労働時間内に組合活動はできる?認められるケースや注意点を解説

就業日の日中に組合活動を実施する必要が出てきたとき、まず確認したいのが「組合活動は労働時間内でも認められるのか」という点です。労働時間内に組合活動ができるかどうかを、判例や法律をベースに分かりやすく解説します。

目次

労働時間内の組合活動は認められるか

団体交渉の日時設定などに際して、組合活動を労働時間内に行ってもよいのか気になる書記長もいるでしょう。労働時間内の組合活動が認められるのかどうかを、判例や法律を基に整理します。

原則として認められない

労働組合の組合活動は、労働時間外なら自由ですが、労働時間内には原則として認められていません。厚生労働省の通達でも組合活動の自由について、他人の権利を尊重する義務があり、無制限ではないとされています。

過去の判例の一つ「大成観光事件」では、労働時間内の組合活動が不当とされました。労働時間内(勤務時間中)に組合活動としてリボンを着用したことを、正当な行為ではないと判断されています。

参考:・労働協約の締結促進について(◆昭和25年05月13日労発第157号)「組合活動の自由」|厚生労働省
参考:大成観光事件|労働基準判例検索-全情報

例外的に認められるケースも

組合活動は原則として労働時間中には認められませんが、一定の条件を満たしていれば認められるケースがあります。

例えば過去の判例「佐野第一交通(解雇)事件」では、以下2つの事実をもって、労働時間内の組合活動が労務提供義務違反ではないと判断されています。

  • 労働協約で、労働時間内の活動がやむを得ない場合、事前に会社に申し出て承認を得れば労務提供義務を免除すると規定されている
  • 上記に基づいて申し出をしたが、会社側が合理的な理由なく承認しなかった

労働組合法第7条第3号でも、労働者が労働時間中において時間または賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを、使用者が許すことを妨げるものではないと定められています。

参考:佐野第一交通(解雇)事件|労働基準判例検索-全情報
参考:労働組合法第7条第3号|e-Gov法令検索

労働時間内の組合活動に関する注意点

労働時間内の組合活動には制限があります。改めて注意したいポイントと、会社側も法的責任を問われないために知っておきたい「不当労働行為」の可能性について解説します。

無許可での活動は「業務妨害」と見なされることがある

労働時間内の活動が認められなかった判例、認められた判例どちらからも、会社に許可を得ず労働時間内に組合活動を行うことは不当だと分かります。内容によっては、業務妨害と見なされる可能性もゼロではありません。

業務妨害とは、刑法第233条・第234条に規定される違法行為です。虚偽情報を流布したり人を欺いたりして、業務を妨害することを指します。

組合活動に当てはめれば、労働環境に不満があるからといって、その企業の誹謗中傷となるような行きすぎた内容のビラをまくなどが例です。労働環境の改善は労使交渉で改善を求めるべきものであり、社会や顧客の信頼を失わせる内容のビラまきは適切な活動といえません。

参考:刑法 第233条・第234条|e-Gov法令検索

会社側の対応が不当労働行為となる可能性がある

従業員が労働時間内に組合活動に参加したとき、その時間についても会社が賃金を支払うと、労働組合法第7条第3号で禁止されている不当労働行為に該当する可能性があります。

同号で認められているのは「協議または交渉」です。それ以外の活動(例えば学習会など)を実施した時間に対しても賃金を支払うと、労働組合の運営を経済的に援助したと見なされる危険があります。

在籍専従の従業員に対しての賃金支払いについて、経費援助に当たるかどうかは見解が分かれているようです。ただ国としては、「労使双方が協定を結んで納得していても不当労働行為に該当する」という立場を取っています。

参考:労働組合法第7条第3号|e-Gov法令検索
参考:結果一覧(第13編 労政 第1章 労政 労働組合法)「労働組合法及び労働関係調整法の一部を改正する法律の施行について」PDF「六 労働協約について」(5)|厚生労働省

労働時間内に組合活動の必要があるときの対応

組合活動をどうしても労働時間内に実施する必要が出てきたとき、労働組合が取るべき対応を整理しましょう。基本的な事項とともに、使用者(会社)側に配慮した対応も解説します。

あらかじめ会社側の合意を取る

組合活動は基本的に労働時間外に行うべきですが、差し迫った必要性がある場合は会社に申し出て承認してもらう必要があります。協議や交渉であれば、会社が認めた場合その時間の賃金をカットされずに活動することも可能です。

都度申し出るのが不便な場合は、労働協約で組合活動に関する条項を設けましょう。労使で協議の上、可能な範囲を明確にしておくとスムーズです。

会社側にも法的な根拠を提示する

中小企業をはじめ、顧問弁護士や社労士・法務部を持たない組織では、組合活動について法的な知識が十分でないことがあります。正当な組合活動を不当と見なされて裁判に発展したり、会社側が組合活動に従事していた時間にも賃金を支払って不当労働行為に該当したりと、無用なトラブルが発生しかねません。

トラブルを起こさず必要な組合活動を労働時間内に実施するには、労働組合側から労働組合法や判例を根拠として協議しましょう。法律や判例という客観的な根拠を示しながら対話を進めることで、労働時間内の組合活動が認められやすくなります。

労働時間内の組合活動の制限を知って円滑な対応を

労働時間は本来業務に従事すべき時間であり、原則として組合活動の実施は認められません。無許可で労働時間内に組合活動に当たるのは不当です。内容によっては業務妨害の罪に問われるリスクもあります。

ただ、あらかじめ交渉や協議を労働時間内に行うことを会社から許可されている場合は例外です。法的根拠を提示しながら労使で話し合い、どうしても必要なときに労働時間でも組合活動ができる状態を整えておきましょう。

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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