集中回答日とは?企業の回答が集中する理由や春闘の大まかな流れ

春闘では集中回答日が設定されますが、なぜ回答を集中させるのか疑問に思う人もいるのではないでしょうか。本記事では集中回答日の意味や回答日を集中させる理由、集中回答日までの春闘の流れについて解説します。
春闘の集中回答日とは?
春闘の集中回答日について理解を深めれば、労働組合の春闘への向き合い方が分かります。集中回答日とは何か、どうして回答を集中させる必要があるのかを見ていきましょう。
回答を一斉に引き出す日のこと
集中回答日とは、春闘で主要企業の回答が出そろう日のことです。例年3月中旬に設定され、2024年は3月13日、2025年は3月12日が集中回答日でした。
大手企業の賃上げの回答が一斉に引き出されるほか、妥結結果が翌年度の月例給与に大きく影響するため、集中回答日は日本経済全体の賃金動向を占う上で非常に注目されます。
2025年の集中回答日には、大手企業の満額回答が相次ぎました。自動車や鉄鋼・機械・化学、電機の各メーカーなどにおいて、高い水準の賃上げが実現しています。
出典:春闘2025 賃上げ 各社の回答 自動車 電機 鉄鋼 機械 化学 食品・飲料 外食など 集中回答日の状況は? | NHK
回答日を集中させる理由
集中回答日を設定する理由は、交渉力を高める目的で同じ業界の労働組合同士が協力するためです。交渉日程を合わせて連携することで、横のつながりが強くなって業界内の結束力が高まります。
集中回答日だけでなく、それまでの交渉日も業界内で統一するのが一般的です。なお、産業別組合間のスケジュール調整は、労働組合の中央組織である連合が行います。
集中回答日には大手企業を中心に交渉結果が判明するため、大手企業の動向を参考に賃上げ相場を決める中小企業の交渉は、集中回答日の後に本格化します。
集中回答日までの春闘の流れ
春闘では3月の集中回答日に多くの注目が集まりますが、妥結に向けた労働組合の活動はかなり前から始まっています。集中回答日までどのような動きで進んでいくのか、春闘の全体的な流れを押さえておきましょう。
11月ごろ:要求事項や方針の決定
春闘の要求内容を連合が検討し始めるのは毎年8月頃です。2025年の春闘に向けては、「みんなでつくろう!賃上げがあたりまえの社会」をスローガンとした方針を、連合が2024年の11月に打ち出しています。
連合が発表した基本方針を受け、産業別労働組合が業界ごとに細かい方針を決定していきます。それぞれの業界で方針が決まるのが1月ごろです。
また、政府も春闘に先立ち、経団連や主要企業に対して賃上げ要請を行うのが一般的です。政府の要請には、組合側の要求を後押しする効果があります。
1月下旬~:労使交渉が始まる
産業別労働組合や企業別労働組合が交渉を始めるのは、例年1月下旬ごろです。交渉が1回で終わることはほとんどなく、通常は数回にわたって行われます。
春闘で労働組合から提出される要求の内容は、従業員の賃上げがメインです。賃上げ率や一時金(賞与)の金額など具体的な数字を提示し、企業が回答する形で交渉が進められます。
前述の通り、業界内での交渉日は足並みをそろえて行われるのが一般的です。数回の交渉日が事前に設定され、各業界で組合が情報を交換しながら企業と交渉を行います。
3月中旬:集中回答日を迎える
春闘最大のヤマ場は、例年3月中旬に設定される集中回答日です。大手企業の回答が続々と公表され、大きな動きがあればニュースなどでも速報が流れます。
大手企業の妥結結果は労働者の生活改善だけでなく、経済全体や企業経営にも大きな影響を及ぼします。高水準の妥結が相次げば、物価上昇が進む中でも消費者心理の安定につながるでしょう。
春闘ではベアや定期昇給といった賃上げに関する要求以外に、労働時間の短縮・是正やワークライフバランス、非正規雇用労働者の権利保全などについても要求が出されています。
3月下旬:中小企業で交渉が本格化する
中小企業における労使交渉が本格化するのは、集中回答日が終わった3月下旬以降です。大手企業の妥結状況が判明した後、その結果を受けて中小企業が交渉を進めます。
近年は集中回答日に高水準の妥結が多く、その後の交渉にも期待が高まりますが、大手企業の妥結結果が中小企業に波及しきれていないのが実情です。
中小企業では賃上げできる企業とできない企業の二極化が進んでおり、大手企業が軒並み賃上げしているからといって、自社はそれどころではないという企業も少なくありません。
また、労働組合の組織率が低いことも、中小企業で賃上げが進まない理由です。交渉力を高めるためには組合員数の増加が必須であるため、労働組合の魅力をアピールして組織率アップに取り組むことが求められます。
集中回答日は春闘最大のヤマ場
集中回答日は春闘において主要企業の回答が集中する日です。その年の動向を占う重要な日となるため、例年大きな注目を集めます。
春闘での交渉を通じて、労働組合と企業の双方が納得できる合意に至るよう、最新の情報にもアンテナを張っておきましょう。