労働組合における非組合員の範囲は?労働協約の一般的拘束力も解説

労働組合法では非組合員の範囲が定められており、組合が法律の保護を受けるためには規定に従う必要があります。非組合員と見なされる人の範囲や非組合員が加入するリスクを、労働協約の一般的拘束力と併せて解説します。

目次

労働組合法で非組合員と見なされる人の範囲

組合に加入できる人の条件は組合規約で定められますが、優先するのはあくまでも法律です。まずは、労働組合法で非組合員と見なされる人の範囲を見ていきましょう。

役員や上級管理職

取締役・監査役・理事といった会社の役員は、労働組合法上の非組合員です。会社の人事に直接関わる人事・労務・総務の部長クラス以上の人や、労働条件・雇用制度の改変に直接関わる人も、労働組合に加入できません。

これらの人は利益代表者と呼ばれ、組合に加入していると会社と組合の対等な関係が損なわれる恐れがあるため、労働組合法第2条第1号で組合員になることを認めていないのです。

なお、上記で紹介した上級管理職以外の管理職は、労働組合に加入できます。労働組合は全ての従業員に門戸が開かれており、上級管理職ではない管理職も従業員であることに変わりはないためです。

出典:労働組合法 第二条 | e-Gov 法令検索

その他の利益代表者

労働組合法で規定されている利益代表者以外にも、労働組合に加入できないとされている人がいます。主な該当者は次の通りです。

  • 人事・労働関係の機密情報に接することがある人
  • 採用・昇進・異動に関する直接的な決定権がある人
  • 従業員を取り締まる権限を持つ人
  • 役員の秘書
  • 工場の支配人

これらの人はいずれも、従業員を不利益に取り扱える要素を持っているため、労働組合への加入が認められないとされています。

出典:使用者の利益を代表する者

非組合員が労働組合に加入するとどうなる?

労働組合は、法律に基づいて初めて正当な組織として認められます。一定の条件を満たしていなければ法適合組合と見なされず、さまざまなリスクが生じます。

組合が法的保護を受けられなくなる

労働組合法第1条では、労働組合が会社と常に対等な立場であることを求めています。労働組合と会社が対等の立場でない場合、会社のほうが強くなって労働組合の存在意義が薄れるためです。

労働組合に利益代表者がいるケースでは、会社に有利な組織になる恐れがあると見なされ、法律で保護されなくなる恐れがあります。法律に守られながら会社にさまざまな要求を行える法適合組合ではなく、単なる労働者の集まりでしかないと判断されてしまうのです。

出典:労働組合法 第1条 | e-Gov 法令検索

法適合組合と見なされる条件

労働組合が法適合組合であると見なされるためには、労働組合法第2条で規定された以下の条件を満たしている必要があります。

  • 労働者主体で運営している
  • 労働者が自主的に運営している
  • 労働条件の維持や改善を目指して活動している

次の条件に一つでもあてはまる場合、法的に労働組合として認められません。

  • 組合員の中に利益代表者がいる
  • 会社から経済的な援助を受けている
  • 政治・社会運動を主な目的としている
  • 共済・福利事業のみを活動目的としている

法適合組合は会社の不当労働行為から保護されるほか、労使間で労働協約を締結できるなど、労働組合としてまともな活動を行えます。

出典:労働組合法 | e-Gov 法令検索

労働協約の一般的拘束力とは

組合への加入を法律で制限されている人以外に、組合に加入していない人を非組合員と呼ぶケースもあります。この場合の非組合員と併せて押さえておきたいのが、労働協約の一般的拘束力です。

出典:労働協約の拡張適用について|厚生労働省

非組合員にも労働協約が適用されること

労使交渉により賃上げや労働環境の改善が実現した場合、その内容を労働協約に定めます。労働協約は就業規則や個々の労働契約に優先する、非常に強い効力を持つものです。

労働協約の締結は組合の努力で勝ち取ったものであり、原則として組合員にのみ適用されます。しかし、労働協約が適用されない非組合員の中には、不満を持つ人も出てくるでしょう。

そこで、法律では職場における公平性の確保も考慮し、一定の条件を満たせば非組合員にも労働協約の効力が及ぶとしています。これが、労働組合法第17条で定められている、労働協約の一般的拘束力です。

労働協約の効力の種類

労働協約の効力は、規範的効力と債務的効力の二つに大きく分けられます。

  • 規範的効力:労働協約の内容が就業規則や個々の労働契約より優先される効力
  • 債務的効力:労使が協約内容を順守し、履行する義務を負う効力

労働協約に定められた内容を無視して就業規則や個々の労働契約を優先した場合、違反する部分は無効となります。

一般的拘束力が適用される条件

1つの事業所において、常時使用(雇用)される4分の3以上の同種の労働者が労働協約の適用を受けている場合は、非組合員にも労働協約が適用されます。

なお、ある地域で同種の労働者の大部分が労働協約の適用を受けている場合、その地域の他の労働者にも労働協約が適用される可能性があります。労働組合法第18条で規定されている、地域単位での一般的拘束力です。

労働組合における非組合員の扱いを理解しよう

労働組合法では非組合員となる範囲が決められており、利益代表者の加入を許すと法適合組合と見なされなくなる恐れがあります。組合が法律の保護を受けるためには、規定に従って対応しなければなりません。

労働協約の一般的拘束力についても理解を深め、これらの知識を組合活動に役立てましょう。

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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