労働組合はハラスメントに立ち向かえる組織。対策の必要性やポイントとは

近年よく耳にする「ハラスメント」に対して、労働組合は適切に対応できているでしょうか。ハラスメントが重大問題である理由を知れば、組合として立ち向かう必要性が分かるはずです。労働組合がハラスメントにどう向き合うべきかを解説します。

目次

労働組合がハラスメントを放置してはいけない理由

職場におけるハラスメントとは、特定の人物や複数人のグループ・組織全体などが加害者となり、被害者の就業環境を害す行動や状態全般を指す言葉です。パワハラやセクハラといった主要なハラスメントは、厚生労働省のポータルサイトでも定義されています。

労働組合は、ハラスメント問題を見過ごしてはいけません。労働時間や賃金に直接関係しないハラスメントでも、組合が放置すべきでない理由を解説します。

参考:ハラスメントの定義|ハラスメント基本情報|あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト-

ハラスメントは労働者の尊厳を奪う深刻な行為

ハラスメントは被害者となる労働者の尊厳を奪い、心身に大きな影響をもたらします。深刻な場合は精神的なダメージを負い、被害者が離職や休職に至ったり職場不信を引き起こしたりしかねません。

結果として、職場の生産性や人間関係全体の悪化につながります。企業全体のコンプライアンス問題にも発展するリスクがある行為が、ハラスメントです。

人手不足や労働環境の悪化も背景に

特にパワハラの場合、人手不足による過重労働が背景になり得ます。管理職の負担が増えて精神的な余裕がなくなると、言動が攻撃的になり、指導とハラスメントの境界があいまいになってしまう可能性があるでしょう。

中堅層の不在などにより、教育体制が機能不全に陥っている現場も少なくありません。また、人手不足によって労働環境の整備が後手に回ることで、ハラスメントが常態化しやすいという問題もあります。

さらに労働環境の悪化で職場全体のコミュニケーションが不足すると、ハラスメントが増えやすくなります。労働組合はハラスメントそのものについての対策はもちろん、背景にある人手不足への対処も企業に求めていかなければなりません。

労働組合の役割は労働環境の改善を訴えること

労働組合法にも記載がある通り、労働組合は労働条件の維持や改善を図るための組織です。ハラスメントに苦しむ労働者の声を代弁できる立場にあります。

労働者を代表して就業規則や組織体制の見直しを要求できる存在が、労働組合です。単なる相談窓口としてだけではなく、制度改善の主導者としての機能が期待されています。

参考:労働組合法 第2条・第6条

労働組合ができるハラスメント対策

ハラスメント対策を使用者に求めるのは、今や労働組合の義務ともいえます。組合員からハラスメントが起きていると声が上がったとき、組合は具体的に何をすればよいのでしょうか。

被害者の声を聞き取って事実関係を把握する

ハラスメント対策では対応のスピードが重要です。早期のヒアリングと正しい記録が、被害者の保護につながります。被害者本人の訴えはもちろん、周囲の証言や状況証拠も確認し、まず組合内での判断材料としましょう。

第三者的な視点で事実関係を整理することで、本当にハラスメントが起きていた際に放置されるリスクを減らせます。逆に本人の訴えが過剰反応だった場合も、使用者と無用なトラブルを起こさないよう、組合として助言をすることが可能です。

防止策を労使で協議して労働協約に盛り込む

ハラスメントが発生したときは、対応方針や防止策を労働組合と使用者とが話し合って合意し、労働協約として文書化しましょう。これにより、全社的に守られる「ハラスメントの公式ルール」として根付かせられます。

対応の方針や防止策を協議するときは、今後またハラスメントが起きたときの相談対応の流れや再発防止措置などを具体的に取り決めます。もし使用者が協議に応じなかった場合は、春闘などでの要求項目に組み入れ、会社側との合意形成を図るのも一つの方法です。

啓発活動で組合の意識改革を進める

労働組合がハラスメント問題に対して取るべき行動は、使用者への働きかけだけではありません。組合内でハラスメントについての知識を広めるのも、組合としての重要な仕事です。機関紙や研修・掲示物などを通じて、継続的にハラスメントに関する情報を発信しましょう。

組合員自身が「してはならない言動」「相談の重要性」を理解する環境をつくることが、ハラスメントそのものの発生や発生時の放置を防ぐことにつながります。役員も加害者になり得るという意識も重要です。

TUNAG for UNIONで現場主導のハラスメント対策を

労働組合がハラスメント問題に立ち向かうに当たって、使えるツールの一つに労働組合向けのアプリ「TUNAG for UNION」があります。具体策の例として、TUNAG for UNIONを使ったハラスメント対策を見てみましょう。

アプリ内に相談窓口を設置する

TUNAG for UNIONは労働組合の情報共有を促せるほか、相談窓口の設置もアプリ内で可能です。職場に窓口がない、職場内は相談できないといった組合員が頼れる場所となります。

拠点を超えて相談できるルートがあることで、ハラスメントを受けている組合員の安心感につながるのもメリットです。

対応事例を共有して他拠点の課題解決に生かす

TUNAG for UNIONでは、労働組合に関するあらゆる情報を多様な手段で共有できます。

実際に功を奏した改善策や注意喚起の事例を各拠点の組合員がアプリ内で共有すれば、複数拠点での予防策に役立つでしょう。組合役員間で学びを共有し、組合としての対応力を底上げすることも可能です。

アンケートで組合員のリアルな声を可視化する

TUNAG for UNIONには、アンケート機能も用意されています。ハラスメントに関する実態の把握に役立つはずです。

上司の言動や職場の雰囲気に関する定期的な調査によって、課題を早期に発見できて迅速な対応につながります。結果を数値や傾向として可視化すれば、使用者に改善を求める際の説得力も高まるでしょう。

労働組合向けアプリ – TUNAG for UNION|情報共有、申請手続きをペーパーレス化

ハラスメント対策を講じて「頼れる労働組合」へ

ハラスメントは賃金や労働時間の問題に比べて、軽視されてしまう傾向があるかもしれません。しかし、ハラスメントはその種類を問わず、労働者の心身に深刻な影響を及ぼしかねない重大問題です。

組合員から頼られる労働組合であるために、ハラスメント問題は見過ごせません。本人からの被害報告を受けたら、速やかに事実関係を確認した上で、証拠を集めて使用者に改善の交渉を申し入れましょう。

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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