愛社精神を「自分ごと」へ!サッポロビール労働組合に学ぶ、新商品やセミナーから広げる仲間作りの輪

2025年度から専従となり、今年度から舵取りを担う坪井書記長と、製造現場の経験を活かして昨年10月から本部専従となった平山中執に、組織の現状の課題から、組合活動への熱い想い、そしてこれから目指す理想の組織像までを幅広く聞かせていただきました。
組織概要と自己紹介
— 組織の概要について
坪井:サッポロビール労働組合は今期で76年目を迎え、全国16の支部、約1,500名の組合員で構成されています。営業や製造、本社など、多岐にわたる職種が集まっているのが特徴です。76年の歴史があることは、強固な基礎や積み重ねがあるという私たちの大きな強みでもあります。
ただ、今年は会社の「150周年」という節目ですが、世の中が激変する今、組合も柔軟に適応していく「見直しのフェーズ」にあります。そこで私たちは、2032年度までの6年間を見据えた「2032Vision」をスタートさせました。「未来をひらく~Moving~」というスローガンを掲げ、現在TUNAGの導入を含めた様々な新しい一歩を踏み出しています。
— 自己紹介
坪井:私は入社11年目で、これまでは営業や人事を経験してきました。2025年度から専従となり、今年度からは書記長という役割を担わせてもらっています。
ただ、こうして本部の立場でお話ししている私も、一組合員だった頃や東京支部で執行委員をしていた頃は、組合活動に深く参画できていたわけではありませんでした。存在はなんとなく知りつつもどこか他人事という、完全に距離のある状態だったのです。その経験があるからこそ、今の組合員のみなさんが抱く距離感が本当によく理解できます。
平山:私はもともと製造系で、会社ではずっと工場に勤務していました。そこから昨年の10月に本部専従となり、現在は主に経営陣との協議会や会計業務を担当しています。坪井が専従2年目、私が1年目という新しい体制のため、日々新しい業務を覚えながら、即戦力となれるようやりがいを持って動いています。
私の組合活動のスタートは、2〜3年前に岡山にあるワイナリーの支部で書記長を務めたことです。当時は前任者の異動に伴って引き受けたため、最初は正直なところ、自発的な強い動機があったわけではありませんでした。しかし、現場の小さな課題を会社に伝えて実際に改善に繋げられた成功体験から、だんだんと活動の意義ややりがいを感じるようになり、その現場での経験が現在の本部での活動にも深く活きています。
歴史ある組織だからこその壁
— 見えてきた「他人事感」という課題
平山:本部に来て組織全体のデータを見てみると、実際にアクティブに活動に関与してくれている層は全体の2割から3割に留まっていました。つまり、「組合が遠い存在になっている」というのは、組合員個人の意識の問題ではなく、組織全体の大きな構造的課題なのだと気づかされたのです。
私たちの会社は、とにかく社員の「愛社精神・商品愛」がものすごく強いという素晴らしい特徴があります。みんな自社・自社の商品が大好きだからこそ、その会社を自分たちの手でもっと良くし、居心地のいい環境を作り続けるために、サッポロビール労働組合という組織は絶対に不可欠だと確信しています。
それなのに、職場の同期などから「普段組合って一体何をしてるの?」と言われてしまう。何をしているか分からない遠い世界になってしまっているのが実情です。さらに、制度改定や会社側との交渉事など、自分たちの将来に直結する重要な活動に関しても、現場にはなかなか詳細まで認知されていないという課題もあります。
ただでさえ「春闘」や「ストライキ」という言葉は、若い世代にとって少し堅くて怖い印象を持たれがちです。ですから、私たちはまずこの「程遠い感」を取り除き、情報をしっかりと届け、理解され共感される組織へと変えていかなければならないと思っています。
私は来週、経営陣との「経営諮問委員会」を控えているのですが、これがなんと今年で120回目を迎えます。年1〜2回の開催で120回という歴史の数字を聞くだけでも、やはり先輩たちが積み重ねてきた重みを肌で感じます。
支部にいた頃は「現場の課題をしっかりと伝える」という、ある種現場目線のスタンスでいられました。しかし、本部に来て改めて、組合が経営において果たす役割の大きさと、経営陣に与える影響力の大きさに驚きました。
私たちの交渉ひとつ、意見ひとつで、全社的な新しい人事制度の改定など、組合員の皆さんの生活にダイレクトに影響を及ぼしてしまう。支部にいた頃よりも、はるかに高い視座から会社全体を見渡しながら議論することが求められます。思った以上に大きな責任を背負っているんだなという緊張感と、それ以上のやりがいを持って、日々丁寧に会社側との協議に向き合っています。
なぜ組合員に響かないのか
— 本部と現場の距離を縮める草の根の工夫
坪井:私たちが最優先で取り組むべき「労働条件の維持向上」という組合の核となる活動は変えません。しかし世の中の流れの変化とともに組合に求められることも少しずつ変わってきているのではないかと感じています。そこで今回の2032Visionでは、前例踏襲のやり方から一歩抜け出す1つの取り組みとして、組合員の皆さんが主体的に参画できるような、個人のライフキャリアを豊かにするためのセミナーやイベントを本部主催で仕掛け始めました。
具体的には、自分の潜在的な強みをみつける「ストレングスファインダー」や、投資家の目線から自社の決算書を読み解く「投資家目線の企業分析セミナー」、将来の安心を支える「マネーライフプラン」などのセミナーを開催しています。
