アルバイト(非正規雇用者)の労働組合への加入率は?加入条件や注意点などを解説
アルバイトやパートなどの非正規雇用者でも、労働組合への加入が可能です。正規雇用者に比べて加入率は低いものの、組合側にもメリットがあるので、この機会に知っておきましょう。非正規雇用者の労働組合への加入率を上げるポイントも解説します。
アルバイト(非正規雇用者)も労働組合に参加できる?
非正規雇用者も正規雇用者と同じく、労働組合への参加が可能です。まずは、アルバイトをはじめとした非正規雇用者の定義や、労働組合の参加に関する基本的な事柄を知っておきましょう。
アルバイト(非正規雇用者)の定義
非正規雇用者とは、契約期間が限定的で、正規雇用者とは異なる雇用条件のもとで働く労働者です。一般的に、正規雇用者以外の雇用形態に該当する労働者は、全て非正規雇用者に分類されます。アルバイトやパートだけでなく、派遣労働者や契約社員など、さまざまな形態が含まれています。
非正規雇用者は職務や働き方の柔軟性が高い一方で、賃金や福利厚生などの面で課題を抱えるケースが少なくありません。社会保険の適用範囲や、正規雇用者との待遇格差が問題視されることもあります。
非正規雇用者でも労働組合への参加が可能
日本の労働基準法や労働組合法では、正規・非正規にかかわらず、労働者であれば労働組合に加入する権利が認められています。アルバイトやパートの立場でも、雇用契約が存在する限り、組合活動への参加は妨げられません。
実際に、多くの労働組合が非正規雇用者を組合員として迎え入れており、契約期間や雇用条件を改善するための交渉の場を提供しています。非正規雇用者は、正規雇用者以上に賃金や福利厚生の面で問題を抱えるケースが多いので、労働組合を通じた団体交渉が可能になるのはメリットが大きいといえるでしょう。
労働組合の結成もできる
上記のように、非正規雇用者も正規雇用者と同様に労働組合に参加できますが、さらに労働組合の結成にも関わることも可能です。
法律上、労働組合は3名以上の労働者が集まり、組合規約を作成すれば結成できます。これも正規雇用者の限定されている権利ではないため、非正規雇用者でも条件を満たせば、労働組合を結成可能です。事実、正規労働者のみの労働組合に対して、非正規雇用者のみの労働組合がつくられたケースもあります。
非正規雇用者の労働組合への加入率
非正規雇用者の労働組合への加入率は、正規雇用者に比べてまだ低いのが現状ですが、近年は徐々にその割合が増しています。以下、非正規雇用者の労働組合加入率に関する統計データや、組織率の推移についてみていきましょう。
全労働組合員数に占める割合
厚生労働省の「令和5年労働組合基礎調査の概況」によると、2023年6月30日における労働組合員数は、全体で約993万8,000人です。前年よりも約55,000人減少している一方で、パートタイム労働者の組合員は141万人となっており、前年に比べてわずかに増加しています。
全労働組合員数に占めるパートタイム労働者の割合は、ここ数年13〜14%を間を推移しており、ほぼ横ばいの状態が続いているといえるでしょう。
同じく厚生労働省の「非正規労働者と労働組合の対応に関する事項」によれば、労働組合にフルタイムの非正規労働者の労働組合が加入している割合は労働組合全体の68%にも上っており、産業別に見ると「教育,学習支援業」「医療,福祉」「複合サービス事業」の割合が、80%を超えています。
※出典:非正規労働者と労働組合の対応に関する事項|厚生労働省
労働組合の組織率の推移
「令和5年労働組合基礎調査の概況」を確認すると、労働組合の推定組織率は2023年で16.3%と過去最低を記録しています。1970年の35.4%から徐々に減少しており、今後も下がり続ける可能性が高いでしょう。
ただし産業別にみると、製造業や卸売業・小売業などでは、労働組合員数が微増している業界もあり、一定の組織力が維持されています。全体的な減少傾向の中でも、特定の業界や地域では労働組合の重要性が再認識されつつあるのが現状です。
