労働組合におけるパワハラ対策

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パワハラ相談への関わり方

労働組合に、組合員から、パワーハラスメント(以下、「パワハラ」)に関する相談などが寄せられ、対応に苦慮された経験はないでしょうか。

2021年に連合が実施した実態調査によると、職場でパワハラを受けたことがある人の割合を見ると27.6%と4人に1人以上の割合です。

たとえ労働組合に相談がなくても、適切なパワハラ対策が取られない状況を放置して被害者の離職を招くなどすると職場環境が悪化するので、労働組合は無関心ではいられない重大なテーマです。

とはいえ、何がハラスメントか明確ではない、労働者間の問題で労働組合が何をしてよいのか分からない、場合によっては組合員同士のトラブルで介入しにくいなどの原因で、労働組合の関与がまだ十分ではないテーマです。

今回は、労働組合の関わり方という視点を中心に、パワーハラスメント対策について解説していきます。

パワハラの実害

ハラスメント被害が生活に及ぼす影響は深刻です。

先の連合調査によると、ハラスメント被害経験者の56.8%が「仕事のやる気がなくなった」、 24.1%が「心身に不調をきたした」、22.5%が「仕事をやめた・変えた」と回答しています(マタハラ・セクハラなど他のハラスメント被害者も含む回答)。

 職場のハラスメントを放置すると、最終的には被害者の離職をも招き、職場環境を悪化させていくので、労働組合も放置すべきではありません。

パワハラとは

定義

職場におけるパワハラは、職場において行われる① 優越的な関係を背景とした言動であって、② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③ 労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいうとされています(労働施策総合推進法30条の2)。

このうち、②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動かは判定が難しく問題となりますが、社会通念に照らし明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指すと解されています。

6類型

代表的なものとして6類型とその例示は、下記のとおりです。なお、これらは職場のパワーハラスメントに当たりうる行為のすべてを網羅するものではないので、注意が必要です。

厚労省作成 職場におけるハラスメント対策パンフレットより

判定は困難でも・・・

こういった定義・類型にかかわらず、何がハラスメントであるのかという判定自体は、極めて困難です。当事者の言い分が異なることも多く事実認定(どんな発言があったのか)も難しい事案も多いです。加害者とされると、労働者の懲戒などにも結びつくので、加害者も組合員の場合など、労働組合がどちらか一方味方をするとして介入しにくいケースも多いのです。

とはいえ、労働組合が関与すべき点は多数あります。

使用者の措置義務

事業主は、職場におけるパワーハラスメント対策として、以下の措置を講じねばならないとされています(ハラスメント指針)。

厚労省作成 職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置-パンフレットより

パワハラが放置される職場は、これら措置義務の実施に課題がある場合が多いです。

たとえ形式的に実施されていても、パワハラに対する方針の労働者への周知・啓発が不十分で行き届いていなかったり、相談窓口が周知されていなかったり、労働者が安心して相談できる窓口ではなかったり(人事部が窓口では、報復などが怖く安心して相談ができない)といった事案が多いです。

労働組合の関与

措置義務の実施

労働組合としては、使用者の求めがなくても、自発的にパワーハラスメント対策が職場の実態に即して適切に実施されているのかチェックすべきです。

たとえば、労働組合が、ハラスメントに対する事業主の方針等の明確化として、社内報やホームページなどで事業主のハラスメントに対して厳正に取り組む方針を明示するように求めたり、社内での周知啓発のため研修等を実施するように求めたりすることが考えられます。

また、行為者への厳正な対処方針として、就業規則の懲戒規定にハラスメント加害者に対する懲戒規定が定められているか、それが職場で労働者に周知されているのかは、労働組合が関与しチェックすべき事項でしょう。

さらに、相談体制設置の有無や、設置場所が外部に委託されているのかなども、確認するとよいでしょう。

望ましい取り組み

ハラスメント指針は、事業主は、職場におけるハラスメントを防止するため望ましい取り組みとして、各種ハラスメントの一元的な相談体制の整備や、職場におけるハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取り組みが挙げられています。

また、望ましい取り組みの中では、必要に応じて、労働組合の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施する等により、その運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めると定められています。労働組合として、例えば労働安全衛生法に基づく衛生委員会の活用等により、積極的に参画させるように求めていくことが望ましいといえます。

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この記事を書いた人

2007年9月弁護士登録(神奈川県弁護士会)、神奈川総合法律事務所入所

日本労働弁護団常任幹事(2018年まで事務局長)、日弁連労働法制委員会事務局員など。

弁護士登録以来、働く人の権利の問題を、もっぱら労働者・労働組合側の立場で取り組んでいます。労働組合の社会的な認知度低下はよく指摘されますが、労働組合が本来果たすべき意義役割は何ら変わりありません。法的視点はもちろん、組合活動を広く役立つ情報を提供しお役に立てればと思います。

主著に、「労働者が円満退職するための法律実務」(旬報社)、「ブラック企業のない社会へ」「裁量労働制はなぜ危険かー『働き方改革』の闇」「#教師のバトンとはなんだったのか 教師の発信と学校の未来」(以上、岩波ブックレット・共著)、「新・労働相談実践マニュアル」「労働組合実践マニュアル」(以上、日本労働弁護団・共著)など。

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