労働組合の求心力向上のためにすべきこと。具体的な取り組みを紹介

労働組合の求心力が下がっている大きな理由は、賃上げを重視した組合活動に偏っていることです。労働者のニーズも多様化しているため、組合活動に対するアプローチを変える必要があります。労働組合の求心力向上のためにすべきことを解説します。
労働組合の求心力が低下している大きな理由
組合員からの支持を得られない理由にはいくつかありますが、最も重視すべきことは組合活動が賃上げ中心の活動になっていることです。まずは、労働組合の求心力が低下している大きな理由について見ていきましょう。
賃上げ中心の活動は求心力向上につながりにくい
かつての労働組合は、賃上げを軸とした活動で組合員からの支持を得ていました。近年も春闘では高水準の妥結が相次ぎ、労働組合の賃上げに対する活動は一定の成果を上げているようにも見えます。
しかし、中小企業が大企業のような賃上げを実現することは難しいのが実情です。実際に春闘では大企業と中小企業の格差が問題視されており、大企業における積極的な賃上げの中小企業への波及は限定的です。
大企業と中小企業の間で賃上げ幅の格差が生じる理由には、中小企業の方が労働組合の交渉力が弱いことや、そもそも賃上げを実施できるだけの体力がない企業が多いことが挙げられます。
ニュースで見る賃金上昇の勢いが自社にまで反映されていない現状を嘆き、「労働組合には期待できない」と考える労働者が増えるのも自然な流れであるといえるでしょう。
いまだに賃上げを重視している組合が多い
賃上げ重視の活動を進めている労働組合が多いことは、データからも読み取れます。
連合総合生活開発研究所が公表する資料によると、「労働組合の活動を賃上げ中心にすべき」と考えているリーダーの割合は約44.2%です。「賃上げ以外の課題に重心を移すべき」と考えているリーダーの割合18.4%を大きく上回っています。
多くの労働者にとって、賃上げは組合に期待する大きなテーマの一つであるため、賃上げ実現を掲げれば一時的には加入者も増えるでしょう。しかし、期待通りの結果を得られない状況が続けば、組合員は離れていってしまいます。
出典:労働組合の「未来」を創る P10 | 連合総合生活開発研究所
組合員の多様化するニーズに応えることが重要
近年は労働者の働き方やキャリア形成に対する考え方が多様化しています。従来までの画一的なルートに沿った道を歩むのではなく、労働者それぞれが自分の価値観に基づいた理想を抱いているのです。
例えば、現在の若年層は自分らしさを尊重する傾向が強く、賃金が高いことよりキャリアアップの機会や成長できる環境を求めているといわれています。ワークライフバランスを重視する人が多いことも特徴です。
労働組合としてもこのことを強く意識し、組合員の多様化するニーズに応える活動にシフトする必要があるでしょう。個々のニーズを把握し、多様な価値観に対応していくことが、求心力の回復につながっていきます。
求心力向上のために労働組合が取り組むべき対策
組合員からの支持を集める組織にするためには、どのような取り組みを進めればよいのでしょうか。労働組合の求心力向上のためにすべきことをまとめました。
組合のビジョンを明確にする
労働組合が求心力を回復するためには、組合のビジョンを明確にすることが重要です。組合員に寄り添った、働きやすい職場環境の構築を目指していることを周知しましょう。
なぜそのビジョンを掲げるのか、背景を説明するのも効果的です。組合員がはっきりとした目的意識を持つようになり、一人ひとりのモチベーションが上がりやすくなります。
労働組合のビジョンは、組合員や会社の将来の理想像です。組合主導で一方的に活動を進めるのではなく、組合員に寄り添った形で活動を展開していくことが重要です。
組合員の意見に耳を傾ける
組合員の多様化するニーズを把握するためには、組合員の意見に耳を傾ける必要があります。どのような未来を描いているのか、組合に何を求めているのかを、個々の組合員と腹を割って話し合いましょう。
組合活動には本音と建前の両面がありますが、それらを組合員にあえて伝えることで、信頼関係の構築につながります。
組合員ごとにフィードバックを行う
組合員との信頼関係を築くためには、組合員ごとにフィードバックを行うことも大切です。個々のニーズに対して実際にアクションを行ったこと、その結果どのようになったかということを、個別に話し合いましょう。
アクションの結果に関係なく、重要なのは組合としてしっかりと対応したことを組合員に伝えることです。「自分のために組合が行動してくれた」と思ってもらえれば、組合員からの信頼が高まり、組織の求心力も向上するでしょう。
労働組合の求心力向上につながる取り組みを
労働組合の求心力が低下している大きな理由は、賃上げ実現に向けた活動が中心になっていることです。労働者のニーズは多様化しており、賃上げ要求の活動だけでは組合員が離れていってしまいます。
今後の組合活動においては、組合員の多様化するニーズに応えることが重要です。本記事で紹介した取り組みを進め、労働組合の求心力向上につなげましょう。