第二組合とは何か?既存の労働組合との違いや、主な特徴を解説

企業内に複数の労働組合が存在する場合、初めの組合に対して、後から結成されたものは「第二組合」と呼ばれます。第二組合が生まれる背景や既存の労働組合との違い、企業の第二組合に対する対応を含めて、基本的なところを理解しておきましょう。

目次

第二組合の存在意義

大企業の場合、社内に複数の労働組合を抱えているケースがあり、後発のものは「第二組合」と呼ばれています。まずは第二組合の存在意義について、既存の労働組合との違いを通じて理解しておきましょう。

既存の労働組合との違い

既存の労働組合と第二組合の大きな違いは、設立の背景にあります。既存の労働組合は、長年の歴史と伝統を持つことが多く、労働者の権利を守るために定期的に活動しています。 

一方、第二組合は一般的な労働組合と同様、労働者の権利を守るために設立される組織ですが、既存の組合を脱退した者や、未加入だった者により結成されるのが一般的です。既存の組合に不満を持つ労働者によって結成されることが多く、従来の組織の足りない部分を補う手段として、機能する傾向があります。

第二組合の主な役割

第二組合の主な役割は、既存の労働組合では十分に実現できない労働者の要望や、要求を反映させることです。上記のように、組合員が既存の組合に対して不満を持っている場合、新たに第二組合を設立することで、その不満を組織内で表現し、改善を目指します。

また、第二組合は労働者同士の団結を強化し、企業側に対してより強い交渉力を持つために結成されるケースも少なくありません。特に第一組合の活動が停滞している場合や、その活動に対して疑問を感じている労働者が多い場合に重要な役割を果たします。

第二組合の特徴は?

第二組合は、既存の組合とは異なる方針で活動する傾向があり、目的も明確に設定されている場合がよくあります。組合が分裂して第二組合が誕生する場合も多く、その流れで第一組合が実現できていないテーマを、掲げているケースも珍しくありません。 

さらに、第二組合は組織として比較的小規模で、より柔軟な組織運営が可能です。主目的は労働条件の改善ですが、社会貢献活動や文化活動など、幅広い活動をしている組織も多くあります。少数意見や、新しい視点を取り入れる文化が醸成されやすいのが特徴です。

第二組合に対する企業の対応

第二組合に対して、どのように対応するかは企業によって異なります。ただし労働組合法により対応する方針には一定の基準があるため、労使はそれを把握しておかなければなりません。。

中立的に接する必要がある

企業は社内に複数の労働組合が併存する場合、いずれの組合に対しても、中立的な立場を保つ必要があります。特定の組合を優遇したり、逆に差別したりすることは、不当労働行為に該当する可能性があり、法的に禁止されています。

第二組合の設立自体が、労働者の権利として認められているものであり、企業はそれを尊重しなければいけません。労使間の対立を避けつつ、必要に応じて協力関係を築くことが求められます。

組合によって労働協約に差が出る可能性も

上記のように、企業はどの労働組合に対しても、原則として平等・公平に対応しなければいけません。ただし、複数の労働組合が存在する場合、それぞれの組合と異なる労働協約を締結する可能性もあります。従って、労働条件に差が出るケースは珍しくありません。

企業側が複数の労働組合と交渉する場合、それぞれの組合の要求を全て満たすことは難しく、協約に差が出ざるを得ない場合もあるためです。特に、第二組合が既存の組合(第一組合)と異なる要求を掲げている場合、労働協約に関する調整が求められます。

ただし、そういった状況でも、企業は各組合と公平に交渉を進めた上で、できる限り労使間でのバランスを取る必要があります。

有名な第二組合の例

第二組合は、世界中でさまざまな形態で誕生しています。日本の場合、旧国鉄やJR・トヨタ自動車といった大企業において第二組合が誕生し、注目を集めてきました。

特に、旧国鉄(日本国有鉄道)の分割民営化は、日本の労働組合史における大きな転換点といわれています。当時、大手の労働組合であった「国鉄労働組合(国労)」や「全日本鉄道労働組合総連合会(動労)」に対する不満から、新たな労働組合が誕生した経緯があります。

また、トヨタ自動車の場合、1950年代に従業員組合が過激な方針を採った結果、経営側との大規模な対立が生じました。それをきっかけとして、従来の労働組合に不満を持つ社員らが中心となり、新たな労働組合が結成されています。

参考:国労の軌跡|国鉄労働組合

参考:トヨタ自動車75年史|労使関係|概要

第二組合が誕生する背景を知っておこう

既存の労働組合に対する不満や、新たなテーマで労使交渉が必要な場合などに、第二組合が結成されることがあります。有名企業を中心に、さまざまな理由で新たに労働組合が結成された事例も多いので、一度調べてみるとよいでしょう。

企業は労働組合法により、原則として全ての労働組合に対して、公平に交渉しなければいけません。中立的な交渉を守りつつ、労使間での円滑な関係を築くことが求められます。一方、組合側も殊更に対立の姿勢を取るのではなく、企業側と協力しながら、より良い職場環境をつくる姿勢が必要です。

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この記事を書いた人

筑波大学国際総合学類卒業。2023年にスタメンに入社し、人事労務・情報セキュリティに関するデジタルマーケティングを担当。 現在は「for UNION」の立ち上げメンバーとしてメディア企画に従事。

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