非正規雇用者が労働組合に加入するメリット
非正規雇用者が労働組合に加入することで、労働条件の改善に関する交渉が可能になり、不当解雇や安易なリストラも防止できます。非正規雇用者にどのようなメリットがあるのかを整理しておきましょう。
労働環境や雇用条件に関する交渉ができる
非正規雇用者が労働組合に加入する最大のメリットは、労働条件に関する交渉権を得られることです。例えば、賃金の引き上げや労働時間の改善といった課題について、組合のサポートのもとで交渉が可能になります。個人では対応が難しい企業側との話し合いも、労働組合のサポートによりスムーズになります。
また、労働組合側も非正規雇用者を組合に迎えることで、多様な雇用形態に対応した交渉がしやすくなります。特に、非正規雇用者が抱える課題である賃金格差や契約期間の安定化について、実際の現場の声を反映した具体的な提案が可能になるでしょう。
団体での協議・交渉も可能に
労働組合に加入することで、非正規雇用者も同じ職種や雇用形態の仲間と連携し、団体として交渉に臨めるようになります。団体交渉は企業側に対する労働者の影響力を高め、より良い成果を得る手段です。団体での協議を通じて、労働環境の改善が期待できます。
一方、労働組合も非正規雇用者を受け入れることで、多様な働き手が集まり、組織の規模や影響力の拡大が可能です。団体交渉の際にも、非正規雇用者特有の課題を交渉テーマに含めることで、多様な労働問題の解決に寄与できます。
不当解雇や安易なリストラを防止できる
労働組合は不当解雇や安易なリストラから、非正規雇用者を守る役割も果たします。解雇や企業による契約更新の拒否に関して法律的な支援や相談が可能で、労働者が安心して働ける環境を提供します。
また、非正規雇用者を積極的に受け入れ、支援する労働組合は社会的な信用を高められるでしょう。誰もが働きやすい環境を目指す姿勢が評価され、労働組合自体の価値の向上にもつながるのに加えて、新たな組合員を引き寄せるきっかけにもなります。
非正規雇用者の加入率を上げるポイント
労働組合として、非正規雇用者の加入率を上げるポイントも押さえておきましょう。上記のように、全体として労働組合の組合員数が減少し続ける中で、非正規雇用者の労働組合加入率を高めるには、組合活動の情報発信や成功事例の共有が不可欠です。
積極的な情報発信は必須
非正規雇用者に限らず、労働組合の存在や活動内容を広く周知するには、積極的な情報発信が欠かせません。パンフレットや説明会の開催、SNSの活用など、さまざまな方法で組合の魅力を伝える努力が求められます。組合への加入がどのようなメリットをもたらすのか、具体的に伝えるようにしましょう。
例えば、賃金交渉や雇用条件の改善といった実績や、組合員同士の連携による支援体制の強化など、分かりやすく説明することが重要です。継続的な情報発信により労働組合に対する信頼感が醸成され、非正規雇用者を含め、組合への参加を希望する労働者の増加が期待できます。
他の組合や他国の事例を参考にする
他の労働組合や他国の成功事例を参考にするのも、労働組合の加入率を向上させるポイントです。国内外の組合で実施されている活動や取り組みの中には、非正規雇用者の問題の解決に役立つアイデアも多く含まれています。
例えば、特定の業界に特化した組合が実施した交渉事例や、労働環境の改善に向けた実践的な施策などは、参考になる要素が多いでしょう。
さらに、他国では非正規雇用者の組織化が進んでいる地域もあるので、成功要因を分析して取り入れることで、新たなアプローチを生み出しやすくなります。多くの事例を参考にした上で、組合の特性や地域の労働環境に合わせた取り組みを検討しましょう。
労働組合の役割を積極的に周知する
労働組合は、非正規雇用者にとっても重要な存在です。組織率は年々減っている状況の中で、加入率を向上させるには、労働者に組合の意義やメリットを十分に理解してもらう必要があります。
非正規雇用者を含め、多くの労働者が安心して働ける環境を実現するために、労働組合の役割を周知し、加入しやすい仕組みを整えましょう。