規模感としては、組合員同士の業務を知る機会の場は5〜10人程度、ストレングスファインダーや決算書のセミナーは30人から50人規模の参加となっております。まずは「組合のイベントに出てみたら、自分の人生やキャリアにとってプラスになった」などという組合の思い出を作ってもらうこと。まだ始めて半年程度ですが、人との繋がりが強い我が社の風土を活かして、口コミから関心の輪が広がっていけばいいなと考えています。
平山:情報発信の新しいプラットフォームとしては、コミュニケーションツールの「TUNAG」を導入したのですが、ここでも組合員にアプリを開いてもらうための草の根の工夫をしています。
工場などの製造現場にいると、自分の工場で作った製品にはめちゃくちゃ詳しいのですが、他拠点で作られた新商品のタイムリーな情報には、現場の最前線にいるとなかなか触れる機会がありません。
そこで、サッポロビールの社員なら誰もが共通して大好きな「新商品の紹介や開発の裏側」を、あえてTUNAGに載せるようにしました。新商品情報という、みんなが「知りたい!」と思うトピックを最初の『取っ掛かり』にしてアプリを開いてもらう。そして、そのすぐ隣に並んでいる「真面目な組合活動の報告記事」や「将来に関わる大切な制度改定のお知らせ」にも目を留めてもらい、読んでもらう。
発信の目的そのものを硬い情報にするのではなく、まずはツールに触れる、見るという行動を習慣化させる。そんな動線設計を意識しながら、現状の「伸びしろ」を少しずつ埋めるために、当たって砕けろの精神で様々なコンテンツの発信にチャレンジしています。
「受け手のプレッシャー」を減らす
— 本部と支部の理想的な連携
坪井:そのため、本部から支部へのコミュニケーションの取り方には、特にこだわっていきたいと思っています。本部からはどうしても様々な確認や依頼事項が多くなりがちですが、五月雨式に情報を投げてしまうと、受け手はそれだけで忙殺され、プレッシャーになってしまいます。
ですから、情報はできるだけある程度まとめてから発信する、締め切りや要点を一目でわかるように丁寧に整える、といった、きめ細やかな配慮を心がけています。支部の執行部の人たちは、自分たちの本業の重い業務を抱えながら、その貴重な合間の時間を使って組合活動を支えてくれています。だからこそ、本部が上から指示を出すのではなく、徹底的に現場に寄り添い、彼らが活動しやすいようにお膳立てをする優秀な「裏方」でありたいと思っています。それが結果的に、組織全体の強固なエンゲージメントに繋がると信じています。一方で会社との制度交渉などは、本部が表に立ち支部を引っ張っていくような存在になることも重要となります。本部と支部のバランスが非常に大事だと考えています。
私たちの組合は、北海道から沖縄まで拠点が全国にあるため、本部主導で全員を1箇所に集めることは物理的に困難です。そのため、役割分担として、全組合員対象のセミナーは本部が一括してオンラインなどで行い、支部内での横の繋がりを強くするレクリエーションは、各支部に予算も含めてお任せしています。
私が東京支部の執行委員だった頃、200人規模の支部をどう盛り上げるか悩んだ結果、出張回転寿司を呼び、サッポロビールの商品を飲みながら、組合員同士でわいわいする企画を考えました。当時は50〜80人ほどが集まってくれて、「名前は知っているけれど顔は知らなかった他部署の仲間」の間で、素晴らしいコミュニケーションが生まれました。今もなお出張回転寿司の企画は継続されているそうです。参加人数の規模も段々と増えてきています。そうやって現場起点で生まれる独自の活性化は、本当に大切にしていきたいです。
私たちが目指す、これからの理想像
平山:私たちが今回のビジョンを通じて目指す究極の姿は、「組合に触れることが、働く中でごく当たり前になっている状態」です。職場の日常会話の中で「これって組合にちょっと相談してみようか」と自然に話が出たり、組合からの発信を誰もが「自分ごとの話だ」と捉えられる。そんな、組織の必要性を全員が心から理解している風土を根付かせたいです。
現状、TUNAGでの反応を見ると、本部の報告よりも身近な支部からの現場に密着した発信の方が、圧倒的に組合員の食いつきが良いのが実情です。それで全く構わないと思っています。本部は目立つ必要はなく、黒衣として裏方に徹すればいい。今後は、一般組合員の皆さんからも主体的な発信が生まれたり、周りを巻き込む側になっていけるような仕掛けを、スタメンさんとも日々密にコミュニケーションを取りながら、TUNAGをフル活用して作っていきたいと考えています。
坪井:もう一つ大切にしたいのは、組織のなかに閉じこもらず、外部から学び続ける姿勢です。先日のスタメンさんのローソンユニオン様登壇セミナーを聞いた時も、あまりに素晴らしくて、速攻でアポを入れさせていただき、実際にお話を聞きに行くことになりました。他組合様の取り組みを知ることで、自分たちの組織を客観的に振り返ることができます。「こんな交渉をしてるんだ」「逆に、うちのこの部分は組合員に誇れる強みだな」といった、たくさんの知見や気づきが得られるんです。
今後もフード連合の枠にとどまらず、7月に平山が参加する札幌でのTUNAG交流会も含めて、色々なコミュニティに積極的に飛び込んでいきたいです。そうして得た学びを自組織の運営に還元し、一人の小さな声を起点に「仲間の輪」をどこまでも広げていける、そんなクリエイティブで温かい労働組合を、これからも全力で作っていきます。
〜坪井様、平山様、お話いただきありがとうございました。




