労働組合の仕事内容は?年間スケジュールの例や春闘・USRを解説

労働組合は年間を通してさまざまな仕事をしています。どのようなことをしているのか大まかにイメージし、組合運営に生かしましょう。年次の団体交渉である春闘や、近年注目されているUSRについても詳しく解説します。
労働組合はどんな仕事をしている?
労働組合は、労働条件の改善を目指して企業と交渉するために組織される団体です。職場環境の改善や経営への提言など、多岐にわたる活動を行っています
労働組合の主な仕事内容
労働組合の活動の中心となるのが、企業と交渉を行う団体交渉です。労働条件の改善などを目的とし、企業と対等の立場で交渉します。
団体交渉以外にも、労働組合では次のような活動を行っています。
- 職場環境の改善の申し立て
- 不当な解雇やリストラの撤回の申し立て
- 経営施策や実行状況に対する点検活動・提言
- 経営に関する情報開示の要求
年間スケジュールの例
労働組合の年間スケジュールの例を紹介します。
4月:加入促進活動、機関紙発行
5月:政策意見交換会、企業の実態調査
6月:執行委員会、労働諸条件調査
7月:執行委員会、安全点検
8月:執行委員会、政策意見交換会
9月:定期大会、機関紙発行
10月:男女平等推進委員会、地方連合代表者会議
11月:役員研修会、討論大会
12月:法令遵守点検調査、春闘基本方針討議
1月:執行委員会、春闘要求試案対策組織訪問
2月:春闘要求提出、機関誌発行
3月:交渉委員会、春闘回答指定日対策組織訪問
4月には加入促進活動や機関紙発行を行い、5月には政策意見交換会や企業の実態調査が実施されます。9月には定期大会を開催し、春闘の基本方針は12月頃から討議が始まります。組織内に向けた活動も労働組合における大切な役割です。
年次の団体交渉「春闘」について
春闘は毎年春に実施される日本特有の労働関連イベントです。活動目的やスケジュールなど、春闘について理解を深めましょう。
春闘とは
春闘の正式名称は「春季生活闘争」です。全国中央組織の労働団体や産業別組織の主導により、賃金引き上げなどの要求を各企業の労働組合が毎年春に提出し、企業と団体交渉を行います。
春闘の起源とされているのは、1955年に行われた全日本金属労働組合の賃金闘争です。現在は年次の恒例行事として定着し、全国の産業や企業で春闘が行われています。
春闘の要求内容で毎年注目されるのが、ベースアップによる賃金水準の引き上げです。2024年の春闘では、賃上げの平均妥結額が約1万7,415円、賃上げ率は5.33%となり、33年ぶりに賃上げ率が5%を超えました。
出典:賃上げ率は5.33%で33年ぶりの5%台(2024春闘における賃上げの状況:ビジネス・レーバー・トレンド 2024年10月号)|労働政策研究・研修機構(JILPT)
春闘の活動スケジュール
春闘は全国的な労働組合組織や産業別労働組合の主導で行われます。これらの団体が春闘の活動方針を確定させるのが、毎年12月頃です。まずは連合や全労連が春闘の全体方針を公表し、続けて産業別組織が具体的な要求水準を決定します。
春闘の方向性や方針が公表されたら、各企業の労働組合が自社における具体的な要求内容を検討します。春闘における正式な交渉が始まるのは、企業別労働組合から企業に要求が伝えられる2月頃です。
3月中旬には、企業側からの回答を引き出す「集中回答日」が設定されます。集中回答日に判明する大手企業の妥結結果を受け、中小企業の春闘がスタートし、3月中には全ての春闘が完了するという流れになります。
近年注目される「USR」とは
近年の労働組合には、労働条件の改善を目指すという本来の役割だけでなく、社会的責任を果たす役割も求められています。労働組合の社会的責任を意味する「USR」について理解を深めましょう。
労働組合の社会的責任
USR(Union Social Responsibility)は、企業の社会的責任を意味するCSR(Corporation Social Responsibility)から派生した言葉です。労働組合は、自らの運動を通じて社会的課題を解決し、その存在価値を広く認識されることが期待されています。
USRにおける具体的な責任は次の2つです。
- 企業内組織としての社会的責任:働く人の立場から企業経営をチェックする
- 社会的存在としての責任:社会に対して労働組合の人や資源を生かす
これからの労働組合は単に団体交渉を目的とするだけでなく、社会の構成員としての自覚を持った上で、社会的責任を果たすべく活動領域を広げていくことが重要です。
USRの事例
神戸交通労働組合は、阪神・淡路大震災復興のシンボル「神戸ルミナリエ」をより多くの人に見てもらいたいとの思いから、2003年に「神戸イルミネーションバス」の製作・運行を企画しました。
バスの制作費用は、神戸交通労働組合の組合員のほか、神戸市労働組合連合会を通じた市内の組合員や職員からのカンパ金が充てられました
神戸イルミネーションバスに関する活動は、労働組合が人や資源を地域に生かすUSRの成功事例といえるでしょう。
出典:労働組合の社会的責任(USR)の発信~神戸イルミネーションバスの運行から~
労働組合の仕事を把握しよう
労働組合は年間を通してさまざまな活動を行っています。そのメインとなるのが企業との団体交渉であり、毎年春に実施される日本特有の団体交渉イベントが春闘です。
また、これからの労働組合は、USRに基づく活動も意識する必要があります。労働組合の具体的な仕事内容を把握し、組織運営に生かしていきましょう。