労働組合に相談できることは?相談を受けた後の流れも解説

労働組合は、さまざまな労働問題に対応できる頼れる存在です。加入を検討している方から「どのような相談が可能なのか」と尋ねられた際には、具体的な内容をしっかり説明できることが大切です。本記事では、労働組合に相談できる内容と、相談を受けた後の流れについて分かりやすく解説します。

目次

労働組合に相談できること

労働組合は労働者が結束して諸問題の解決を図る組織です。組合員から相談されたことをまとめて企業に提出し、団体交渉を通じて改善につなげます。労働組合ではどのような問題を扱えるのか、まずは組合員が相談できることを把握しましょう。

さまざまな労働問題を相談できる

労働者が会社で働く中で問題に感じることは、基本的に何でも労働組合に相談することが可能です。具体例には次のようなものがあります。

  • 給与(賃金が少ない、給与が期日までに支払われない、残業代が発生しない)
  • 労働時間(残業が多すぎる、休日労働を強いられる)
  • 休暇(休みが少なく疲れが取れない、有給休暇を取得できる雰囲気ではない)
  • ハラスメント(セクハラやパワハラの被害を受けている)
  • 人事評価(正当な評価を受けていると思えない)
  • 解雇(不当解雇や雇止めを受けた)

個人では会社に対して声を上げにくい場合でも、集団であればより強い交渉力を発揮できるという考えに基づき、憲法第28条で労働三権を保障し、労働組合の結成や団体交渉権を認めているのです。

出典:日本国憲法 第二十八条 | e-Gov 法令検索

個人の代理行為はできない

労働組合はあくまでも労働者が集団で会社と対等に交渉するための組織です。労働組合が個人の代理行為を行う義務はないため、「個人的な問題を解決してほしい」と組合に相談しても、個別に対応する必要はありません。

ただし、労働組合が個人の問題に全く対応しないわけではありません。個人の相談が集団全体に影響を及ぼす場合や、他の組合員にも共通する問題であれば、労働組合が支援や交渉の対象として取り扱うことがあります。

多くの組合員が「自分の問題を優先的に解決してほしい」と思うことは自然な感情です。しかし、労働組合の本質的な存在意義は、組合員同士が助け合い、団結して多くの課題に対処していくことにあります。一人では解決できない問題も、集団の力を借りることで会社と対等に交渉できる可能性が広がります。

相談を受けた後に労働組合がすること

労働組合は、組合員からの相談を受けた後、その内容を整理・集約し、会社との交渉を経て労働協約を締結します。この一連のプロセスは、労働者の権利を守り、労働条件を改善するための重要な手続きです。それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。

要求の取りまとめ

労働組合における重要な活動の1つが要求の取りまとめです。組合員からの相談内容をまとめ、要求書に記載した上で会社に提出する必要があります。

労働者個人に直接影響する労働条件に関することや、労働組合の活動に関することなど、要求事項の内容はさまざまです。個別に聞く方法やアンケートで希望を募る方法など、相談を受ける方法にもいろいろな種類があります。

労働組合を結成したばかりの段階では、より多くの組合員が希望する内容を要求書のメインに据えるのがおすすめです。組合に対する今後の期待感が増し、結束力の強化や組合員の増加につながるでしょう。

団体交渉

団体交渉は憲法で労働組合に保障されている権利の1つです。要求書を会社に提出したら、会社との団体交渉を行います。

団体交渉の日時や場所は、あらかじめ労使間で決めておくのが一般的です。1回の交渉で話がまとまらない場合は、結論が出るまで何度も議論を尽くす必要があります。

労働組合法第7条第2項では、会社側が正当な理由なく団体交渉を拒否できないことを定めています。ただし、労働組合の要求に必ず応じなければならない義務はありません。

出典:労働組合法 第七条 | e-Gov 法令検索

労働協約の締結

団体交渉でまとまった内容は、労働協約として労使間でルール化されます。取り決めた内容を書面に明記し、労使双方が署名または記名押印したものが労働協約です。

労働協約は労働契約や就業規則に優先して適用され、非常に強い効力を持ちます。労働組合法第16条により、労働協約に違反する行為は無効です。

また、労働協約の内容は原則として組合員にしか適用されませんが、一定の条件を満たせば非組合員にも適用されます。

出典:労働組合法 第十六条 | e-Gov 法令検索

団体交渉決裂の際に組合が取れる対応

団体交渉が決裂した場合、組合側が取れる選択肢としては、争議行為と法的手段の2つがあります。これらの対応は、労働者の権利を守り、要求を実現するための重要な手段となります。以下、それぞれの詳細について解説します。

争議行為

争議行為とは、団体交渉において労働組合が自らの主張を押し通すために圧力をかけることです。これは、団体行動権として日本国憲法第28条で保障されています。以下に挙げる行為は圧力手段として認められています。

  • 街頭宣伝・ビラ配り
  • ストライキ
  • 作業能率を低下させる行為
  • 業務妨害・出荷阻止
  • 職場占拠
  • ボイコット

ただし、争議行為には正当性が求められます。行き過ぎた行動は正当性を失い、逆に組合側が法的責任を問われる可能性があるため、慎重な判断が必要です。

出典:61 争議行為 | 大阪府

法的手段

団体交渉が合意に至らない場合、労働組合は法的手段を講じることで、会社に対応を求めることができます。以下は、組合が取れる主な法的手段です。

  • 労働委員会への不当労働行為の審査申立て
  • 労働委員会の個別労働紛争のあっせん手続き
  • 労働基準監督署への申告
  • 労働審判
  • 訴訟

法的手段は、専門的な知識が必要であり、会社側も弁護士を立てて対応することが一般的です。そのため、組合として十分な準備を整えた上で進めることが求められます。

労働組合にはさまざまな労働問題を相談可能

労働組合は組合員の相談内容をまとめて要求書を作成し、団体交渉に臨みます。さまざまな相談を受けるため、組織として可能な範囲で改善に向けて取り組まなければなりません。

要求を取りまとめた後の流れを理解しておくことも重要です。労働組合に相談できることを把握し、組織運営に役立てましょう。

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この記事を書いた人

筑波大学国際総合学類卒業。2023年にスタメンに入社し、人事労務・情報セキュリティに関するデジタルマーケティングを担当。 現在は「for UNION」の立ち上げメンバーとしてメディア企画に従事。

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