労働組合は法人格を取得できる?労働者協同組合のメリットや注意点を解説

労働組合は、労働者の権利を守るための重要な組織ですが、通常は法人格を持ちません。しかし、労働組合自体は法人化しませんが、新たに労働者協同組合を設立し、法人格を持つ形で活動することは可能です。多くのメリットがあるので、法人格の取得方法とともに理解しておきましょう。

目次

労働組合は法人格が持てる?

労働組合は組合員が100人以上の組織も珍しくありませんが、たとえ規模が大きくても、通常は法人格を持たないとされています。しかし、労働組合自体が法人格を持つことはできませんが、労働者協同組合を新たに設立することで法人格を取得することが可能です。

労働者協同組合として法人化が可能

労働組合は原則として、法律に基づく手続きにより、労働者協同組合として法人化できます。同組合は労働者が共同で事業を運営し、その収益を組合員に分配することを目的とした組織です。

2020年に成立した労働者協同組合法が、2022年10月1日に施行されたことにより、労働者が共同で事業を運営し、法人格を取得することが容易になりました。法人格を取得すると、組合員は出資により共同で経営に携われるようになります。法的な保護も強化され、契約の締結や財産の管理もスムーズになります。

※出典:労働者協同組合 |厚生労働省

労働者協同組合の特徴は?

労働者協同組合は、一般的な株式会社とは異なる特徴を有しています。まず組合員は、その出資額にかかわらず1人1票の議決権を持ち、役員の選出にも平等に参加できます。このため、より民主的な運営が可能です。基本的に大企業のように、出資額による影響力の差がありません。

また、労働者協同組合の利益は、組合員や地域社会に還元されます。単なる資金の分配にとどまらず、事業の発展や地域への貢献に活用されます。事実、労働者協同組合は営利を目的とせず、地域社会への貢献も重要な目的としています。

それに加えて、一般的な労働組合と比較して法的な安定性を確保しやすく、外部との取引においても、信頼を得やすいのも特徴です。

法人化に必要な手続き

労働者協同組合を設立するには、定款の作成や設立登記など、いくつかの手続きが必要です。まずは組合員による設立総会を開催し、定款や規約を決めなければいけません。その後、法務局で設立登記を行うことで、法人としての資格を得ることができます。

登記の際には定款と設立総会の議事録、出資金の払い込み証明書などが必要なので、事前にきちんと準備しておきましょう。さらに法人格の取得後は、税務申告や社会保険の手続きなど、法人としての義務を果たす必要があります。

労働組合が法人格を持つメリット

労働組合が法人格を持つことで、以下のようなメリットが得られます。自主的な活動がしやすくなり、他の組織との連携もスムーズになるでしょう。不動産などを組合名義で取得することも可能です。それぞれみていきましょう。

自主的に活動しやすくなる

法人格を持つことで、労働組合は自主的な活動がしやすくなります。法人格のある組織は、法律上の独立した主体として認められるため、契約の締結や財産の管理が可能です。組合名義で財産を保有し、事業運営に充てられるので、活動範囲を広げやすいのもメリットです。

また法人化することで、組合としての意思決定がスムーズになり、組合員の利益を守りやすくなります。資金調達もしやすくなるので、事業基盤の安定に寄与します。

他の組織との連携がスムーズになる

法人格は、他の企業や団体との協力関係を構築する上でも、大きな利点となります。法人格を持たない組織と比較して、対外的な信頼性が向上するため、公的機関との交渉や、共同プロジェクトの実施なども容易になるでしょう。

さらに外部からの支援を受けやすく、事業の拡大や新たなプロジェクトの実現もスムーズになります。補助金や助成金の申請においても、法人格は重要な要件の一つであるため、資金面での安定を図りやすくなります。

不動産などを組合名義で取得できる

労働組合を法人化することで、不動産や車両などの資産を、組合の名義で取得できるようになります。銀行口座の開設も可能になり、組織としての財産管理が容易になることで、組合員全体の利益保護につながるのもメリットです。

また、法人名義での資産の保有は、財務の透明性を高める効果もあります。外部からの監査や評価に対する、信頼性の担保にもつながります。

労働組合が法人格を持つ際の注意点

労働組合が法人格を持つ際には、注意すべき点もあります。法人化に伴う運営コストが増加する可能性があるのに加えて、税務申告や法的手続きも複雑になり、専門家の支援が必要なケースも増えるでしょう。

また法人化により、組合員間での責任分担が明確化される一方で、意思決定に時間がかかる場合もあります。法人化する前以上に、法律に基づいた運営が強く求められるため、違反があれば罰則を受ける可能性もあります。

こういった注意点やリスクを踏まえた上で、法人化の是非を慎重に検討することが大事です。メリットだけに注目するのではなく、デメリットもよく理解しておきましょう。

労働者協同組合について知っておこう

労働組合が法人格を取得するには、所定の手続きを経て、労働者協同組合として設立する必要があります。法人化することで、組合の活動の幅が広がり、社会的な影響力も高められるので、この機会に検討してみるとよいでしょう。

ただし、法人化により法的責任が増し、運営が複雑になる場合も考えられます。メリットだけでなく、デメリットも十分に検討した上で判断することが大切です。法人化するにせよ、一般的な労働組合として活動を続けるにせよ、労働者の権利を守り、地域社会に貢献する組織を目指しましょう。

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この記事を書いた人

筑波大学国際総合学類卒業。2023年にスタメンに入社し、人事労務・情報セキュリティに関するデジタルマーケティングを担当。 現在は「for UNION」の立ち上げメンバーとしてメディア企画に従事。

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