労働組合が労働相談の窓口として機能する意義とは。窓口設置のポイントも

組合を立ち上げたばかりだと、まだ整備が行き届いておらず、労働相談の窓口として機能しているのか不安になるのではないでしょうか。なぜ労働組合が労働相談を適切に受ける必要があるのかを把握して、労働問題の受け皿になるための取り組みを実践しましょう。
労働組合が労働相談の窓口になる意義とは
労働組合は、春闘や団体交渉・ストライキなどで、使用者に労働者の要求を伝える団体というイメージがあるかもしれません。ただその前段階として、労働者相談の窓口としても機能する必要があります。その意義は何なのでしょうか。
労働組合は労働問題の一次対応ができる存在
労働組合は賃金未払い・雇用条件への不満・ハラスメント被害など、多様な問題を受け止められる団体です。労働者にとっては、弁護士や行政に訴える前の「相談窓口」として気軽に活用できるでしょう。
さらに労働組合には、団体交渉や団体行動を通じて組合員個人の声を社内改善につなげる権利が保障されています。憲法第28条で団体交渉権を含む労働三権を保障し、労働組合法第1条第1項・第7条第2号がこの権利を具現化している形です。
労働組合は単なる一次相談窓口としてだけでなく、労働相談の内容によっては解決に向けて動ける存在であることが分かります。
参考:労働組合法 第1条第1項・第7条第2号|e-Gov法令検索
弁護士が対応しない「法令違反以外の不満」も相談できる
弁護士の仕事は、法律に基づいた裁判や交渉の対応です。法令違反に該当しない労働相談には、基本的に対応できません。一方で労働組合は、法令違反だけでなく「法的には問題ないが改善してほしいこと」の相談にも乗れます。
労働組合法第2条によれば、労働組合は「労働条件の維持や改善、経済的地位向上を図ることを主な目的として組織する団体(またはその連合団体)」です。交渉できる内容は法令違反に限りません。
労働組合は、労働基準監督署と比べても身近な存在です。労働基準監督署への申告の基本である「証拠を集めての申告」ではなく、「まずは相談」というスタンスで労働者が向き合えることも、労働組合が労働相談の窓口として機能する意義といえるでしょう。
労働組合が労働相談を受ける体制づくりの基本
結成して間もない労働組合は、労働相談を受けられる体制がまだできていないケースも少なくありません。労働組合が労働相談を受けるために必要な基本対応を、三つ紹介します。
誰が対応するかを明確にしておく
組合員が労働問題について相談できる状態にするためには、まず組合内で専任窓口担当者を決め、役割を定義しておく必要があります。誰が何に対応するのかが明確になっていれば、組合員からの信頼も得やすくなるはずです。
不在時の代替対応者や、連絡フローも事前に決めておきましょう。担当者不在で労働相談を受けられないと、せっかく勇気を出して相談した組合員を落胆させてしまいます。
労働組合向けのアプリ「TUNAG for UNION」なら、アプリ内で相談窓口の設置が可能です。担当者がいなかったり変わったりして、相談を受けられないトラブルが減るでしょう。
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記録・対応フローを標準化する
複数人で労働相談の窓口を担当する場合、人によって記録・対応の仕方や質が違うと、外部連携・労使交渉に必要な記録の不足や組合員の不信感につながります。組合内でマニュアルを作成・共有して、しっかりと内容を確認した上で、対応に当たってもらわなければなりません。
スマホで使えるTUNAG for UNIONは、組合内のあらゆる情報共有をサポートします。マニュアルもスマホからチェックできるため、担当者は時間や場所を問わず記録・対応のフローを見られます。
対応範囲と限界を組合内で共有しておく
労働組合には、対応できる労働相談とできない労働相談があります。特に企業別労働組合のような単位労働組合の場合、外部への連携はほぼ不可欠といってもよいでしょう。
例えばパワハラに対して、団体交渉でハラスメント研修の実施を要求することは可能でも、パワハラに対する損害賠償請求の代理はできません。労働審判の対応は弁護士の仕事です。また、労働組合は使用者に直接是正勧告をすることもできません。是正勧告は、行政機関である労働基準監督署が実施します。
労働裁判対応や是正勧告のほか、メンタルヘルスなど特定分野の知識が不足していて対応できない問題もあるでしょう。自組合ができることとできないことの線引きを明確にすれば、できないことを安請け合いして信頼を損なうリスクを避けられます。
受けられる労働相談と受けられない労働相談を明確に決めたら、対応範囲を組合内で共有することが重要です。窓口担当者の負担感軽減や、組合員からの信頼向上につながります。
労働相談がしやすい組合になるための工夫
労働者が労働相談をしやすい組合と聞いて、どのような状態を思い浮かべるでしょうか。まず相談できる窓口があることが明確に分かり、アクセスしやすい状態が必要です。具体的に何をすればよいのかを解説します。
相談窓口の存在と利用方法を組合員に周知する
労働組合が労働相談を受けられる体制を整えていても、組合員がその存在を知らなければ活用できません。機関誌や掲示板など、組合員に届く媒体でしっかりと周知する必要があります。
単に労働相談を受けられることだけを周知しても、組合員は具体的なイメージを持ちにくいでしょう。窓口となる担当者や役割、相談のフローも併せて伝えることで、より相談しやすくなります。
SNSやチャットなど若手に届くツールも活用する
労働組合の伝統的な機関誌や紙の掲示板では、デジタルデバイスを中心に情報を収集している若手には届きにくい可能性があります。企業内組合の場合、組合に関する情報発信に社内インフラの利用を認められているなら社内SNSや社内チャットなども活用しましょう。
社内インフラが使えない状態であれば、TUNAG for UNIONのようなアプリを活用する方法があります。アプリ内で手軽に情報発信できるため、若手への情報伝達に苦労している組合におすすめです。
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相談できる組合は信頼と組織力を高める
労働相談を受ける一次窓口として、労働者にとって身近な存在が労働組合です。相談の内容によっては、団体交渉を通じて解決につなげることもできます。ただ、組合内で対応できない労働相談があるのも事実です。
担当者や相談フローなど基本的な体制づくりはもちろん、あらかじめ受けられる労働相談と受けられない労働相談の線引きをして組合内に周知しなければなりません。現実的に対応できる範囲の労働相談を受ける体制がつくれれば、組合員の信頼を得られます。
組合への信頼は、組織力・交渉力の源泉です。まだ結成して間もない労働組合なら、適切に労働相談を受ける仕組みづくりが今後を左右するでしょう。