労働組合の規約を見直すには?法的な必須項目や任意項目を整理

自分の労働組合の規約が古く、見直すべきか迷っていませんか。規約が労働組合にとってなぜ必要なのかとともに、含めるべき内容を、法的な必須項目・実務上含めた方がよい項目に分けて解説します。
労働組合の規約が果たす基本的な役割
労働組合の規約の見直しが初めてなら、まず規約が組合にとってどのような役割を果たすのかを把握しておきましょう。法的な義務・実務上の必要性の両面から整理します。
規約は組合活動を正当化するための土台
労働組合として法的に認められるには、規約に基づく民主的運営が不可欠です。労働組合法第2条・第5条には、組合の設立要件や規約の必要項目が定められています。
これらを満たしていないと、団体交渉やストライキの正当性を主張する根拠を持てません。規約がない組合に関与することで従業員が被る不利益が正当化されるわけではありませんが、労働組合として正当な交渉ができないということです。
適切な項目が記載された規約は、労働組合が使用者と正当な交渉をするため、法的に欠かせません。
未整備の規約は信頼や交渉力を損なう
労働組合の規約が法令違反のものでは、労働委員会から「労働組合としての資格なし」と判断されてしまいます。
また、現状に即していない古い規約のままだと、交渉時の根拠資料としての説得力を欠いて信頼を損なう可能性が否めません。組合員からの不満や、会社側とのトラブルにつながることもあり得ます。
労働組合の規約に盛り込むべき内容とは?
労働組合の土台ともいえる規約には、法的に定められた必須項目と、任意に含める項目があります。それぞれのどのような内容が必要なのでしょうか。
労働組合法に定められた必須9項目
労働組合法第5条第2項には、労働組合の規約に記載されなければならない必須項目が9個列挙されています。各項目は以下の通りです。
- 労働組合の名称
- 主な事務所の所在地
- 連合団体である労働組合以外の労働組合(単位労働組合)の組合員は、その労働組合の全ての問題に参与する権利と均等の取り扱いを受ける権利を持つこと
- 誰でもどのような場合でも、人種や宗教・性別・門地・身分によって組合員の資格を奪われないこと
- 単位労働組合の役員は、組合員の直接無記名投票により選挙されること、連合団体である労働組合や全国的規模の労働組合の役員は、単位労働組合の組合員またはその組合員の直接無記名投票で選挙された代議員の直接無記名投票によって選挙されること
- 総会は少なくとも毎年1回は開催すること
- 全ての財源やその使用用途・主要な寄附者の氏名・現在の経理状況を示す会計報告は、組合員に委嘱された、職業的に資格がある会計監査人によって正確だと認められた証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表されること
- ストライキ(同盟罷業)は、組合員または組合員の直接無記名投票で選挙された代議員が直接無記名投票をして、過半数によって決定しなければ開始しないこと
- 単位労働組合の規約は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと、連合団体である労働組合や全国的規模の労働組合の規約は、単位労働組合の組合員またはその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員が直接無記名投票をして、過半数の支持を得なければ改正しないこと
これらを盛り込まない規約は、労働委員会の資格審査を通らず、法的保護が受けられません。
組合の実情に応じて任意項目の追加も
労働組合の規約は、労働組合法の第5条に定められた項目だけ盛り込めばよいわけではありません。以下のような、運営をスムーズにするためのルールを任意に記載しておくと実務的なメリットがあります。
- 労働組合の事業内容
- 組合員の範囲
- 事業の規定
不当労働行為の救済申し立てなど労働組合の資格審査が必要になったとき、必須項目のほかに「組合員の範囲」についても書類が必要になります。規約に追加しておくと書類作成が楽になるでしょう。
労働組合の規約を見直す際のポイント
古い労働組合の規約を見直す場合、新たに組合規約を作るのとは違った難しさがあります。スムーズに見直しを進めるためのポイントも押さえておきましょう。
必須項目が含まれているかチェックする
作られてしばらく経過している規約を見直す際は、まず現行の規約が、労働組合法に定められた9項目を抜け漏れなく含んでいるかチェックしましょう。不足があるなら追加しないと、労働組合法の保護を受けられなくなってしまいます。
実際の運用と規約の内容(総会の実施や会計報告など)を照らし合わせて、規約の通りに運営されているかについても確認が必要です。規約内容と運用にズレがあれば、運用を見直さなければなりません。
組合員の理解を得ながら見直しを進める
組合規約の改正には、企業別労働組合の場合は直接無記名投票で「過半数」の承認が必要です(連合のような単一組合は要件が異なる。労働組合法第5条第2項第9号より)。
企業別労働組合が規約を改正するには、組合員の理解を得なければなりません。改正のプロセスでは、目的・内容・影響を平易に説明して質問を受け付け、理解と納得を得られる資料や説明の場を用意しましょう。
規約を見直して労働組合の運営をスムーズに
労働組合の規約は、法律によって必須項目が定められている重要な書類です。労働組合法に明示されている必須9項目に抜け漏れがあると、組合活動の正当性が認められません。
古い規約をそのまま放置していて、実態と乖離している状態も問題です。交渉の際に使用者や組合員の信頼を損なう要素となる可能性があります。自組合の規約がずっと見直されず放置されているなら、必須項目や現状を考慮した任意項目を整理して、改正案をまとめましょう。