法適合組合になるための条件とは?労働組合法による保護の内容も解説

労働組合が会社と対等の立場で活動するためには、法律により組織が守られる法適合組合になることが重要です。法適合組合になるための条件や法適合組合が受けられる保護の内容、保護を受けるための資格審査について解説します。
法適合組合になるための条件
法適合組合として認められるためには、3つの条件を全て満たす必要があります。労働組合法第2条本文に定められている「積極的要件」と同法但書の「消極的要件」、労働組合法第5条に定められた規約が存在することです。
労働組合法第2条本文の条件を満たしている
労働組合法第2条本文には、法適合組合が満たすべき以下の「積極的要件」を定めています。
- 労働者主体の組織であること
- 自主性を持った組織であること
- 労働条件の維持改善や経済的地位の向上を主な目的としていること
- 規約が存在すること
上記のうち1つでも欠いた労働組合は法外組合とみなされ、法律の保護を受けられません。
労働組合法第2条但書に該当していない
法適合組合になるために該当してはならない「消極的要件」を定めているのが、労働組合法第2条但書です。次の条件のうち1つでも当てはまる場合、法外組合とみなされます。
- 会社の利益代表者が参加している
- 会社から経済的な支援を受けている
- 共済・福利事業のみを目的としている
- 政治活動や社会運動を主な目的としている
利益代表者とは、会社の役員や人事権を持つ管理職などです。これらの人はいわば「会社側の人間」であり、労働組合にいると組織の自主独立性を失って労働者の利益にならないと考えられています。
労働組合法第5条に定められた規約がある
法適合組合が満たすべき条件の1つに「規約を持つこと」が定められていますが、この規約には必要事項を盛り込まなければなりません。規約に記載すべき項目は、労働組合法第5条で規定されています。
- 組合の名称
- 事務所の所在地
- 組合員が均等な取扱いを受ける権利を有すること
- 人種・宗教・性別・門地・身分により組合員資格を剥奪しないこと
- 直接無記名投票で役員を選出すること
- 毎年最低1回は総会を開催すること
- 資格を持つ会計監査人の会計監査が毎年最低1回は組合員に公表されること
- ストライキが組合員の直接無記名投票による過半数の支持を要すること
- 規約の改正には組合員の直接無記名投票による過半数の支持を要すること
上記を記載する目的は、組合の公正かつ民主的な運営を確保することです。
法適合組合が受けられる保護の内容
法適合組合になると、労働組合法上で与えられる全ての法的保護を享受できます。具体的な内容を見ていきましょう。
正当な行為の刑事責任を問われない
法適合組合がストライキを適法に行った場合、通常なら犯罪に該当する行為でも刑法による罪に問われません。労働組合法第1条第2項と刑法第35条で規定されています。
ただし、このルールはあくまでも正当なストライキに適用されるものです。例えば、暴力や脅迫を伴う場合は正当なストライキとはいえないため、適法なストライキではないと判断される可能性があります。
会社の不当労働行為から保護される
不当労働行為とは、憲法第28条で保障されている労働三権を会社が妨害する行為です。労働組合法第7条では、主に次のような行為を不当労働行為として禁止しています。
- 不利益取扱い(組合に加入した労働者を解雇・降格するなど)
- 団体交渉の拒否(当日になって団体交渉をキャンセルするなど)
- 支配介入(組合が使用していた会社施設を使用禁止にするなど)
- 経費援助(組合が使う備品を会社が購入するなど)
会社が組合に対して影響力を持とうとする不当労働行為は、労働組合法第1条の「労働組合は会社と対等な交渉力を持たなければならない」を侵害する行為なのです。
正当な争議行為の民事責任を問われない
労働組合法第8条により、法律上の要件を踏まえたストライキでは、民事上の責任も免除されます。
例えば、破壊された設備の原状回復費用や業務停止により失った利益について、会社側は労働組合に損害賠償を請求できません。
労使間で労働協約を締結できる
労働協約とは、団体交渉による取り決め内容を書面に明記したものです。労働組合法第14条により、法適合組合になると労使間で労働協約を締結できます。
労働協約は非常に強い効力を持ち、就業規則や労働契約に優先します。労働組合法第16条により、労働協約に違反する行為や契約は無効です。
法適合組合に関するよくある疑問
法適合組合の資格審査と法外組合が保障される範囲について解説します。疑問に感じやすい部分なので、しっかりと理解しておきましょう。
法適合組合の資格審査とは?
労働組合が法律上の手続きを利用したり、不当労働行為に対する救済を申し立てたりする場合、法適合組合であるかどうかの資格審査を受ける必要があります。
資格審査を受けるためには、必要な資料を管轄の労働委員会に提出しなければなりません。資格の有無を確認する必要があるケースでは、その都度資格審査を受けることになります。
法外組合は法律で守られない?
法適合組合を保護するのは労働組合法です。法適合組合としての条件を満たしていない法外組合も、憲法第28条で次の労働三権を保障されています。
- 団結権(労働組合を結成すること)
- 団体交渉権(団体交渉を行うこと)
- 団体行動権(ストライキなどを実施すること)
労働組合として存在すること自体は否定されず、法外組合であっても団体交渉やストライキを行うことは可能です。ただし、法外組合は労働組合法による特別な保護(不当労働行為救済や労働協約の締結など)を受けることができません。
法適合組合は法律により保護される組織
法適合組合は労働組合法により守られる労働組合です。一定の条件を満たすことで、労働組合法上のさまざまな保護を受けられます。
組合活動をスムーズに進めるためには、法適合組合になることが重要です。条件を満たしているか定期的にチェックし、法的保護を受けられる状態を維持していきましょう。