理解した上で適切に対応しましょう。

会社によって対象者が違うのはなぜ?

会社は特定の労働者を労使協定で介護休業の対象外にできます。労使協定で対象外にできるのは、以下に該当する労働者です。

  • 入社1年未満
  • 申し出から93日以内に雇用期間が終了する
  • 1週間の所定労働日数が2日以下

労使協定を締結していない場合、上記の条件に当てはまる場合も介護休業を取得できるため、会社によって介護休業の対象者が異なるケースはあり得ます。

介護休業中に給料は支給される?

介護休業中は仕事をしないため給料はもらえません。ただし、雇用保険の被保険者で一定の条件を満たしている場合、休業開始時の賃金日額の67%相当額にあたる介護休業給付金の支給を受けられます。給付金を受け取るためには、事業主を通じてハローワークへ申請する必要があります。

なお、介護休業では社会保険料の免除規定は設けられていないため、休業中も健康保険料や厚生年金保険料の負担が発生します。

介護期間中の働き方を変えることは可能?

会社は介護が必要な従業員に対し、介護休業の取得以外にも次のような措置を講じることが義務づけられています。

  • 所定労働時間を短縮する
  • 始業・就業時間を柔軟に変更する
  • フレックスタイム制を適用する

したがって、従業員が介護期間中の働き方を状況に応じて変えることは可能です。

出典:育児・介護休業法のあらまし 15 事業主が講ずべき措置(所定労働時間の短縮等)|厚生労働省

介護休業を理由に不当な扱いを受けるのは違法?

「介護休業を取得しようとしたら会社から退職を強要された」「介護休業後の給料を減らされた」といった内容も、組合員からよくある相談例です。

介護休業を理由に会社が従業員を不当に扱うことは禁じられています。次のような扱いをされた場合、無効や違法を主張することが可能です。

  • 解雇・雇い止め
  • 契約の更新回数の引き下げ
  • 退職の強要
  • 正規雇用から非正規雇用への変更
  • 労働時間の短縮
  • 減給・降格
  • 不利益な配置転換や評価

介護休業について理解を深めよう

介護休業は家族の介護が必要な労働者に認められている制度です。取得日数や取得条件が決まっているため、組合の担当者は内容をしっかりと理解しておきましょう。

また、会社は労使協定で介護休業の取得条件を制限できます。今後、会社と労使協定を結ぶ場合は、労働者が休業を取得しやすい内容にすることも大切です。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

目次