労働組合の活動内容は?オルグ活動やUSR活動についても詳しく解説

労働組合は、労働条件の改善や企業活動における労働者の地位向上を目的に、さまざまな活動を行っています。その中でも、オルグ活動やUSR活動は労働組合の重要な取り組みの一つです。本記事では、これらを含む労働組合の具体的な活動内容について詳しく解説します。
労働組合の存在意義
労働組合の活動内容を理解するには、まずその存在意義を知ることが大切です。ここでは、労働組合の目的やメリット、さらに法律で保護される条件について見ていきましょう。
労働組合の目的
労働組合は、労働者が主体となって自主的に運営する組織であり、その主な目的は労働条件の維持・改善と労働者の地位向上です。労働者が会社と対等な立場で交渉し、より良い労働環境を求めていくために、憲法第28条によって労働組合を結成する権利が保障されています。
労働組合は、個々の労働者では解決が難しい問題を、組織として会社と交渉することで解決を目指します。賃金や労働時間、休日、安全衛生など、様々な労働条件について会社と交渉し、労働者の権利を守ります。
また、労働組合は企業にとっても重要な存在です。労働組合は、現場の声を経営層に伝え、職場の問題点を改善する役割を担います。労働組合を通じて、従業員の不満や要望を吸い上げ、労使間のコミュニケーションを円滑にすることで、企業全体の生産性向上にも貢献します。
労働組合が法律で守られるための条件
一定の要件を満たした労働組合は法適合組合と呼ばれ、労働組合法により保護されます。法的保護の主な内容は次の通りです。
- 会社の不当な行為に対抗できる(労働組合法第7条)
- 正当な行為については刑事上の責任を免除される(労働組合法第1条第2項)
- 正当な争議行為については民事上の責任を免除される(労働組合法第8条)
また、労働組合法第4条により、法適合組合は企業との間に労働協約を締結できます。労働協約は就業規則や労働契約に優先し、非常に強い効力を持つ取り決めです。
法適合組合が法的保護を受けるためには、管轄の労働委員会による資格審査を受ける必要があります。
労働組合のメリット
労働組合がある企業では、組合員や労使関係に次のようなメリットがもたらされます。
- 組合員の不満が会社に伝わりやすくなり、風通しが良くなる
- 賃金や労働条件が話し合いで改善できる
- 不当解雇や安易なリストラが減り、安心して働ける
- 労働トラブルに巻き込まれた際、専門家のサポートを受けられる
- 評価の公平性が高まり、評価に対して納得感を持てる
- 経営に関する情報を得やすくなる
また、労働組合に加入することで社外とのつながりも生まれるため、他の企業や業界の人と交流する機会を得られます。
労働組合の主な活動内容
労働組合の基本的な取り組みは、組合員がより働きやすくなるための活動です。組合で行われている具体的な活動内容を紹介します。
従業員の意見や要望を会社に伝える
労働組合の重要な活動の一つに、組合員の意見や要望を会社に伝えることが挙げられます。従業員が個別に会社へ意見や要望を伝えるのは難しい場合でも、労働組合があれば組合員の声を集約し、会社に対して組織として意見を伝えることができます。
また、会社が就業規則を変更する際には、労働者の過半数で組織する労働組合(過半数組合)が存在する場合、その意見を聴かなければなりません。このルールは、労働基準法第90条で規定されています。
さらに、会社が労働者にとって不利な規則を変更しようとする場合でも、過半数組合があることで会社に対する牽制力が働きます。
不当解雇やハラスメントに対応する
不当解雇やハラスメントといった、従業員が直面する深刻な問題にも労働組合が対応します。労働組合は企業と直接話し合い、問題解決を図るだけでなく、必要に応じて法的手段に訴えることもあります。
会社から不利益を受けた従業員が相談できる相手がいない場合、問題を一人で抱え込むことが多いです。
社内に適切な相談窓口がなく、上司や同僚が見て見ぬふりをすることもあるでしょう。こうした状況が続けば、最終的には離職につながりかねません。
