労働組合の春の労使交渉を解説 賃上げ率・非正規格差・交渉ポイント

春の労使交渉は労働組合にとって年間で最も重要な活動の一つですが、効果的に進めるには最新の動向と戦略的な準備が必要です。

本記事では、2025年春闘の重要ポイントから賃上げ以外の交渉事項まで、組合執行部が知っておくべき情報を分かりやすく解説します。

目次

春の労使交渉「春闘」とは?

春の労使交渉、通称「春闘」は、労働組合が毎年春に企業の経営側と行う団体交渉のことです。新年度の労働条件を決定する重要な場として位置付けられています。

春闘が「春の闘い」と呼ばれる理由は、多くの企業で4月が新年度のスタートとなるため、その前の時期に集中的に労使交渉が行われることにあります。

この時期に全国の労働組合が一斉に交渉を行うことで、労働者全体の労働条件改善を目指します。

2025年春闘で日本労働組合総連合会(連合)が取る方針

春闘では実際にどのような交渉が行われるのかを確認してみましょう。2025年春闘において、日本労働組合総連合会(連合)が公表している方針について紹介します。

参考:連合|労働・賃金・雇用春季生活闘争2025年春闘

賃上げ5%以上の実現

連合は2025年春闘で、すべての働く人の生活を安定的に向上させるため、賃上げの目安を「3%以上のベースアップ、定期昇給を含めて5%以上」と設定しました。

これは物価の上昇に対応しつつ、将来にわたる処遇改善を目指すものです。

さらに、業種や企業規模による給与の差をなくす「格差是正」も重視し、中小企業の組合には積極的な要求を促しています。

経済社会の新たなステージを定着させるべく、全力で賃上げに取り組み、社会全体への波及を目指すという連合の姿勢が明確に示されています。

企業規模間格差の是正

中小企業で働く組合員の処遇改善は、2025年春闘における重要なテーマの一つです。

連合は、賃上げと価格転嫁・適正取引における企業規模間の格差解消を目指し、中小組合に対して「格差是正分」を積極的に要求することとされています。

また、年齢や経験に応じた賃金カーブの維持は、意欲や生活水準を支える大切な要素とされ、定期昇給制度がない場合には制度の確立も働きかけることが示されています。

さらに、各組合は自らの水準を社会全体と比較し、必要な引き上げ額を明確にした上で総額での賃上げ要求を行うよう求められていることも同資料より確認できます。

こうした取り組みは、地域や業界全体の底上げにもつながるでしょう。

雇用形態間格差の是正

正社員と非正規雇用者の待遇格差の解消は、2025年春闘における重要なテーマの一つです。

連合は、有期・短時間・契約などで働く人の生活を守り、地域別最低賃金(2024年度は平均5.0%引き上げ)を上回る賃上げを目指しています。

企業内では、全ての労働者に適用される最低賃金協定の締結を推進し、時給1,250円以上を目標としています。

また、非正規労働者も「働きの価値」に応じて正当に評価されるべきであり、経験5年相当で時給1,400円以上をめざすとしています。

待遇の違いをなくすことで、雇用形態に関係なく安心して働ける職場づくりを進められています。

職場における待遇改善

賃金以外の職場環境や待遇改善も春闘の重要な議題となっています。

均等・均衡待遇実現の取り組み

  • 働き方の多様化支援:テレワーク、フレックスタイム制の拡充
  • ワークライフバランスの向上:有給休暇取得促進、連続休暇制度
  • 職場環境の整備:快適な作業環境の実現
  • ハラスメント防止対策:安心して働ける職場づくり

賃上げ以外の交渉事項と今後の展望

春の労使交渉では、賃金以外にも組合員の満足度向上につながる様々な取り組みが議題となります。

従業員満足度を高める「第3の賃上げ」とは?

「第3の賃上げ」とは、直接的な給与アップではなく、福利厚生や職場環境の改善を通じて従業員の実質的な待遇向上を図る取り組みのことです。

第3の賃上げの具体例

  • 食事補助の拡充
  • 交通費支援の改善
  • 健康管理支援
  • 教育研修の充実
  • 休暇制度の拡充

第3の賃上げは、企業の負担を抑えながら従業員満足度を高める効果的な手法として注目を集めています。

賃金引上げ以外の労働条件改善に向けた企業の取り組み

近年、企業側も賃金以外の労働条件改善に積極的に取り組んでいます。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 働き方改革の推進
  • デジタル化による業務効率化
  • 職場環境の快適化
  • 多様性の推進
  • メンタルヘルス対策

これらの取り組みは、働きやすさを向上させるための重要な施策です。

2025年春闘は変革のきっかけになるか

物価上昇や人手不足といった社会情勢の変化に対応し、働く人々の生活水準を維持・向上させるためには、従来の枠組みを超えた新しい取り組みが求められます。

特に、デジタル技術を活用した効率的な組合運営や、組合員との双方向コミュニケーションの強化が重要なポイントとなります。

2025年春闘を組合の結束強化と労働条件改善の大きなチャンスとして活用し、組合員とともに歩む持続可能な組合運営を実現していきましょう。

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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