労働組合法上の「労働者」とは?法律上の定義や組合活動のポイントを解説

組合活動において「労働者」という言葉を使う機会は多いものの、その法的な定義や具体的な権利について十分に理解せず活動している方も少なくありません。本記事では、労働組合法における「労働者」の正確な定義から組合活動での活用ポイントまで、組合役員が知っておくべき知識を分かりやすく解説します。

目次

労働組合法における「労働者」の定義と重要性

労働組合法上の「労働者」の定義を正しく理解することは、組合活動の正当性と説得力を高める基盤となります。まずは基本的な定義から確認していきましょう。

労働組合法の目的と「労働者」の定義

労働組合法は、労働者が労働組合を通じて団結し、労働条件の改善などを求めて交渉・行動するためのルールを定めた法律です。

労働組合法でいう「労働者」は、雇用契約に限らず、実際の働き方に基づいて判断されます。たとえ業務委託契約であっても、働き方次第では「労働者」として法的に扱われるケースがあります。

以下のような観点から、総合的に判断されます。

基本的な判断ポイント

  • 会社の事業の一部として組み込まれているか
  • 契約内容が一方的に決められているか
  • 報酬が労働への対価として支払われているか

補助的なチェックポイント

  • 業務の依頼に応じて仕事をしているか
  • 上司や管理者の指示に従って働いているか
  • 勤務時間や働く場所に拘束があるか

労働者に該当しないケース

  • 自らリスクを取り、独立してビジネスを運営している場合

重要なのは、雇用形態ではなく「実質的な働き方」で判断されることです。

参考:労働組合法上の労働者性の判断基準について

労働者が持つ「労働三権」とは

労働組合法上の「労働者」には、憲法第28条で保障された「労働三権」が認められています。

労働三権の内容

  1. 団結権
    • 労働組合を結成し、加入する権利
    • 使用者からの干渉を受けない自主的な組合活動の権利
  2. 団体交渉権
    • 労働組合を通じて使用者と対等に交渉する権利
    • 使用者に誠実な交渉を求める権利
  3. 団体行動権(争議権)
    • ストライキなどの争議行為を行う権利
    • 正当な争議行為に対する免責

これらの権利は、個人では弱い立場にある労働者が、集団の力で使用者と対等な関係を築くために不可欠です。

参考:日本国憲法

労働者が労働組合に加入するメリット

労働者が労働組合に加入することで、どのような恩恵が得られるのか、具体的なメリットを見ていきます。

団体交渉権による交渉力の強化

個人で会社と交渉しても、賃上げや制度改善を実現するのは簡単ではありません。しかし、労働組合が交渉する場合は「団体交渉権」が法的に認められており、企業側も誠実に対応する義務があります。

その結果、現実的な改善を引き出せる可能性が大きく高まります。また、個人で交渉するよりも企業への影響力が高まる分、要求が通りやすくなるのもメリットです。

万が一の法的サポートと保護を受けられる

労働組合に加入することで、さまざまな法的サポートと保護を受けることができます。組合が提供する主なサポートは以下の通りです。

  • 不当労働行為への対応(労働委員会への申立て支援)
  • 労働相談(組合役員や専門スタッフによる対応)
  • 法的手続きの支援(弁護士との連携)
  • 労働法の教育機会(知識の習得と予防)

また、団体交渉中の発言による不利益な扱いは禁止されており、組合活動や労働条件に関する情報提供を求める権利も守られています。

さまざまな業界の労働者と交流する機会が生まれる

労働組合の活動は、社内だけにとどまりません。業界団体や他社の労組ともつながることで、広いネットワークが生まれます。これは、働き方の改善だけでなく、スキルアップや情報収集にも有効です。

交流によって得られる効果

  • 他社の成功事例や制度情報の共有
  • 勉強会や研修の共同実施によるスキル向上
  • 業界・地域を超えた相互支援の体制づくり
  • 社会への政策提言や発信力の強化

経営環境の変化が激しい時代では、組合ネットワークを通じたベストプラクティスの共有や危機時の連携が、大きな力となります。

組合員の現状と増やすためにすべきこと

労働組合の影響力を高めるには、組合員数の増加と活動の活性化が重要です。現状の課題と解決策を考えてみましょう。

組合役員のなり手がいない現状

多くの労働組合が抱える深刻な課題の一つが、組合役員のなり手不足です。

「後任が見つからず辞められない」「やりたがる人がいない」といった声は、20年以上前から聞かれており、むしろ悪化の一途をたどっています。

その背景には、「組合役員」という役割やその魅力が見えにくくなっている現実があります。単に業務が忙しいという理由だけでなく、そもそも労働組合の意義や、他者のために働く価値、自身のスキル向上につながるということへの意識が広がっていないことが要因です。

魅力が伝わらなければ、人は動きません。役員の担い手を増やすには、役割の価値を可視化し、参加のハードルを下げる仕組みづくりが求められます。

組合活動のメリットや活動内容の周知

賃金アップや労働環境の改善といった成果も、きちんと周知されなければ組合の評価につながりません。

特に若手世代に向けては、スマートフォンで気軽にアクセスできるSNSのような情報発信スタイルと自分ごととして捉えられる内容が求められます。

その解決策として注目されているのが、「TUNAG for UNION」です。このサービスは、労働組合の活動や実績をスマートフォンアプリで簡単に発信・共有できるツールで、ニュース配信、アンケート、イベント告知、参加者管理などを一元化が可能です。

TUNAGを使えば、組合の「見えにくさ」を解消し、参加のきっかけや魅力を日常的に届けることが可能になります。組合の価値を伝えきれていないと感じている方にこそ、導入をおすすめします。

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労働組合への理解と活用で組合率向上へ

労働組合法における「労働者」の正しい理解は、組合活動の説得力と信頼を高める重要な基盤です。

法的な定義を正確に把握することで、組合員への説明がより説得力を持ち、特に若手組合員や非正規職員に対して自信を持って組合の意義を伝えることができるようになります。

また、不当労働行為への対処や団体交渉において、法的根拠に基づいた主張を展開することで、より効果的な交渉が可能になります。

労働組合法における「労働者」の定義と権利を正しく理解し、この知識を組合活動の発信や交渉で積極的に活用することで、より効果的な組合運営を実現できるでしょう。

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この記事を書いた人

労働組合にて専従(中央執行書記長)を経て、現職。

<セミナー登壇歴>
◼︎日本経済新聞社
『労組をアップデートせよ 会社と並走し、 組合員に支持される労働組合の作り方』
『労働組合の未来戦略 労組の価値向上につながる 教育施策の打ち方』

<メディア掲載>
◼︎日本経済新聞社
『​​​​団体契約を活用して労組主導で社員の成長を支援 デジタルを駆使して新しい組合像を発信する』

◼︎NIKKEI Financial
『「知らない社員」減らす 労組のSNS術』

◼︎朝日新聞社
『歴史的賃上げ裏腹 悩む労組 アプリ活用』

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