労働組合で働く方法にはどのようなものがある?組合専従者も解説

労働組合で働く方法としては、組合の職員として就職する方法と、組合員として活動する方法があります。また、組合専従者になれば組合活動に専念することが可能です。労働組合で働く代表的な方法と組合専従者について解説します。
労働組合で働く方法
労働組合の職員として就職できれば、給与をもらいながら働くことが可能です。どのような応募先があるのか、資格を取得する方法と併せて解説します。
事務員の求人に応募する
求人サイトで「労働組合」と入力して検索すれば、多くの労働組合が事務員を募集していることが分かります。労働組合の事務員に求められる主な仕事は次の通りです。
- 来客・電話・メールへの対応
- 組合員からの問い合わせ対応
- 郵便物の仕分け
- 簡単な文書や資料の作成(ExcelやWordを使用)
- 機関紙やポスターの作成補助
- ファイリングやスキャニング
- データやアンケートの集計
- 請求書の整理や振込依頼書の作成
業務内容は一般企業の事務員とほとんど変わりません。事務職の経験があれば就職に有利ですが、未経験OKとしている求人も数多く見つかります。
産業別組合や連合に就職する
労働組合で働く方法としては、産業別組合や連合に就職する方法もあります。産業別組合と連合の意味をまとめました。
- 産業別組合:同じ産業で働く労働者が加入する、企業の枠を超えて組織された労働組合
- 連合(日本労働組合総連合会):全国の労働組合をまとめる組織
産業別組合と連合のいずれも、時期によっては新卒・第二新卒採用や経験者採用を実施しています。前項で紹介した一般事務の仕事と違い、労働に関するキャンペーンの企画・運用や労使交渉のサポートなど、もう少し踏み込んだ業務に携わるのが特徴です。
専門資格を取得する
社会保険労務士の資格を取得すれば、労働組合で相談員や専従者として働ける可能性があります。社会保険労務士とは、労働や社会保険の専門家として活躍できる国家資格です。
社会保険労務士になるためには、年1回の国家試験に合格しなければなりません。学歴や実務経験、厚生労働大臣の認めた国家試験合格のうちいずれかの要件を満たしていれば、受験資格を得られます。
合格率は例年10%に達しておらず、難易度は高めです。全体の60~70%の点数を獲得すれば合格できるとされています。
労働組合の組合員として働く方法
労働組合に加入することで組合員として働けます。給与は会社から出るため、労働組合から給与はもらえませんが、組合員になれば組合活動に携わることが可能です。労働組合の組合員として働く3つの方法を紹介します。
企業別組合に加入する
企業別組合とは、企業ごとに結成されている労働組合のことです。一般的に労働組合という場合は、企業別組合を指すケースが多くなります。
自分が働く企業に労働組合があれば、組合員として働くことが可能です。組合活動に積極的に関わっていれば、次の三役に抜てきされる可能性もあります。
- 委員長:議案の最終権限を持つ最高責任者
- 副委員長:委員長の補佐役であり、委員長不在時には職務を代行する
- 書記:組合の運営を統括し、事務全般を管理する
これから就職先を探す人で、労働組合の活動に携わりたい場合は、労働組合がある企業を探しましょう。全ての企業に労働組合が存在するわけではありません。ハローワークの求人票や有価証券報告書を見れば、労働組合の有無が分かる場合があります。
ユニオンに加入する
自社に労働組合がない場合は、ユニオンへの加入を検討してみましょう。ユニオンとは、働き先にかかわらず個人での参加が可能な労働組合のことです。業種や地域ごとに組織されているケースが多く、全国に存在します。
ユニオンは企業別組合ではありませんが、企業別組合と同様の活動を行えるほか、労働組合法の保護も受けられます。一般社員だけでなく、アルバイトやパートも参加可能です。
労働組合を自分で立ち上げる
労働組合は会社の指示を受けて結成されるものではなく、労働者が自主的に立ち上げる組織です。自社に労働組合がない場合は、自分で労働組合をつくる方法もあります。
労働組合の結成は、憲法第28条で保障されている労働者の権利です。憲法では労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権)を認めており、労働組合の結成は団結権に当たります。
労働者が最低2人いれば、いつでも自由に労働組合を立ち上げることが可能です。役所に届け出たり会社から承認をもらったりする必要はありません。
労働組合のつくり方
労働組合を立ち上げる一般的な流れは次の通りです。
- 結成準備会の発足(会社の情報収集や勧誘活動、組合規約案の作成など)
- 結成大会の開催(結成準備会の経過報告、三役の選出、結成宣言など)
- 会社への通知
労働組合のつくり方は法律などで定められているわけではありません。一般的には上記のように、準備を進めて結成大会を開催した後、労働組合を立ち上げたことを会社に知らせます。
なお、労働組合が法的保護を受けるためには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 労働者が主体となって組織している
- 労働者が自主的に運営している
- 労働条件の維持・改善を主な目的としている
これらは労働組合法第2条で規定されているルールです。法律で守られない組合ではスムーズな活動ができなくなるため、上記を満たすことを意識して運営する必要があります。
組合専従者について
労働組合で働きたいなら、組合専従者を目指す方法も検討しましょう。組合専従者とは何か、意味やメリット・デメリットを解説します。
組合専従者とは
労働組合の活動に専念する人のことを組合専従者といいます。一般的に、組合員は会社で働きながら組合活動にも携わりますが、組合専従者は組合活動に従事することが仕事になります。
組合専従者の主な仕事内容は以下の通りです。
- 労働問題に関する相談対応
- 労働条件の改善を図るための団体交渉
- 組合員の教育・指導
- 従業員に対する勧誘活動
組合専従者の選出プロセスには、外部から招へいするケースと、本業の仕事を辞めて組合活動に専念するケースなどがあります。選出プロセスは組合規約で規定されているのが一般的です。
組合専従者のメリット
組合専従者になる大きなメリットは、組織の中枢で組合活動に専念できることです。通常は本業に従事しながら組合員としても活動することになりますが、組合専従者は組合の仕事が本業になります。
労働組合の活動が面白いと感じても、本業が忙しければなかなか活動には参加しにくいものです。しかし、組合専従者になれば労働者の権利を守るための取り組みに専念できます。
組織運営に大きな影響力を持てる点もメリットです。組合専従者は単なるサポート役ではなく、組合活動の意思決定にも深く関わります。そのため、労働組合に関する高い知識やスキルを求められます。
組合専従者のデメリット
組合専従者になる場合、本業を辞めて組合に身分を移すのが一般的です。給与も組合から支払われますが、今までに比べ給与が少なくなる可能性があります。
給与が減ることに不安を感じる場合は、組合専従者の給与がどのくらいなのか、事前に調べておくことが大切です。また、給与が減っても仕事ができるだけのやりがいを持てるかどうかも、いま一度自分の中で確かめておく必要があるでしょう。
労働組合で働く方法を理解しよう
労働組合で働く方法には、組合に就職する方法と組合員として活動する方法があります。就職すれば給与をもらえますが、組合員になる場合は組合から給与は出ません。
ただし、組合専従者になれば、組合から給与をもらいながら組合の活動に専念できます。さまざまな方法があることを理解し、組合活動に生かしていきましょう。