【自治労稚内市労働組合連合会】タイムリーな情報発信で課題を解決。TUNAGで24時間対応と組合活動の見える化を実現した取り組み。

自治労稚内市労働組合連合会の田中委員長と堀書記長に、労働組合の課題解決から、組合活動で注力した取り組みや成果などの組合活動に従事された振り返りを幅広く聞かせていただきました。

※御二方のお役職については、取材当時2025年2月時点のものになります。

目次

組織概要について

堀: 私たちは北海道稚内市に位置しており、市役所と市立稚内病院の職員で構成している労働組合です。組合員数は市職員と病院職員を合わせて約400名となっています。オープンショップ制を採用しており、執行部は18名体制で運営しています。安定した公共サービスを提供するためには、まずは私たち職員が安心して働き続けられる環境を作る必要があるという考えのもと、活動を行っています。

田中: 基本的には細かい事務的な部分については書記長が担当しますが、年間の運動方針などの重要事項については定期的に執行委員会を開催し、執行委員の皆さんに意見を聞いて最終的に決定するという形を取っています。また、各種会議や大会時の役割分担などについては、書記長だけでは対応しきれない部分があるため、執行委員で手分けして運営を行っています。

— お二方それぞれの組合活動の経緯を教えてください。

田中: 組合活動を始めたきっかけは、多くの方と同様に先輩からの誘いでした。市役所入職3年目頃に稚内市労連の青年部の先輩から声をかけていただき、青年部の役員として活動を開始しました。青年部では副部長まで務め、各種イベントの企画・運営を通じて横のつながりを広げる活動に取り組みました。その後一時期活動から離れましたが、30歳頃に稚内市労連に執行委員として復帰し、現在委員長として2年目を迎えています。

私自身、青年部の時から「みんな仲良くやっていければいい」という思いを持ち続けており、現在は委員長として稚内市労連の顔として各所への対応や、組合員からの相談を受けた際の方針決定などを担当しています。

堀: 私の場合は田中とは異なる経緯で、3〜4年前に当時の書記長から執行委員への就任を打診されたことがきっかけです。青年部の役員経験はなく、いきなり執行委員となりました。その後、書記長への就任を打診された際、私は元々企画部署での経験が長かったのですが、当時観光部署に異動したばかりでした。人手不足という組合の課題を考慮し、自身の経験を積む機会と捉えて書記長を引き受けました。

現在書記長1年目として、交渉へ向けた事前準備、組合員の相談対応や各種会議の日程調整など多岐にわたる業務を担当していますが、執行部の皆さんに支えられながら取り組んでいます。

導入前の課題について

— TUNAG導入前はどのような課題を抱えていらっしゃいましたか。

堀: 導入前までは、組合からのお知らせや機関紙については紙媒体で組合員一人ひとりに配布していました。しかし紙媒体には大きな課題がありました。まず、見ないで廃棄される場合や、一度見たら廃棄されてしまうという問題があります。さらに、紙での配布であるため、その日の情報をその日のうちに配布することが困難で、どうしてもタイムラグが発生してしまう状況でした。組合DXが求められる中で情報発信方法が時代に適していませんでした。

また、各種会議の出欠報告等にしても、電話やメール、紙により対応していましたが、組合員が報告等をするにしても、書記局の空いている時間にしかできず、夜間落ち着いたタイミングにできないことや、対面・電話に限られるというのも課題の一つでした。

加えて、組合員の減少により収入が減少する一方、物価上昇に伴う支出増加により、財政的な課題が深刻化していました。業務が多忙な中で次の担い手が育ちにくく、先輩の経験や知識の継承が困難であり、役員個人にかかる負担が大きくなっていました。

田中: 現在、どの業界も人手不足と言われていますが、自治体においても全く同じ状況です。組合もそれに連動して人材確保が困難になっています。市役所職員も、以前は「一度入れば定年まで」というのが当たり前の感覚だったように思いますが、現在は業務量や賃金の問題から中途退職してしまう職員も少なくありません。人手不足が最も深刻な課題となっており、職場環境の改善が重要な課題となっています。

職場の魅力を向上させるには、一人の力では限界があり、みんなが当事者意識を持って取り組む必要があります。しかし、業務の忙しさから組合活動に参加する余裕がない状況が続いています。

導入後の変化について

— TUNAG導入後、どのような変化がありましたか。

堀: 2025年2月からTUNAGを導入し、4月下旬から本格運用を開始しました。最も大きな変化は情報発信能力の向上です。従来の機関紙では伝えきれなかった内容も、文字数を気にせず投稿できるようになりました。また、国の動向など重要な情報を入手した場合、すぐにTUNAGへ掲載し、特に重要な情報については通知機能を使って、必読という形で組合員に確実に伝達できるようになりました。