しかし、労働組合があれば、相談窓口として機能し、従業員の悩みに寄り添いながら適切な対応を進めることができます。
賃金や労働条件の改善を求めて交渉する
賃金や労働条件に対する不満は、多くの労働者が抱える代表的な課題です。これを改善するための活動の一つが、労働組合による団体交渉です。
団体交渉は、労働組合が会社に要求書を提出し、会社がそれに応じる形で実施されます。労働組合法第7条第2項により、会社は正当な理由なく団体交渉を拒否することはできません。
団体交渉では、日時や場所を労使間で事前に決定し、話し合いを進めます。しかし、議論を尽くしても妥協点が見つからない場合には、ストライキなどの争議行為や法的手続きに発展することもあります。
組織の発展と強化を目指す「オルグ活動」
労働組合の重要な活動の一つに、オルグ活動と呼ばれるものがあります。どのような活動を指すのか、意味や具体的な内容を押さえておきましょう。
労働組合のオルグ活動とは
「オーガナイゼーション(organization)」や「オーガナイズ(organize)」を略したオルグは、組織化や組織強化を意味する言葉です。
労働組合におけるオルグ活動は、組織の維持や発展を図るための具体的な取り組み全般を指します。この活動には、新たな組合員の獲得だけでなく、既存の組合員の教育や意識向上も含まれます。
オルグ活動の本質的な目的は、労働組合を労働者にとって「必要な存在」と認識させることです。結果、労働組合の影響力を強化し、会社との交渉力を高めることが可能になります。また、組織の強化によって、労働条件や職場環境の改善に向けた活動がより効果的に行えるようになります。
オルグ活動の具体的な内容
労働組合のオルグ活動では、具体的に次のようなことを行います。
- 組合への加入促進(新入社員向けのオリエンテーションや従業員との個別面談を行う)
- 組合活動の重要性や成果の啓発(ニュースレターや掲示板などを活用する)
- 教育・研修プログラムの提供(組合員のスキルアップや意識向上を図る)
- 地域コミュニティや他団体との連携(地域活動への参加やイベントの共同実施を行う)
組合への勧誘活動では、組合の必要性やメリットを伝えることが重要です。また、加入中の組合員に対しても、組合活動の重要性を理解させて積極的な参加を促す必要があります。
労働組合の存在価値を高める「USR活動」
近年はさまざまなシーンで労働組合のあり方を考える機会が増えています。組合の存在価値を高める活動がUSR活動です。USRとは何か、USR活動の具体例と併せて解説します。
USRの意味
USR(Union Social Responsibility)とは、労働組合の社会的責任を意味する言葉です。企業の社会的責任を指すCSR(Corporation Social Responsibility)から派生しています。
労働組合は企業内組織として、労働者の立場から企業経営を監視・チェックする責任を持つだけでなく、社会に貢献する組織としての役割も担っています。具体的には、組合の人材や資源を活用して地域や社会の課題解決に取り組むことが重要です。
単に労働者の権利や要求を実現するだけでなく、社会全体の利益に貢献する活動を通じて、労働組合の価値を高めることが求められています。
USR活動の具体例
JTBグループ労働組合連合会は、USR活動の一環として、公益社団法人日本ユネスコ協会連盟が展開する世界寺子屋運動への取り組みを進めています。
世界寺子屋運動とは、教育の機会に恵まれない人たちに教育の機会を提供する運動です。募金や書き損じハガキの回収を支援につなげています。
JTBグループ労働組合連合会のUSR活動のポイントは、旅行会社としての社会における存在意義を考慮し、「旅」や「観光資源」をキーワードに活動内容を選んでいることです。
労働組合の活動内容を把握しよう
労働組合は、労働者がより働きやすくなるよう、さまざまな活動を行っています。組織としての影響力を高めるために、オルグ活動に取り組むことも重要です。
また、労働組合の社会的責任を果たすべく、USR活動も視野に入れる必要があります。労働組合の活動内容を把握し、組織運営に役立てていきましょう。