労働組合における義務とは?組合員の義務と権利や加入の義務を解説

労働組合の規約には、組合員が持つ権利や果たすべき義務が明記されています。しかし、労働組合への加入や団体交渉に関する義務について、具体的な内容を理解していない方も多いのではないでしょうか。本記事では、労働組合における義務について詳しく解説し、労働環境を理解するための知識を提供します。

目次

労働組合における組合員の義務と権利

労働組合がその目標を達成し、組織として円滑に機能するためには、各組合員が主体的に活動に参加することが求められます。一人ひとりの協力と努力が、組合全体の成果を生み出す鍵となります。

同時に、労働組合は民主的な運営を基本としているため、組合員には一定の義務を果たす責任も伴います。権利と義務は表裏一体であり、義務を全うすることで、組合員としての権利を最大限に享受できるのです。

本章では、組合規約に盛り込むべき組合員の義務と権利について詳しく見ていきます。規約の作成や見直しを行う際の参考にしてください。

組合員の義務

組合員が労働組合において負うべき義務には、次のようなものがあります。

  • 規約・規則や大会の決議に従う
  • 役員に選出されたら引き受ける
  • 会議や行事に出席する
  • 組合費を支払う
  • 組合の内部情報を外部に漏らさない
  • 組合員間で言動を抑圧しない

組合規約には上記を盛り込み、平等に義務を負うことを明記しましょう。

組合員の権利

労働組合で組合員が有する権利の例は以下の通りです。

  • 会議や会合に出席し発言できる
  • 組合が主催するイベントや活動に参加できる
  • 役員の選挙に参加できる
  • 役員に選出される
  • 組合の財務情報のに関する書類の閲覧を求められる
  • 正当な手続きを経ずに懲戒や制裁を受けない

全ての組合員が上記の権利を平等に持つことを、組合規約に明記する必要があります。

労働組合に加入する義務はある?

組合への加入を検討している人に「組合加入は義務なの?」と聞かれたら、どのように答えればよいのでしょうか。原則的な考え方と例外を解説します。

加入や脱退は労働者の自由

労働組合は労働者が任意で結成する組織です。労働者なら誰でも労働組合をつくれるのと同様、加入するかどうかも労働者が自由に決められます。

脱退に関する組合側の強制も認められていません。労働者が組合を抜けたいと思えば、いつでも自由に組合を脱退できます。過去の判例により、「組合の承認がなければ脱退を認めない」と規約に盛り込んでも、その規約は無効です。

出典:裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

ユニオンショップ制の場合は例外

労働組合における加入の強制の例外が、労使間で締結されるユニオンショップ制です。ユニオンショップ制とは、会社に雇用される全ての労働者に組合加入を義務付ける制度です。

ユニオンショップ制がある会社に採用されると、強制的に労働組合に加入することになります。また、労働組合を脱退したい場合は、会社も退職しなければなりません。

ユニオンショップ制には、組合の組織力強化や従業員の労働条件の向上、労使関係の安定化といったメリットがあります。一方、従業員の選択を制限したり自由を侵害したりすることが、ユニオンショップ制のデメリットです。

なお、日本ではユニオンショップ制を法律で禁止していますが、一定の条件を満たせば労働協約により類似した制度を設けられます。ユニオンショップについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も読んでみてください。

労働組合のユニオンショップ制とは?メリット・デメリットを解説 | for UNION(フォーユニオン)

義務的団交事項について

労働組合が団体交渉を行う際は、義務的団交事項を理解しておく必要があります。義務的団交事項とは何か、団体交渉における注意点と併せて見ていきましょう。

義務的団交事項とは

団体交渉では労働組合側が要求書を提出し、会社側に詳細な要求内容を示すのが一般的です。団体交渉における要求内容は、次の2つに大別されます。

  • 義務的団交事項:会社が交渉に対応しなければならない要求
  • 任意的団交次項:会社が交渉に応じなくてもよい要求

義務的団交事項に該当するのは次の通りです。

  • 労働条件やその他の待遇に関する事項:報酬・労働時間・休息、安全衛生・災害補償など
  • 団体的労使関係の運営に関する事項:団体交渉や争議行為の際の手続き・ルール、組合活動に関するルールなど

労働条件やその他の待遇に関する事項については、会社が処分可能な内容であれば該当するとされています。

団体交渉における注意点

義務的団交事項に該当しない項目(任意的団交事項)は、会社側に対応の義務がないため、交渉の申し入れが無駄足になる可能性があります。

任意的団交次項に認定されやすい項目には次のようなものがあります。

  • 会社が対処できない事項(会社の権限を超えた内容や実現不可能な要求)
  • 経営・生産・施設管理権に関する事項(会社の経営判断や施設の管理運営に直接関わる内容)
  • 他の労働者のプライバシーを侵害しかねない事項(個人情報やプライバシーに関わる要求)

また、原則として非組合員についての労働条件は義務的団交事項に該当しません。ただし、結果的に組合員にも影響を及ぼす内容であれば、非組合員に関することでも義務的団交事項として扱えるケースがあります。

労働組合における義務を理解しよう

労働組合に加入している人には、組合活動における権利と義務があります。組織運営をスムーズに進めるためにも、組合規約に権利と義務を明記することが重要です。

また、加入・脱退の義務や義務的団交事項についても理解しておく必要があります。労働組合に関してどのような義務があるのかを理解し、組合運営に生かしていきましょう。

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この記事を書いた人

筑波大学国際総合学類卒業。2023年にスタメンに入社し、人事労務・情報セキュリティに関するデジタルマーケティングを担当。 現在は「for UNION」の立ち上げメンバーとしてメディア企画に従事。

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