現在、約半数の組合員が登録・ログインしている状況まで持ってくることができましたが、残り半分の組合員にはまだ浸透していない状況です。2024年度の新規採用者については、本格リリース後個別に案内を行い、TUNAG登録を推進しました。

組合活動で大切にしていることについて

— 組合活動において大切にしていることを教えてください。

堀: 私が役員になる前は、正直なところ組合が何をやっているのかよく分からなかったというのが実情でした。組合活動は休日や時間外での会議や活動が多いのですが、その内容が見えていませんでした。実際にこの立場になって分かったのは、土日を含めて様々な活動を行っているということです。そうした時に重要なのは情報発信です。「何をやっているか分からない」ではなく、活動内容をしっかりと伝えていくことが大切だと認識しています。

この10ヶ月間は特に情報発信に意識を集中して取り組んできました。組合活動をまず知ってもらうということを大事にし、せっかく導入したTUNAGを活用して、組合員に組合活動を理解してもらうきっかけを作ることに注力しています。

田中: 組合について「何をやっているんだろう」と思われると、「なぜ組合に入っているんだろう」ということにもつながってしまいます。組合がどのような活動をしているか、どのような相談を聞いてもらえるかということを知ってもらい、組合を有効活用してもらうことが最も大事だと考えています。

そうした意識を持ってもらわないと、「なんとなく入っているだけ」「入っていても意味がない」というマイナスなイメージになってしまい、組織としてのまとまりがない状態になってしまいます。組合がどのような組織なのかを知ってもらうことが重要です。

また、組合員の皆さんにもっと気軽に意見を言ってもらいたいと考えています。どのような要望があるのか、何を改善してほしいのかということを、私たちだけでは決められない部分があります。実現できるかどうかは別として、気軽に相談してもらうことで、私たちの運動方針も決めやすくなります。大会などで手を挙げて発言することが難しい方もいらっしゃるため、TUNAGのようなポータル的なツールをもっと活用していきたいと考えています。

今後の展望について

— 中長期的に見た取り組みなど、今後の展望をお聞かせください。

堀: 最も理想的なのは、組合がなくても職員のみんなが安心して働き続けられる賃金・労働環境が整うことですが、現実問題としてはなかなか困難です。そのため、組合員が「これはどうにかならないのか」「おかしいのではないか」と感じることを一つでも解決していくことが理想です。解決できない場合でも、何らかの別の方向を探すなど、良い方向に改善できればと思っています。

組合員の声を吸い上げる手段として、日常的な対話ももちろん必要ですが、数値的なデータも重要な場面で必要になります。そのため、今後TUNAGを使ってアンケート調査を全組合員に実施する予定です。また、24時間いつでも組合員が相談や福利厚生の申請を行えるシステムを、うまく活用していきたいと考えています。

田中: 一言で表現するなら、みんなが組合の執行部をやってみたいと思えるような組織にしたいというのが本当の理想です。組合の執行部は大変そうだと思われがちですが、「こういうことができるんだな」「私も中に入ってやってみたい」と思われるような組織になることが最も理想的です。

堀: せっかくTUNAGを導入し、今まではできなかった情報発信が可能になったという部分もありますので、まだ完全に使いこなせていない部分もありますが、もっとうまく活用して、組合員に「TUNAGを導入して良かった」と言っていただけるような取り組みを進めていきたいと思っています。

TUNAGについて

— TUNAGのベネフィット機能についてはいかがでしょうか。

堀: クーポン機能については、組合員から「使ってみたよ」という声も聞いていますが、地方特有の課題として、稚内市内で使えるお店がローソンぐらいしかないという状況があり、もっと様々な店で使えるといいのにね、とご意見もいただいています。

興味深いエピソードとして、スターバックスのギフトカード5,000円分のキャンペーンに私が当選し、「本当に当たるんだ」と実感しました。すぐに組合員向けに投稿し、「実際に当たりました、皆さんもぜひ応募してください」という形で周知を行いました。スターバックスも稚内にはありませんが、クーポン機能をきっかけに、TUNAGを開いて、組合活動を知っていただければ、組合員の関心を高めることにつながると考えています。

— 最後に一言お願いします。

堀: 約半数の組合員が登録している状況まで持ってくることができましたが、残り半分の組合員への浸透が今後の課題です。せっかく導入したTUNAGを活用し、情報発信の部分で今までできなかったことが可能になったため、もっとうまく使いこなして、組合員に「TUNAGを導入して良かった」と言っていただけるような運動を進めていきたいと思います。

田中: 組合活動の魅力や意義を伝え、より多くの組合員に参加していただけるような環境づくりを続けていきたいと考えています。

〜田中様、堀様、ありがとうございました!〜

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「for UNION」編集長。
2020年にスタメンに新卒入社。
その後、2022年1月に労働組合向けアプリ「TUNAG for UNION」を立ち上げ、現在はマネージャーとして、事業拡大に従事。

目次